連載

日本の人々に「足りていないもの」って? 「クィア・アイ in Japan」が教えてくれること

「自分を愛する」って、難しい……。

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 「自分を変えたい」――そんな相談者たちをプロフェッショナル5人組が背中を押すシリーズ「クィア・アイ」。2019年にはついに日本版「クィア・アイ in Japan」がNetflixで公開されました。

 「クィア・アイ」日本版に描かれているのは、自分を愛することが苦手な日本の人々の姿。こんな時期だからこそ見たい本作の魅力を、「見るだけで元気が出る海外ドラマやショー番組を紹介する本『ハピドラ! マンガで紹介 気分ぶちアゲ海外ドラマ』の著者momomosparkleさんに聞きました。

最強のメンバー×見慣れた場所

 水原希子をホストに迎え、4人の“ヒーロー”(相談者をこう呼ぶ)たちをおなじみのファブ5がブラッシュアップしてゆく。「自分を大切にすること」が大きなテーマとなるのが今回の「クィア・アイ」日本版。

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 美容担当のジョナサン、ファッション担当のタン、カルチャー担当のカラモ、インテリア担当のボビー、そしてフード&ワイン担当のアントニからなるファビュラスでクイアな5人組――通称「ファブ5」。相変わらずポジティブオーラ全開の5人に負けず劣らずきらきらしているのが、ホストの水原希子さんと、ゲストとして出演する渡辺直美さんだ。

 ふたりとも、世界中のメディアから注目され、国内でもとくに若い女性から支持を集めている。ふたりの共通点は、自分のスタイルを貫き通しているところ。周りに何を言われても気にしない強さこそが、輝きのひみつだ。

 最強のメンバーたちが、わたしたちが見慣れた場所を舞台に日本人ヒーローたちに愛と救いの手を差し伸べてゆく。ハッピー度120万点の全4話となっている。落ち込みやすいあなたにこそ見てほしい、この夏おすすめの観るビタミンだ。

じぶんにやさしく

 「クィア・アイ」はいつもこちらの涙腺を開きっぱなしにしてくるんだけど……今回もエピソード1からさっそく大号泣してしまった。

 最初のヒーローは、映画「ローマの休日」が大好きだというヨウコさん。彼女は自宅を開放しホスピスを経営しているのだけど、入居している患者さんたちのことを第一に考えて、自分のことは何ひとつかまわないでいた。寝室さえも体が弱っている人に提供して、自分は床で寝ていたほど……!

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 ファブ5との自分磨きのプロセスの中で、カラモと一緒にジェラートを食べながら自分を大切にできない根本的な原因について話し合う。過去にお姉様を病気で亡くしている彼女は、私だけが幸せになるなんて、という思いが心にあったから、ただひたすら人につくす日々を送っていたの。そんな彼女にカラモは、自分を許すようにさとす。人のためにつくすのは素晴らしいことだけれど、自分を責めるのはちがう、とね。人に優しく、自分にも優しく。

 そのシーンだけでも涙がとまらなかったのに、ジェラート屋さんから出てすぐ、カラモがサプライズで用意したベスパに乗ったときの彼女の素敵な笑顔といったら……!ジェラートにスクーター、まるでヨウコさんの大好きな「ローマの休日」のデートをなぞるような演出に、ときめきとよろこびで胸がいっぱいになった。

わたしはわたし

 セクシャリティが原因で、日本での生活に苦しさをかんじていたというエピソード2のヒーロー、カンさん。彼にジョナサンが送ったアドバイスが忘れられない。

 「大事なのは状況そのものではなく、それにたいしてどう行動するかだよ。君が自分らしく生きることで、ほかの人もありのままに生きやすくなる」――。

 インターネットや本から多様な考え方を知ることができる私たちの世代は特に、彼のように「自分らしくあること」について悩む人が多いのではないだろうか。かくいう私もその1人。ただ自分らしくいたいだけなのに好きなものを好きと言えない。ここでは誰も私を理解してくれない。そんなふうに、自分のいる環境を恨んだりしてしまうこともあるよね。

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 でも、そんなカンさんにジョナサンが向けたのは、励ましのような叱りのようなジョナサンの言葉。画面を通して直接訴えかけてきているかのように感じて、私の心に深く刺さった。

 今の状況に疑問や不満を感じるのなら、自分がそれを変えるきっかけになればいい。その方法としてジョナサンが教えてくれているのは、「誰がなんと言おうと自信にあふれた態度でいればいいの!」ということ、そして過激に世間に反論するのではなく、「心の中で自分を過激に愛すること」。

 誰がなんと言おうと気にしない。だって私は素敵なんだから! ヘイトよりラブを。受け入れることを大切にする「クィア・アイ」らしさ、ジョナサンらしさにあふれたアドバイスだ。

ココロをつたえて

 今回は舞台が日本でヒーローたちの状況をより身近に感じることができるため、アメリカ版よりもハッとさせられることも多かった。このエピソードのヒーローであるマコトは、極度の人見知りで自分をさらけ出すのが苦手。結婚して7年になる妻ヤスコが自分を愛しているかどうかがわからず、きちんと向き合うことを不安に感じていた。

 長年のセックスレスに悩み、ヤスコも自分たちの関係を「ビジネスパートナーみたい」と言う。そんな状況を変えたい!と、今回はマコトがファブ5の助けを借りて頑張るのだ。

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 ふたりがお互いへの本当の思いを伝え合う場面で、ヤスコも実は「私と結婚して後悔していないか?」と不安をもっていたことをうちあける。「ヤスコさんがいるだけで救われている。僕はヤスコさんを愛している」ときちんと伝えるの。その後のふたりのハグと涙が愛とあたたかさにあふれていてもう……!

 私も一緒に泣いちゃった! 日本にはあまり「愛してる」と口に出す文化がない。家族のような近い存在ほど、「愛してる」というのは恥ずかしいという人もいる。マコトとヤスコも、お互いをずっと心から愛してきたはずだけど、愛は目にみえないから伝えないとわからないもの。どうにかして伝えないと、そこには愛がないと思われてしまうかもしれない、そう気づかされた。「愛してる」って言葉が緊張しちゃうなら、「今日素敵だね!」とか「いつもありがとう」とか、ほっぺにちゅ!とかなんでもOK。できるところから、相手に愛を伝えてみよう!

本当は気づいていたこと

 今回の4つのエピソードに登場するヒーローはみんな、それぞれの愛をもつ人たちだ――弱い人々への愛、恋人への愛、芸術への愛、パートナーへの愛。けれどみんな、自分を愛することが苦手だった。きっと日本には、そんな人が本当にたくさんいると思う。私たちが思っているよりも、たくさん。

 私たちの国にある「謙遜(けんそん)」という考え方は、他者への思いやりが込められた素敵なものだ。でも時にそれがいきすぎてしまったり間違った方向にいってしまったりして、自分自身や他者を傷つけてしまうことがある。周りを気遣うことと、周りにどう思われるかを気にすることは、イコールではない。

 ファブ5が教えてくれるのは、自分を愛すること、そして「愛しているよ」と伝えることがどんなに大切かということ。私たちが本当は知っていても気づかないふりをしてきた真理だ。世間の目や評価なんて気にせず、自分を信じていればきっとそれができるはず。ファブ5のみんな、日本にきてくれてありがとう!

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momomosparkle

イラストレーター&デザイナー&漫画家。カリフォルニアのカレッジで2年間アートを学んだ後、美大を卒業、現在はフリーランスとして活動中。かわいいものや楽しいことが大好き。著書に『ハピドラ! マンガで紹介 気分ぶちアゲ海外ドラマ』(柏書房)。

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