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「STAND BY ME ドラえもん2」ネタバレレビュー 「大人のび太」は幼稚なダメ人間なのか? 解釈違いにドラ泣きMAX(1/4 ページ)

「幼稚な大人のび太」が生まれたのには明確な理由があった。

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  現在、「STAND BY ME ドラえもん2」が公開中だ。はじめに申し上げておくと、作品としてのクオリティーは決して低くない。実際に、Filmarksでは5点満点中3.7点映画.comでは5点満点中3.4点と、まずまずの評価を得ている。

 だが、本作は素直に感動するのが難しいほどのノイズに満ちた、「ドラえもん」という作品に対する作り手の姿勢にも疑問を持ってしまう問題作でもあった。具体的なモヤモヤしたポイント、問題がどこにあるのかを、以下に記していこう。

「STAND BY ME ドラえもん 2」予告2

※以下、「STAND BY ME ドラえもん2」の結末を含むネタバレに触れている。鑑賞後にお読みいただきたい。

1:前作からの改善点はあるものの……

 まず、本作の企画そのものは良かったと思う。原作の「おばあちゃんの思い出」(4巻収録)では、子どものび太が「のびちゃんのお嫁さんをひと目見てみたいねえ」というおばあちゃんの言葉を聞いて、しずかちゃんに「ねえ、今すぐぼくと結婚してよ。だめ?」と聞くという、とぼけたオチで終わっていた。この物語を膨らませて、実際におばあちゃんに結婚式を見せることをゴールにするというのは、長編映画化のアプローチとしてまっとうだ。

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原作のおばあちゃんとの名エピソードを組み込んだプロットとなっている(画像は予告編より

 前作「STAND BY ME ドラえもん」より改善したと思えるところもある。前作ではピクサー作品の安いコピーのようなエンドロールの“NG集”が余韻を台無しにしていたが、今回は「盗んでしまったスクーターをちゃんと持ち主に返す」など、作中の出来事を補完する内容になっている。

 前作の「ドラ泣き」という寒気のするキャッチコピーは「ドラ泣きふたたび」や「ドラ泣きマックスIMAX」などとむしろ悪化してカムバックしてきたりもしたが、実際の本編では“泣かせる”ようなあざとい演出はそれほどないように感じた。

 だが……残念ながら、そうした改善点を顧みても、「STAND BY ME ドラえもん2」は山崎貴という(共同)監督および脚本家の、「ドラえもん」という作品の捉え方、その作家性、いや無神経さが悪い方向に働き、1人のドラえもんファンとしてとても許容できない内容になってしまっていた、というのが結論だ。

2:大人のび太に必要以上にイライラしてしまう理由

 本作の最大の問題点は、「大人のび太の言動が幼稚すぎて応援できない」と実に明白だ。

 予告編などで分かる通り、今回の物語を大きく動かすのは「のび太が結婚式から逃げた」ということであり、その理由は「(こんな僕じゃ)しずかちゃんを幸せにしてあげられないかもしれない」という自信のなさに起因している。

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 これ自体は「男性のマリッジブルーを描く」という普遍的な視点があるし、原作の「雪山のロマンス」(20巻収録)でのしずかちゃんの「そばにいてあげないと危なっかしくて見てられないから」という自身との結婚理由を心配しての発言だからまだ良い。だが、その後に大人のび太は子どものび太と精神を入れ替え、ただ“懐かしさ”に耽溺(たんでき)していくのである。

 参加した草野球で大失態をしたうえに、怒りに満ちているジャイアンに「わ~怒っている懐かしいな~」などとナメた態度を取り、突っかかってきた中学生たちを相手に大人の余裕(これがまた幼稚)を見せつつカネを渡して場を鎮めようとし、あまつさえスクーターを盗んで逃走する。

スクーターを盗んで逃走するのびた(画像は予告編より

 劇中で子どものび太に「めんどくさい人だなあ」とツッコまれていたが、その後にめんどくさいどころかイキり散らす迷惑千万な犯罪者と化すため、必要以上にイライラしてしまうのだ。

 この「大人のび太が許容範囲を超えてダメ人間化した」理由は、今回の脚本を務めた山崎監督の以下のインタビューでもはっきりとわかる。

物語では、大人のび太の「ダメっぷり」をとことん強調した。これはかつて監督・脚本を手掛けた「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの主人公茶川竜之介(吉岡秀隆)の人物造形をした時の教訓から。山崎監督は「茶川さんを良い人にすると話がつまらないのに、クズにしたらすごく面白くなった。ダメな男が頑張るから面白い」と愉快そうに話す。

“ヒントはあの有名ハリウッド映画? 「STAND BY ME ドラえもん2」の八木、山崎監督に聞く” - 時事ドットコムニュース

 脚本を書いた当の本人は「物語を面白くすることを優先して大人のび太をダメにさせた」と愉快そうに説明していたそうだが、この本編を見たらとても愉快ではいられない。のび太のダメさが意図的なものだとしても、明らかにやりすぎだ。

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