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登場人物が生きていると錯覚するための「手紙型小説」 手紙のやりとりを本当に便箋で再現した同人誌『拝啓、』がこだわってる

よくある「手紙のやりとりを本文にした小説の本」ではなく「本自体が手紙のやりとりでできている小説」。

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 同人誌制作者さんに作品へのこだわり、思い入れなどを伺う読者応募企画「装丁にこだわりまくった同人誌、教えてください」。今回は、本文が手紙のやりとりになっているだけでなく、作品自体が便箋の束でできている小説『拝啓、』(「東方project」二次創作)のお話を伺いました。

魔理沙→霖之助の便箋
霖之助→魔理沙

『拝啓、』

  • サークル名:雨宝引
  • 制作者名:雨野みるは(Twitter:@yukihaaya/pixiv:雨野 みるは
  • 霧雨魔理沙と森近霖之助がどんな生活をしているのか、今日の天気はどうだった、昨日食べたあれはおいしかったという2人のちょっとの報告と手紙が届いた時のあの嬉しさを疑似体験する小説です。
  • 2021年春に増刷&続編制作予定

「キャラクターが生きていると錯覚」させるための手紙型小説

―― 『拝啓、』のコンセプトは?

 「私たちとキャラクターとの境目を曖昧にする」「『霧雨魔理沙』『森近霖之助』らキャラクターが生きていると錯覚する」ことをテーマに、私たちが彼らの生活をのぞき見しているような製本に致しました。

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 のり付けされた封筒の中に、各キャラクターをイメージした紙質、文体、文字の書き方の便箋を折り込んでいます。また、手紙の最後には「森近霖之助が手紙を受け取って泣いてしまう」ということを表現するためにインクを3色使って紙への涙の滲(にじ)みを表現しました。透明インクを使うことで水で透けたような印刷になっています。

 実際に読んだ方から「まるで生きているみたい」という感想をいくつかいただきました。

インクで表現した涙の滲み

―― その他にこだわったポイントは?

 後書き、奥付も物語の景観を損ねないように、作中に使われていた白い便箋とは異なる藁半紙(わらばんし)の色付きの紙を使用しております。

 それから、これは物語の重要な内容に関わる話なのですが、手紙の中で霧雨魔理沙は森近霖之助にしおりを渡す日があって、そのしおりを実際に作成して封入しています。「リナリア」という花をドライフラワーにしてシーリングワックスで留めたしおりを、読者にも実際に手にしてもらうことで、物語への没入を誘っています。

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―― 過去に、この本は「製本が爆裂に手間が凄い」ため再販が大変だとツイートされていますが、なぜでしょうか?

 紙質がそれぞれに異なる手紙を1枚1枚印刷し、それを一部ずつ手製本したこと。表紙となっている封筒が一般に使われているサイズではない(B6)ため印刷ができず、消しゴムハンコで印字したこと。

―― やっぱりイレギュラーなつくりの作品だけに、手作業が多いというのが一因ですか。

 それに加えて、しおりに使ったリナリアの花が花屋さんが売られておらず、ホームセンターなどで3株ずつ程度しか販売されていなかったので、自分で育てて一輪一輪ドライフラワーにして、それをシーリングワックスで留めて……という作業に、多くの時間を要しました。

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本企画では取材させていただける方を常時募集しています

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