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ロリ枠はセンターになれないものなのですか!? 「推しが武道館いってくれたら死ぬ」7話 悲喜こもごもな人気投票の結果発表(1/2 ページ)

アイドルはアイドル、オタクはオタクですから。

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(C)平尾アウリ/徳間書店

 大好きなアイドルがいる。彼女は生きているだけでファンサ。だから人生を賭けて推します! 「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(原作アニメは地下アイドルChamJamの市井舞菜と、彼女を命がけで推すドルオタえりぴよを描いた、情熱的でコミカルな物語。

 7話でChamJam人気投票の結果がついに発表されます。えりぴよの生命を賭けた投票による舞菜の追い上げと、骨折による順位急落。空音の彼氏デマによる人気暴落、れおとくまさの特別な信頼関係、ゆめ莉と眞妃のお互いを尊重する思いなど、多様な思惑が入り交じり混戦状態。心が疲弊する人気投票の結果やいかに。

(C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

横田文、迷走の日々

 えりぴよがガチ推し中の市井舞菜は、ずっと人気投票で最下位。握手会もほぼ人が来ない。ぶっちゃけえりぴよが騒ぎすぎて他のファンが近付けない…という理由もあるのですが、舞菜自身は人気上位か否かにはそこまで血眼ではありません。

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 一方で執着激しいのが、ChamJamのロリ担当、横田文(あや)。ツインおさげで身長はミニマム。ChamJamの中では年齢はみんなとさほど変わらない18歳ですが、妹的立ち位置で奮闘中です。ステージ上ではキュートに振る舞いつつ、ふと気を抜くと跳ねっ返りで気の強いところがにじみ、でも素が優しいのでツンデレ気味。ぼくの推しです。

順位へのこだわりと焦りはトップクラス(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 ピンならメインヒロインはれる性格とビジュアルの子じゃないかと思うのですが、問題はChamJamというグループにおいての人気投票だということ。常にブービー賞の6位。どうしても上位になれないどころか、下位グループ脱出も難しい。

 CDの売上枚数によって人気投票が行われるのですが、文は焦りのあまり、自分で自分のCDを買って加算する、という悲し過ぎる行動も取っています。

地獄か(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 CDの枚数は他からでもあからさまに見えてしまうため、山の高さが減らない状態は地獄絵図。舞菜は最下位とはいえ、えりぴよが全部買って帰るのは誰しもが知っているので、実質山積みで残りがちなのは文。これは見ていて心臓が痛い。

 なぜ人気が出づらいのか。そこは文よりもオタクの方が冷静に分析し、真実を突いていました。

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推しがメイド喫茶で働いていて、ライブじゃなくても会えるのうらやまし過ぎるんだが?(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 オタク「あーやは妹キャラだからねー」「まあ確かにロリでセンターは珍しいかもとは思う…かな…」

 多人数アイドルユニットの場合、ロリ枠……身長が小さくて童顔で幼い様子が売りの子は、メインになりづらい。確かに小さな文がセンターになって、正統派アイドルのれおや空音が支えている様子は、なくはないけど想像が非常に難しい。適材適所というやつです。ってことはこのままでは永遠にセンターになれないのでは?

お気付きになられましたか……(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 プラスに捉えれば、妹担当として満遍なくChamJamのファンに愛されている、とも取れます。満遍ないが故にみんなの一番になれない(2番目3番目になりがち)のは悲劇ではあるのだけども。

 オタクたちの声が、優しいが故に非情。「オレらは応援してるよ! ロリ枠はあーやだけだし」「ロリ枠貴重だからねー」。属性ありきの人気は、需要が頭打ちになりやすい。なにかプラスして伸びねば、と焦る彼女の気持ちは分からんでもない。でも「枠」って「プロフェッショナル」という意味でもあるんですよね。プロのロリ、大事。

誰だよ!(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 文の迷走が加速します。おさげスタイルを辞め、巻き髪、豹柄、濃いメークのセクシースタイルに。胸は控えめなので、谷間はサインペンで書きましたとさ。童顔故に何一つ似合っていない。

