インタビュー

科学の力でおばけは見られるのか 「ばけたん」開発者に聞く“おばけ探知機の仕組みと進化”NMR ねとらぼミステリー調査班(1/2 ページ)

おばけ探知機を本気で作った男に迫ります。

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 「ばけたん霊石」というガジェットをご存知でしょうか。おそらく日本で唯一であろう市販の「おばけ探知機」。単なるジョークグッズと思われるかもしれませんが、「見えないものを見てみたい」という誰もが一度は抱いたことがあるであろう気持ちに、科学的・統計的なアプローチでまじめに向き合ったガジェットなのです。

 開発元のソリッドアライアンスは、2005年~06年にかけて「ゴーストレーダー」「ばけたん」を販売しており、そこから実に12年の歳月をへて、2018年にリリースされたのが「ばけたん霊石」(現在は「ばけたん霊石 改」となっています)。「なぜおばけ探知機を開発したのか」「どういう仕組みで、おばけを探知しようとしているのか」、今回は開発者であるソリッドアライアンス代表取締役・河原邦博氏に伺いました。

2019年に発売された、最新バージョン「ばけたん霊石 改」

「科学的な手法を用いて、統計学的に、おばけを探知しよう」 日本で唯一の「おばけ探知機」を作った男

―― お久しぶりです、よろしくお願いします。

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ソリッドアライアンス代表取締役・河原邦博氏(以下河原) 10年ぶりぐらいですね(笑)、よろしくお願いします。

ソリッドアライアンス代表取締役・河原邦博氏

―― なぜ「おばけ探知機」を作ろうと思ったのでしょうか?

河原 好奇心ですね。私も心霊スポットを結構回っていたクチで、ある日試しに電磁波センサーを持ち込んでみたんです。そうしたらスポットによって反応が違う。「これは何かあるぞ、心霊スポットとかへ持ち込むツールがあったら面白いよね」となりまして、ここから「ゴーストレーダー」プロジェクトが始まりました。

電磁波測定器。世界中の“ゴーストハンター”が持っている標準装備です

 世の中には、目に見えないものがいっぱいあります。おばけもそうですが、やる気や情熱、感情、愛情などもそうですよね。おばけを探知したい、見えないものを見てみたい、という情念も根底にありました。

 何を作るにしても楽しくやっていますが、決しておちゃらけてはいない。どれもこれも本気で作ってます。

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2005年に発売されたおばけ探知機「ゴーストレーダー」

 ゴーストレーダーの開発にあたっては、風速計、温度計、湿度計、磁界、電磁波センサーなど、市販のさまざまな計測機材を揃えました。それでいろいろな心霊スポット、パワースポットのデータを集めてみたところ、あるポイントでのみ大きな数字の変化が起きるなど、面白い現象が確かに見えてきたんです。

 ただ、おばけは目に見えませんよね。そこで「おばけの実態とは何か」という仮説を立てなければなりません。心霊スポットやおばけの出る場所によくある共通点、例えば水辺だったり、水分やホコリが多い、空気がよどんでいる、水脈がある、寒気を感じる……と、いろいろありますよね。

 実際に出るって場所を巡ると確かにそうなんですよ。そういう場所に、人の思念などエネルギーが集まりやすいんじゃないかと。ゴーストレーダーの際は「おばけとは、人の残留思念などのエネルギーが集まったもの。心霊スポットやパワースポットはそれらのエネルギーが集まりやすい場所。そして集まったエネルギーが、文化的に根付いた共通意識も含めて、脳に直接影響を及ぼしたものがおばけなのではないか」と考えました。

 次に、おばけをどう見つけていくかです。実際の心霊体験って……よくご存知かと思いますけど、とにかくオチがない(笑)。そもそも恐怖体験ですらないものも多い。

―― 分かります(笑)。何か異常が起きてくれたり、目に見えて襲ってきたり、写真に写ってくれれば簡単なんですよね……。

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河原 なので「科学的な手法を用いて、統計学的に、おばけを探知しよう」と考えました。そして各種スポットでのデータの採取と解析を進め、その道の研究者の方々からのアドバイスも参考にしながら、採用する機能を少しずつ絞っていき、小型化していった。その結果が、心霊現象のデータを取る際、世界的に使われている計測器とセンサーの小型統合機・ゴーストレーダーです。

