頑張っている人間を笑うな「かぐや様は告らせたい?」6話 徹底的勝利を狙う選挙戦(1/2 ページ)
やっぱり生徒会の面々は天才だった。
恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第2シーズン。とってもいとしくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。
生徒会選挙戦当日。伊井野ミコという対立候補が出たとはいえ楽観視していた御行たち。しかし、とある石上の思惑で大きく選挙が揺れる。
頑張ってる人間を笑うな
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。
生徒会長選挙、御行の対立候補の伊井野ミコが出てきたことで事態が動き始めています。それでもなお「大丈夫でしょ」という状態になったのは、伊井野ミコの公約が極端に生徒たちに都合が悪い、丸刈り三つ編みとか男女交際禁止などの、旧時代的な面倒くさい校則だったから。どう見ても学校内の世論は劣勢。誰も話を聞いてくれない状況でもなお、めげないのはどうしてなんだ。
ここで動いたのが、まさかの元会計の石上。「今日の選挙 伊井野ミコに徹底的に勝ちたいんです」「今日の選挙は僕等が確実に勝つでしょう それでも皆さんならそれ以上の勝ち方が出来る筈です」
中学生時代の伊井野ミコを知っている石上。フルボッコにしてほしいという私怨(しえん)とは違って聞こえます。そもそも厭世(えんせい)的な生き方をしている(ように描かれてきた)石上です、わざわざ御行に口を出してまで自らの意見を言うのには、理由がありました。
石上「いつものパターンですよ。これが伊井野の勝てない理由」「普段からムカついている奴らからしたら笑うなってのがムリな話でしょう」
伊井野は壇上にあがるとしゃべれなくなる、という致命的な欠点がありました。いつもは学年一位のクソ真面目優等生、やたら周囲の生徒に厳しくて指図してくる頭の固い子。それが恥ずかしい目にあう非常に珍しいタイミングを目の前にして、嘲笑が聞こえてしまうのはある意味必然。
石上も彼女に情けを感じているわけではないです。彼もゲームを奪われるなど、恨みはあります。彼女の行き過ぎた風紀規制に共感もしていません。ただ、彼は伊井野が頑張っている姿を知っていました。
トイレ掃除を熱心に行い、花に水やりをするなど、普段はみんなのために身を粉にして働く頑張り屋。とはいえ周囲の生徒はその裏の部分は見えていない。口うるさく注意をして来ることへの不満ばかりがたまってしまう。悪意ある小さないじめ行為も起きてしまいました。
友人の大仏(おさらぎ)こばちの目から見た伊井野の姿も描かれます。確かに周囲に厳しすぎる伊井野ですが、そもそも彼女の言っていることは融通が利かないだけで、「間違い」でも「悪」でもありません。「正しくありたい」という気持ちをうまく表現できていないだけです。
伊井野のやり方は極端なので、全てを受け入れることは難しいかもしれない。でもほんのちょっとでも話を聞いてくれる人がいれば、彼女の働きに目を留める人がいれば、思いは伝わったかもしれない。
彼女が壇上にあがってしゃべれないのは、怖がりだから。怖がりになった理由の一端は、悪意にさらされてきたから。それでも毅然として立ち上がろうとするのは、正しくありたいから。思いを伝えるすべがないゆえに、挫折のループが続きます。
もともとディスコミュニケーションが題材のこの作品、2期目にあたるストーリーパートでは、思いの食い違い、言葉の伝わらなさ、偏見と勘違いなど、人間関係のひずみにさらに強くスポットが当てられます。1期目ではかぐやの花火大会の話など、御行とかぐやのすれ違いが話題の中心でした(もちろん今もですが!)。ここからは、伊井野含む他のキャラクターたちの人間関係の悩みと、それを解決していく少年少女の姿が描かれ始めます。
石上「でもイラつくんすよ 頑張ってる奴が笑われるのは」
石上が「伊井野ミコに徹底的に勝ちたい」と言ったのは、自分たちのためではなく、一生懸命な人をあざ笑う空気をねじ伏せたかったからなんでしょう。石上が初めて見せる、絶対許せない一線。ここから先、石上もディスコミュニケーションと戦う人間として、より深く描かれていきます。
華麗なる生徒会
「天才たちの恋愛頭脳戦」というタイトルを思い出す、御行たちの選挙活動。応援演説はパワーポイントできっちりネタを仕込んで人心をつかむかぐやが行いました。藤原書記は反白銀派が騒ぐのを封じるため先生を誘導。かぐやの近侍・早坂は内部から御行の実績を話題にして盛り上げます。
