なぜ学校現場でオンライン授業の導入が進まないのか 現役中学教員に聞く「緊急事態宣言を受けた学校の動き」(2/2 ページ)
「休校期間中、学校現場ではどんな仕事をしているのか」「なぜオンライン授業の導入が進まないのか」などを聞きました。
そう簡単に延期できない学校行事のスケジュール
―― 臨時休校が5月まで延びて、影響が出そうなところは?
体育祭が5月下旬に予定されていた学校は、例年通り行うのが厳しいと思う。
そもそも準備期間が足りないし、仮に開催するとしても「どうやって3密を避けながら体育祭をやるか」と考える必要もあるだろう。5月に入ったら、このコロナ騒ぎが収まっているとは思えないし。
「開催はするけど、種目を削って午前中で終了」みたいな対応を取る学校も出てくるんじゃないかな。
―― 日程を遅らせて、コロナ収束後に行うのは?
以前のインタビューでも話したけど、学校行事って意外と多くて、体育祭以外にも合唱コンクール、修学旅行、マラソン大会、文化祭、生徒会の選挙、球技大会、定期テスト……などがある。細かいものまで含めると毎週のように行われているから、そう簡単に予定は動かせないと思う。
「日本中の学生が修学旅行で京都に行くのに、旅館がちゃんと確保できるのか」
もっと深刻なのは、おそらく5~6月に修学旅行があるケース。
修学旅行って行く前に、2~3カ月かけて準備するものでさ。自分で調べる寺院を決めて、模造紙にまとめて……みたいな授業を受けた覚えあるでしょ? ただ京都に行くだけだけど、本当にただの旅行になっちゃうから。
―― 準備期間を考えると、5月の学校再開だと全然間に合わないね
かといって、延期すると宿泊先が確保できない可能性がある。
よく考えてみると不思議なんだけど、「京都には毎年、日本中から修学旅行生が集まるのに、なぜ旅館がいっぱいにならないのか」。それは「“どの学校が・どの時期に・どの旅館を利用するのか”が慣例的に決まっているから」なんだよね。
―― 延期すると慣例が崩れてしまうわけか
こういう事情を知らない保護者からは「あそこの中学は普通に修学旅行ができるのに、どうしてこの学校は!」と言われてしまうかもしれない。
もう1つ言うと、5~6月に修学旅行を行う場合、普通は3年生が対象なんだよね。受験が控えているから早めに行くんだ。つまり、延期すると受験シーズンに近付いてしまうし、もう3年生だから「来年に先送りしましょう」という対応も取れない。
日本の学校でオンライン授業が進まない理由は“学校にお金がないから”?
―― 臨時休校延期の学習面での影響は?
一部の自治体、学校ではオンライン授業が行われているみたいだけど……基本的には難しいんじゃないかなあ。たぶん学校って1980年代ごろから変わっていないんだよね。この令和の時代に元号を1個飛ばして、昭和なことをやってる。
“箱物行政”と言われるように、かつての日本では図書館とか博物館とかいろいろ作っていて、学校もそうだった。でも、バブルが崩壊して「不況なのに公務員は」という批判を受けるようになって。その流れなのか、学校にはとにかく予算がない。今あるもので何とかしなくてはならない。
で、教員たちは何とかしてしまった。「ペンと紙さえあれば勉強できる」みたいなことをやってきたツケが、今になって回ってきたんだと思う。以前のインタビューでも話した通り、IT環境の整備は各教員に仕事用のPCを用意できないくらい遅れているよ。
もしも学校に時代にあった機材、要は一般家庭にあるような機材があれば、オンライン授業は可能だと思うよ。教員の私物を使う手も考えられなくはないけど、“上”の人の立場で考えて「授業の動画配信をしなさい。ただし、必要な機材は各自の私物を使うものとする」と指示するのは厳しいような気がするんだよね。
―― 動画配信って今はスマホ1台でできるらしいけど、そういう事情を考えると「全国の学校でオンライン授業に切り替え」みたいな対応は難しいのかなあ
教員個人レベルの取り組みの話をすると、うちの自治体でもオンライン授業を行おうとする動きがあったんだけど、“上”から「やめてくれ」と言われたらしい。たぶん市町村あたりの指示なんだと思うんだけど。
―― どうして?
さっぱり分からん。時代遅れなんじゃない?
※本企画は、現役教員の声をそのまま記事化したものです。実際の労働環境などは自治体、学校などによって異なる可能性があります。
関連記事
【新型コロナ】一斉休校で消えた授業時間はどうカバー? 教室で「3密」は避けられる? 現役中学教員に聞く“4月以降の影響”
そもそも「4月から授業や部活が再開できるかどうか」もよく分からない状況ですが……。中学教員「残業100時間超は当たり前。“残業代”は1~2万円」 現役教師が語る「ブラック職場としての学校」
「普通の時期」でも過労死ラインを40時間オーバー。“どこにでもいる普通の先生”が過労死ラインを突破する根本原因とは 現役教師が語る「ブラック職場としての学校」
教員の部活動の負担を減らす動きが進んでいますが、「根本的な問題はそこじゃないだろ」。学校の先生はいつ有給を使うのか 現役中学教員に聞く「ブラック職場としての学校」
Aさん「消滅した有給がどれほどあるか……」。学校の先生が“規制逃れ”に手を尽くす「闇部活」の実態 現役中学教員に聞く「ブラック職場としての学校」
部活の活動時間規制と“どうしても部活がしたい教員たち”のイタチごっこ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.