※ゴーストレーダーには「磁界」「体抵抗」「温度」「光」の4つのセンサーが搭載。これらのセンサーが異常な数値を観測すると、対応したパターンで反応が現れる(探知には時間軸も使われるため、時計も備えている)。また、多機能でダウジングなどにも利用可能としている

左のデータロガーから、少しずつ右の形へと小型化していきました
ゴーストレーダーの試作機。カッコイイのですが、かさばる、怪しすぎるなどの理由でボツになったとのこと

 ところが、完成したはいいが売る方法を考えてなかった。おばけ探知機にはマーケットがない(笑)。お店の人だって「おばけ探知機です」と言われても、どこへ並べればいいのか困っちゃいますよね。

 そこで弊社の大ヒット商品で、世界初の「アヒル型やお寿司型などのおもしろUSBメモリ」の要素を持ち込んで、むりやり「おばけ探知機能付きUSBメモリ ゴーストレーダー」として発売したんです。

―― 私も買いましたが、「なんで取って付けたようにUBSメモリが?」と思っていました。

河原 苦肉の策です(笑)

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この通り、かなり強引にUSBメモリがくっついています。容量は512MBか256MB、時代を感じます……

見えないおばけの探知機をどう進化させたのか:ゴーストレーダーからばけたんへ

左がゴーストレーダー、右がばけたん

―― ゴーストレーダーと比べて、ばけたんは非常に小さくなっています。こうなった理由などをお聞かせください。

河原 ゴーストレーダーを発売した後、さて次は何を作ろうか、となりまして。当時はガラケーに取り付ける携帯ストラップが流行っていたんですよ。そこでゴーストレーダーを小型化してストラップにできないかな、と考えまして。

 ですがゴーストレーダーを、これ以上に小さくするのは無理なんです。新しい探知方法を探さなければならない。そこで着目したのが「地球意識プロジェクト」と「RNG(ランダムナンバージェネレーター)」です。

―― 人間の思考によって乱数が偏るのでは……という超心理学の分野ですね。

河原 乱暴にまとめると「乱数を生成し続けている装置が世界中に設置されており、大事件や大事故の直前直後になると、乱数が異常な偏りを見せるのでは」「スポーツの大会などで人が集まり熱狂すると、乱数の偏りが発生するのでは」という研究ですね。日本では明治大学に研究室があり、そこに乱数発生装置が置いてあります。

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※明治大学・石川幹人教授のWebサイトによると、同校では「情報科学センターにおいて,2002年1月よりGCP(地球意識プロジェクト)に協力し,RNG(乱数発生器)サイトを運営している」とのこと

 これらの研究では、オリンピックやニューイヤーなど、世界的なイベントの際に乱数の偏りが現れることが確認されています。特に世界的大事件や大事故のときは顕著で……例えば2001年の「アメリカ同時多発テロ事件」の発生直前と直後に、極端すぎる乱数の偏りが観測されています。

 そこで、ゴーストレーダーの開発に使用した解析データをもとに、特に異常な数値を観測したいくつかのポイントで乱数のデータを取ってみたところ、通常ではありえない偏りを見せたんです。これを受けて「乱数の偏りは、そこに何かがいて、それが意図的に起こしているのではないか」という仮説を立てた後、ダウジングの専門家の協力も受け、「ばけたん」が完成しました。

ゴーストレーダー製作時のデータ。これは1冊を抜き出したもので、同様の各種スポットのデータが大量に保管されています
おばけの声も聞こえるという、勾玉型の「ばけたん2」も発売されました

―― なるほど。おばけ探知機開発のノウハウがいきた形ですね。

河原 乱数発生機能がメインなら、それはもう簡単に小さくなりますからね。無事にストラップとして売り出せました。ゴーストレーダーの轍は踏まないぞと(笑)。初代ばけたんは「おばけ探知機能付きストラップ ばけたん」なんですよ。

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