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ドン引き(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 このままステージに登壇。ChamJamメンバーもファンもドン引き。ざわつきの中、空気を読まない寺本優佳「あやちん、イメチェン超スベってんなー!」が、救いになったようにも見えます。ちなみにすぐ怒る文と、思ったことを脊髄反射で口に出しがちな優佳、性格は真逆ですがお互い直球に生きているのがいいのか、「トムとジェリー」的に仲良しです。

うわあ(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 結局ロリキャラに戻り、人気投票は振るわないまま。結果は6位。いつも通り。ステージの上なのに表情筋が死亡中。ひでえ顔を見せてしまう彼女、これはChamJamだと他にいないノリ。面白いじゃん君。

 嫉妬心と野望が強く、勝ち負けにこだわり、怒りの感情は隠しきれずダダ漏れ。メンバーカラーの緑も望んだわけじゃないけど、回ってきたから仕方がなく受け入れ中。一方でロリ枠としてChamJamの中で役割をこなし、ぶりっ子を極めるべく技術を身に着け努力中。ChamJamにしては珍しく愚痴も平気でこぼすけど、妹キャラと素な感じが保護欲がくすぐられるのか、コアなファンがしっかり付いている。あーや、オレは好きだぞ。

彼女の戦い方、とくと見よ(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 最悪な顔をさらしつつも、ちょっと懐かしさすら感じるキャピるんモードに戻れるのが横田文というアイドル。ロリ枠という「枠」にはめられるとしんどいかもしれないけど、需要があるならちゃんと応えるという姿勢たるやよし。

 ChamJamメンバーは割といい子ぞろいで、みんな裏表なく誠実。性善説の塊みたいなアイドルグループですが、横田文はアイドルとして頑張りたいが故に、憤りが露骨に描かれているキャラです。メイド喫茶で「男のウワサがでてる空音の方が私より順位が良いなんて、いみわかんない!」と自分のファンに言ってしまう様子は、アイドルとしてはかなりアウト。これは空音のウワサを真に受けた故の、アイドルとしての正義の怒りでもあるのですが、幼さで少々ゆがんでいます。

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 前回のえりぴよとのメイド喫茶でのやりとりと、今回の人気投票にかける激しい思いの描写で、「気の強いロリ枠・横田文」というビジュアルが強調されました。ちょっと捻じくれた性格に見える彼女ですが、激情にはちゃんと理由があります。それは原作のもう少し後で描かれているので、ぜひチェックしてみてほしいです。クセの強い子だからこそ、彼女の心の中の本当を知れば、きっと好きになっちゃうと思う。

ガチ恋勢の悲しみ

 今回の人気投票でもっとも迷惑被害を受けて苦しんでいるのが松山空音。クールめなビジュアルとしっかりした性格で不動の2番人気だった彼女。しかし「男といるのを見た」という情報がネットで出回り、一気に人気が落ちてしまいました。デマだったのですが、いまだ誤解がとけていない。

 女性アイドルの男性のウワサは、ファンの不安感を煽る最大のファクター。事実かどうかも調べないで空音から離れていったファンは多いのですが、ぶっちゃけ本当かどうかよりも「男の影がちらつくだけでつらい」というファンの気持ちは止められない。もう犬にかまれたようなものだと思うしかない。ライブ会場で、彼女のメンバーカラーである青いペンライトの光は、すっかり減りました。

いつも通り、誠実にやるしかないんだよなあ(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 誤解を解く、という行動を取る暇もなく、厳しいファンの視線と戦い続けている空音。7話で決着がつかず、もうしばらく地獄続き。

 真実は「ファンの基と、空音に似ている妹の玲奈が歩いていたのを目撃され、勘違いされていた」というもの。真相を知っているのはえりぴよ、くまさ、基、玲奈の4人だけ。

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 じゃあ基が誤解を解いてくれれば!(もっとも1人のファンが大声で疑惑を晴らすべく叫んだ程度で、効果あるかどうかは分からないですが…)と思いたいところですが、空音ガチ恋勢の彼の考えはちょっと異なっていました。

