コラム

「JR各社が時間帯別運賃を検討」つまりどういうこと?(1/3 ページ)

「ラッシュ時間帯は割高に、終電時間も繰り上げ」の導入を検討していますが、それはなぜ……?

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 東日本旅客鉄道(JR東日本)が、2020年7月7日に行った深沢祐二社長の定例会見で「時間帯別の新たな運賃体系を検討」していることを明らかにしました。併せて、西日本旅客鉄道(JR西日本)も7月22日、長谷川一明社長が同様に時間帯別運賃や終電繰り上げを検討していると述べました。


JR山手線(E235系)

 「ラッシュ時間帯は運賃を高くする」「終電も早める」──。「乗客分散効果、満員電車解決策の一つになると思う」「実際どうやるんだろう?」「安い時間帯がピークタイムになるだけのオチが見える」……など、ネットでも大きく話題になりました。その背景と課題、ポイントをサクッと解説します。

なぜ時間帯別の運賃体系を検討しているの?

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で、移動需要が大きく減退しました。これまで安定した運賃収益の礎であった通勤客の生活様式が変わりました。

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 JR東日本の2020年第1四半期鉄道営業収入は前年同期比34.1%、特に緊急事態宣言が発令された2020年4月、5月の利用客減が著しく、前年同月比30%と大きく落ち込みました。


2020年4月~6月鉄道営業収入は感染症流行の影響で、前年同期/同月比で著しい減収となった(JR東日本「鉄道営業収入資料」より)

 日本労働組合総連合会が2020年4月以降にテレワークを始めた労働者の意識をまとめた調査「テレワークに関する調査2020」によると、これまでの通勤からテレワークになった人は、26%が「毎日」、72.7%が「勤務日の5割以上」と回答(関連記事)。これまで定期を買い、固定ルートで通勤していた人が、やはりかなりの率で働き方を変えたことも数字として表れてきています。

 毎日固定ルートで通勤する必要がなくなることから、企業においても定期代の支給ではなく、従業員の柔軟な働き方に対応できる別の支給方法を取り入れる動きが進んでいます。

 テレワークの浸透など客の生活様式が大きく変化する中、鉄道会社も安全に安定したサービスを提供する公共交通機関としてのとても重要な役目を維持しながら、長期的に経営が成り立つように収益体制を変えていかなければ生き残れません。

 機会と理由は、新型コロナウイルスの影響による利用客の減少と生活様式の変化に対応し、安全運行のための保守人員確保なども含めたコスト面対策のため。時間帯別運賃の導入はその案の1つです。併せて「定期券の位置付けも考えないといけない」とJR東日本の深沢社長は会見の中で述べています。

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「満員電車」の課題解決にも時間帯別運賃が有効

 その一方で、都市圏の通勤時間はいまだに混雑が激しい現状もあります。例えばJR東海道線の川崎駅~品川駅間は、平日朝6時30分~7時30分に乗客が集中しています。


感染症対策と生活様式の変化を前提にした「満員電車を解消」する機会としても想定

首都圏通勤電車の列車混雑状況を見ると、2020年6月末~7月初旬も朝のラッシュアワーで「かなり混み合っています」のマークがある(JR東日本「列車混雑状況」より)

 鉄道車両は「換気のために、通勤電車の窓を開ける、ドアを開放するといった施策を行っている。鉄道車両は密閉空間ではなく、空調装置で常時空気循環・入れ替えを行っている(ので安全です)」(関連記事)とうたいます。しかし心配する声があるのも事実です。

 働き方が柔軟になる大きな変化を前提に、「ラッシュ時間帯は高くなるというより、ラッシュ時間帯を避ければ明確に安い」となればどうでしょう。満員電車の解消で「3密(密閉、密集、密接)を避ける」の緩和と、働き方の変化にも対応できる柔軟な体系としたい考えです。

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