あまりにも完璧な布陣、天才・秀才の集団なのを痛感させられます。全てズルではなく公正。はったりではなく、積み重ねからくる生徒の信頼感を後押ししたような形です。
ここまでは「選挙に勝つ」手段。ここからは「徹底的に勝つ」ステップ。
伊井野が壇上にあがって言葉に窮し、みんなに笑われていたとき、突然御行は彼女が慌てふためく壇上に登ります。
御行「もーいいだろ 時間の無駄だ」「反論があるなら俺の目を見て話す事だ」
ヒール調で伊井野を煽りにいった御行。「目を見て話す」の一言が、伊井野のコミュニケーション不全を取っ払う鍵でした。
伊井野が怖がりなのは、人の目を見られないから。壇上に登ったとき、彼女は1回も顔をあげていません。ところが御行が来て、生徒から目を離したことで、顔をあげて目を合わせることができました。視線が合えば、相手への恐怖はやわらぐものです。
ここから一気に伊井野の攻勢がはじまります。視線を意識している相手は御行のみ。御行は彼女の意見に対して、一つ一つ切り替えしていきます。しっかりとした討論が行われたことで、伊井野は初めて意見を、人前に出し尽くすことができました。
伊井野の意見がちゃんと伝わった結果、多くの支持者が生まれました。たくさんの人に努力が認められました。あがってしまって何も伝えられず嘲笑されていた日々を、伊井野は乗り越えました。御行の補助は確かにあったけれども、彼に対抗できるくらい訴えかけることができたのは、伊井野が信念を曲げず頑張ってきていたからです。
「徹底的に勝つ」というのは、完膚なきまでにたたきつぶすことではない。相手の全力を引き出した上で勝利することです。
新生生徒会誕生!
御行が再度会長になったからには、再び役員を選出することになります(この学校は、生徒会長が他の役員を選出します)。
石上と藤原書記は、そわそわ。石上「選ばれないかもって結構不安になるもんですね。性格に難ありますから、僕等」藤原書記「禿同!!」藤原書記が自分の性格に難ありだと感じていたことにびっくり。
もちろん御行が2人を捨てるわけはなく、すぐに「藤原書記」「石上会計」と呼んで迎え入れ、仕事を始めました。加えて伊井野を新規に生徒会に誘う様子も。次期会長を目指すなら実地で学んだほうがいい、という思いのようです。
御行の器の大きさを示したシーン。このときの伊井野の子供のような照れた反応、今まで誰かに誘われて活動をするという経験がなかったがゆえのものかも。
一方でかぐやは、ヘニャヘニャに弱っていました。今回の選挙で御行を当選させるためにムチャをしすぎた彼女。緊張の糸が切れてぱたりと体調不良に。
普段は気を張って厳しいことを言う彼女、身体を壊すと途端にメンタルが貧弱になります。以前風邪をひいたとき、幼児退行して甘えん坊になった様子も描かれました。
今回は「私を生徒会に入れるつもりは無いんじゃ……」とメソメソ。どう考えてもそんなわけないのですが(会長になってほしいと言ったのはかぐやです)、汚い手段を取った最低な女だから外されるんじゃないか、と疑心暗鬼。実はみんなが巧みに動いていた中、かぐやは選挙管理委員会に手を出すなど明らかにずるをしています(結果としては問題が起こらなかったからいいのですが…)。ムチャをいったゆえに、焦っていたようです。
加えて今回伊井野をフォローしたことで「会長は誰にでも優しくて誰にでも救いの手を差し伸べるのよ 私が特別な訳じゃなかった」と落ち込みます。
ここに関してはかぐやの杞憂(きゆう)なのはもちろんとして、今まで御行側が言葉としてかぐやに思いを伝えきれていなかったのも要因の一端かもしれません。御行とかぐやは「告らせたい」合戦が続いたがゆえに、お互いの本心をなかなか自分から表現できずにいました。「もしかしたら」が芽生えてしまう2人、それを取り除くにはきちんと言葉であらためて明示するしかありません。
御行「四宮 副会長になってくれ 俺にはお前が必要だ」
流れでひょろっと言った石上と藤原書記と異なり、きちんと言葉で許可を取りにきた御行。特別扱いもいいところ。お前が必要だ、の意味の深さよ。
大きな変化のきっかけとなった生徒会選挙。次回からは伊井野もレギュラー出演。今までとガラッと変わるかと言うと……多分あんまり変わらない。人間関係は積み重ねですから。
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