 基「空音ちゃんは僕だけの空音ちゃんでいてくれる方がいいもんね」「みんな目撃情報がデマだとも知らずに…。僕が空音ちゃんを独占できる日も近いのでは!?」

 大分とんでもない思考ですが、恋は盲目。基はもともと同担拒否(推し被りの人が苦手で避けるタイプの人のこと)だったので、なおのこと空音の現状は渡りに船だったところもある様子。

この段階の基は、さまざまな視点が少し欠落しています(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 ChamJamのドルオタ仲間のえりぴよくまさですら、基のガチ恋思考に関しては理解はできても「相容れぬ」とつっぱねるほど。客観的に見ると痛々しいのですが、推しが自分の思い通りになればいいのに、という思考自体は現実にも意外とある気はします。例えば好きなバンドがメジャーデビューするのが決まったとき「今までより距離が離れるのは寂しいからいやだ」という感じる状態と、思考は近いかも。絶対それは本人には言わないけれども、相手の人生を考えない願望って、浮かんだらもう口をつぐむしかない。

 かわいい空音を独り占めにして見ていたい、という基の欲望自体は、否定できません。そもそも基は自主的に手を出して、迷惑を掛けているわけでもない。彼は誠実なオタクです。だから後半、自分が考えていたことの過ちに気づいて、心をひどく痛めます。

推しの痛みを見たとき、既に遅し(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 基「空音ちゃんが…あんな顔するなんて……僕が……、頑張らなかったからだ」

 ファンの側から見ていると「こうすればいいのに」「こうあってほしい」「こうであるべき」という願望は勝手にボロボロ出るものですが、一人の人間としてのアイドル・演者側の視点に立たないとそれが重荷であることに気付けない、というのはよくある話。特に空音はプロフェッショナルとしての意識が高く、常に人前では笑顔を絶やさなかったため、今回のような落ち込んだ顔を見せたことがなかったんでしょう。基が今までほとんど見なかった彼女の悲しみを見て、激しい後悔の念に襲われます。

 彼の「頑張らなかったからだ」にはさまざまな意味が含まれていそうです。CDを買うことかもしれない。誤解を解くべく何か声をあげることかもしれない。離れかけた空音ファンの気持ちを盛り上げるべくライブで応援することかもしれない。独り占めしようと思わないようブレーキを踏むことかもしれない。多分本人もまだ分からない、モヤモヤしたものかもしれない。

 もう取り返しがつかない。このときの痛みは、今後の基の、推しへの向き合い方に大きな影響を及ぼすことになります。

 一方空音の思いは、また別の回で描かれるはず。もうしばらく痛みは続くけれども、だからこそ彼女のアイドルとしての戦いは、非常に魅力的です。

舞菜が思う人

いつもの光景(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 あんまり人気投票には焦りはないし、自分が上位になれるはずなんてないと自己評価も低めな市井舞菜。でも彼女も、少しでも順位があがれば、という願いはあります。

 理由は、えりぴよが喜んでくれるから。

 かなりねじれた状態ではあります。えりぴよが舞菜を推すためCDを買いまくる。舞菜の順位があがる。舞菜の順位があがってえりぴよが喜ぶ。えりぴよが喜ぶ姿を見て舞菜が喜ぶ。

 つまりえりぴよが起点なので、彼女との絆きずなが薄くなった瞬間何もかもが崩壊する、という非常に不安定な状態です。

 舞菜「えりぴよさんが会いに来てくれないと、会えないのに…」

 舞菜が甘えているわけではないです。彼女は彼女なりに頑張っているけれども、えりぴよはファンで自分はアイドル。この境界線を乗り越えた瞬間、ファンと推しの関係は壊れてしまう。どんなに一個人のえりぴよが好きでも、自分から会いには行けません。人気投票の時期はえりぴよがケガをしたりなんなりで、寂しさと不安ばかりが募っていたため、彼女がブルーになるのも致し方なし。

 しかも投票最終日、えりぴよは来ませんでした。川に流されたからなんだけども、そんなことは当然知らず、舞菜は沈むばかり。

舞菜に優しい、スタッフの三崎さん(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 ライブには間に合わなかったえりぴよ、実は終演後に舞菜のCDを全部買っていきました。人気投票には票が入らないのに、なぜえりぴよはCDを買ったのか?

