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オンライン診療後、最短1時間でお薬が届く 個人防護具が不足する中、"救急"オンライン診療にかけるファストドクターの思いとは

かかりつけ医が対応できない夜間休日の救急医療体制を地域医療から支えたい。

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救急オンライン診療は356日、夜間休日に特化。スマホで医師とテレビ電話

 夜間と休日に特化した医師による緊急度判定・救急往診支援サービスを提供している「ファストドクター」もCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の対応に追われている。

 サービスを提供している東京、神奈川、埼玉、千葉はいずれも緊急事態宣言下において特定警戒都道府県に指定されており、適切な感染対策を行いながら今も診療を続けている。夜間や休日に、そして外出がしづらい状況で病院に行くことができないときに頼りになるファストドクターの現状を代表取締役の水野敬志さんに聞いた。

 ファストドクターでは、夜間休日にかかりつけ医が対応できなかったり、地域の休日夜間診療所に赴くことができない患者に対して、病院案内や必要に応じて自宅での診察と薬の処方等を行っている。これまでに年間6万件の緊急度判定と年間1万8000万件以上の往診支援をしてきた。かかりつけ医と連携しながら、通院が難しい患者の在宅療養を支援している。そして、4月14日からはテレビ電話で診療が受けられる「救急オンライン診療」の提供を、提携医療機関と開始した。患者の在宅療養の支援と救急病院の負担軽減を目指してのことだが、利用者からの要望は期待以上に高かったという。

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ファストドクター代表取締役の水野敬志さん

 背景には、診療に必要な個人防護具の調達が難しくなったことがある。一般診療所で発熱や呼吸器症状がある患者の受け入れが難しくなり、さらにこうした患者を受け入れている一般病院も少ないことから大病院の負担が増大していることも挙げられる。また、4月10日に厚生労働省より「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」の通達を受けたことも後押しになった。ファストドクターでは従来の往診に加え、オンライン診療が救急医療の全体最適につながると考えている。

 ファストドクターでは、オンライン診療に先駆けて、受診勧奨を目的とした「オンライン医療相談」を4月9日にリリースしている。医療相談料は1回1500円(保険適用外)、自費かつ診療にはあたらないものであるため、処方もできないが、初日から30件の申し込みがあった。緊急事態宣言下の中、医師に相談したいというニーズが高まっていると確信し、4月13日の初診オンライン診療解禁をきっかけにファストドクターでも救急オンライン診療(保険適用)を提供開始した。

オンライン診療

 ファストドクターのオンライン診療には3つの特徴がある。

 1つ目は365日対応。休日と夜間帯に特化し、平日日中に地域の医療機関に行けなかった患者を対象としている。

 2つ目は往診医との連携。オンライン診療中に対面での診察・検査が必要と医師が判断すれば、すぐさま往診医師と連携し往診に向かう。

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 3つ目は即日お薬宅配。すぐ薬を必要としている患者のために最短1時間で医療機関から処方薬を届ける。

スマホで症状を申告

新型コロナウイルスに関する問い合わせが1日250件以上

 水野さんによれば緊急事態宣言が出てからは、特に院内感染の可能性を危惧して病院に行きたくない(行きたくても受診を断られる)ということから新型コロナウイルスに関わる問い合わせが平日で100件以上、土日は250件以上もあるという。特に最近は「発熱が続いている」などの相談が多くなっていると明かす。

 新型コロナウイルスを気にされている方が多く、「症状はそれほどでもないが、どうしたらいいか分からない」「保健所に何回かけてもつながらない」と心配される患者が、直接スマホ越しとはいえ医師の顔を見て話せることで安心感を得られると評判だ。「検査を受けることはできないが、具体的な症状に対して医師から適切な診断と処方まで受けられることに価値があった」(水野さん)

オンライン診療時の様子

 現在はオンライン診療を受診した患者を症状によってふるい分けし、新型コロナウイルス感染症の疑いがあり、さらに呼吸器症状の悪化があれば、救急往診で酸素飽和度やレントゲンなどのさらに詳しい検査を行う。PCRの検体採取が行える提携医療機関と連携するなど、迅速な対応を心がけている。軽症の場合は自宅療養を続けてもらうが、不安を抱えての自宅療養になることをふまえ注意したい症状の変化や、生活上の注意点を伝え、看護師が電話でのフォローアップを行うことで少しでも安心した療養生活を送れるような診療を行っている。

 新型コロナウイルスに関係しないものも含めると平日150件、土日400件は問い合わせがある中で、実際に往診につながるのは2割程度だ。その中でも緊急度および自力通院が困難かどうかを全件、医師の判断で振り分けているという。

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 対応する医師も限られるからこそ、その“トリアージ”機能は磨かれ、今回の新型コロナウイルス感染症に対して強みになっている。「自分が発熱していると外に出てはいけないと思う方も多くいますが、新型コロナウイルス感染症の場合は急に容体が変化する危険性もあり、軽症であっても肺の痛みがあったり、咳があったりなどする場合に、医者が丁寧に患者の状態を聞くことによって、早期診断に至る場合もあります」

SNSで呼びかけていた備品不足は解消されたのか?

 2020年1月から4月までの間で新型コロナウイルス感染症に関わらずファストドクターに寄せられた発熱患者の受診率は昨年の1.5倍にのぼっている。水野さんによれば3月に小池都知事が外出自粛要請をしたあたりから増えてきたと振り返る。「1日に数件は新型コロナウイルス感染症の疑いがある患者がいるが、現在は保健所やおよび病院の病床数のリソースが逼迫しているという認識のためなので、救急往診もしくはオンライン診療の際に入院が必要と考えられた場合に限って、保健所や患者を受け入れられる病院とへ連携している」のが現状だ。

 SNSで呼びかけていた個人防護具の不足について、マスクは寄付も含めて当面のめどはついたものの、ガウンやフェイスシールド、ヘアキャップなどは依然として確保が難しいとのこと。それぞれの単価も上がっており、調達に苦労しているのは他の医療機関と同様。事態が長期化し調達が厳しい状況が続けばサービスの休止もあり得る。

TwitterやFacebookで呼びかけた
寄与されたN95マスクと手紙

 こうした状況のなか「医師の業務は普段より厳しくなっていますが、志の高い医師や医療従事者に助けられて、現在も診療サービスを続けられています。心から感謝しています。皆さまのお気持ちに報いるためにも、個人防護具の調達は絶対に諦めてはならない」と考えてる。

 往診する医師や医療従事者の安全を確保するため、患者側にもマスクの着用を義務化している(持っていなければ配布している)。医師が到着する70分前から室内を換気してもらい、診察時には必要時以外は2メートル以上離れ、個人防護具はその都度処分している。こうした患者側へのアナウンスもあって、今のところ現場での医療従事者の二次感染はない。「地道だが感染対策を徹底することで、少しでも関わっていただいている医師や医療従事者の気持ちに応えることができればと考えています」

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「今後はもっと医療機関間の連携を強化しく必要があると思います。ファストドクターができることは往診救急とオンライン診療等のサービス提供することですが、新型コロナウイルス感染症の対策においては、あらゆる医療資源を組み合わせていかないと、対応していくことは難しいと考えています。また、医療機関だけではなく、自治体や保健所といった行政、医師会主導で始まったPCRセンター、感染症指定病院など、様々な部署とと密接に連携をしていかないといけません」

 今、ファストドクターに求められることは多い。「かかりつけの先生や病院に受診できずに不安になったとき、迷わずファストドクターまでご相談ください」(水野さん)

ファストドクターの往診時の診療キット例

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