 えりぴよ「いいんです。舞菜ちゃんのためのお金、舞菜ちゃんのために使いたいですから」

 人気投票のために買うよりもはるかに大き過ぎる愛の表現。見返りがない分、えりぴよの思いがダイレクトに伝わってきます。もちろん投票時に買えたら良かったし、そのためにクレイジーなくらい働いてきたけれども、一番大事なのは「舞菜に愛を伝えたい」という究極の一点だけ。かつ、舞菜に自分の行動を伝えようともしない。

 スタッフの三崎さんは、舞菜にやたら甘いところがあるのですが、もしかしたら舞菜の出すぎない性格と、えりぴよの真摯(しんし)な思いを客観的に理解できているからこそ、なのかもしれません。こんな熱い愛、こっそり伝えたくもなるよ。

ジャージー姿の王子様(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 駅まで追っかけていった舞菜が見たのは、ダンボールいっぱいに舞菜ジャケットのCDを入れて運んでいるえりぴよ。これには舞菜も目が潤む。「嬉しい。嬉しい。嬉しい…私は幸せだって…、次の握手のとき、一番に伝えよう」

 CDを売ること・買うことでしか伝わらない、もどかしい愛のやりとり。ファンとアイドルの壁。でも思いなんて伝わらないことの方が多いもの。ちょっとでも思いが伝わる手段があるというだけで、十分過ぎるくらいお得だし、プライスレスかもしれない。本当に特異なつながりです。

オタクはオタク以上にはならないから(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 れおが1位で大喜びするくまさ。舞菜が7位で落ち込むえりぴよ。いつも通りでしたが、今回は空音の件もあってちょっと心中複雑。

 えりぴよ「わたしはさ、嬉しいことも悲しいことも全部、舞菜に伝えたいと思うけど…こういうとき舞菜にも、気持ちを伝えたい存在がいたりするのかなあ」

 くまさ「空音の件で、ちょっと考えましたか」「オタクは所詮オタクですからねー。僕はれおの幸せが一番ですけど」

 オタクはオタク以上でも以下でもない。アイドルが力いっぱい元気を与え、オタクはアイドルに応援を送る。この循環は、アイドルとオタクが別の次元だからできる力の流れです。もしアイドルに友達や彼氏がいて、うれしいこと悲しいことを相談していたとしても、そこにオタクは介在できません。オタクが見られるのは、アイドルとして頑張っている一面だけです。

 こう書くと損しているようにも見えますが、実は友人や恋人や家族が見ることができない、一番輝いているアイドルとしての姿を見て、自分たちが応援する喜びを味わえるのは、ファンだけです。アイドルが生み出す究極のかわいい・かっこいいは、ファンに向けられたものだから、ファンにならないと感じることができない。それを、特にくまさとえりぴよは分かっているようです。だからこそ基は、その境界線に気付かされて苦悶(くもん)の真っ最中。

ギャグみたいなシーンであると同時に、思いが伝えられない切ないシーン(7話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会

 えりぴよの言う「舞菜が気持ちを伝えたい存在」が、よもや自分だとは思うまい。人気投票発表中も「この間のこと、えりぴよさんにありがとうって、幸せですって、どう伝えよう…!?」と上の空。

 「幸せ」の気持ちを伝えたくて仕方ないながらも、アイドルだから言えないこともたくさんある。ファンだから踏み込めないこともたくさんある。「幸せ」と「超かわいい!」で満足するのが、アイドルとファンの関係の行き着く先。それ以上は求められないのが、はかないけれども…でも「超可愛い」を見られることに勝るものなんて、ないんだよなあ。赤面舞菜の顔、しかと目に焼き付けろ。

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