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「STAND BY ME ドラえもん2」ネタバレレビュー 「大人のび太」は幼稚なダメ人間なのか? 解釈違いにドラ泣きMAX(2/4 ページ)

「幼稚な大人のび太」が生まれたのには明確な理由があった。

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 余談だが、前作「STAND BY ME ドラえもん」における大人のび太は、「ドラえもんに会ってみない?」と提案されても、「ドラえもんは僕の子どものときの友達だから」という理由で会わなかった。だが、今回は思い切りドラえもんに会ってしまっている。こうしたところに、前作の「子ども時代の思い出に耽溺しない、ちゃんとした大人のび太」をも否定するという、無神経な展開となっている。

3:そのままでいいわけがない

 さらなる問題は、大人のび太が中学生たちに追いかけられ、河原でしずかちゃん、スネ夫、ジャイアンとともに戦った後のこととだ。ここでしずかちゃんは「のび太さんはそのままでいいの!」と言うのである。

 そのままでいいわけがない。まず、中学生たちに追いかけられたのは大人のび太が自分で蒔いた種であり、ここでケンカに巻き込まれてしまうしずかちゃんを助けるのは、無茶をしているとかそういう問題ではない。この流れでそのセリフはおかしいし、前述した「イキり散らす幼稚な大人のび太」を肯定したようにも思えてしまう。

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しずかちゃんがのび太のダメな部分まで肯定してしまう(画像は予告編より

 これは「ドラえもん」という作品の精神性にもひどく反しているように思う。ドラえもんがなぜのび太のところに来たのかと言えば、しずかちゃんと結婚をするという未来を手にするためだ。確かに子どものび太はダメ人間なのだが、しずかちゃんと結婚できる大人になれるように成長を是とする物語なのではないか。そうであるのに、ダメ人間のままの大人のび太に向かって、「成長しなくていい」としずかちゃん側に言わせるのは問題だろう。

 また、原作の「のび太の結婚前夜」(25巻収録)において、しずかちゃんのお父さんの「あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。それが一番人間にとって大事なことなんだからね」という名言がある。これに対し「STAND BY ME ドラえもん2」ののび太が、最後のスピーチで“返答”となるセリフを口にする展開は良かった。だが、今回の物語全体を通して見ると、大人のび太がその“人間にとって一番大事なこと”ができているとは、全く思えないのである。

 そんな大人のび太のことを、結婚式のしずかちゃんは責めないどころか、「よくできました」とやはり子ども扱いをしたようなセリフを放ってしまう。さらに、子どもと入れ替わっていたのび太のことを「ニセモノだったでしょう」とも言う。

 ニセモノという言い方は、いくらなんでもないだろう。大人のび太はともかく、子どものび太はしっかり努力をして結婚式を成功させようとしていて、そのことをおばあちゃんにも褒められていたのに、それすらも台無しになってしまったようなガッカリ感があった。

4:山崎貴の“定められた運命”を良しとする作家性

 なぜ、「STAND BY ME ドラえもん2」が「成長しなくていい話」になってしまっているのかと言えば、それは前述の通り山崎の作家としての資質および、「ドラえもん」という作品の捉え方に起因している。過去に脚本を手掛けた作品を振り返ってみれば、そのことを裏付ける、実に興味深い一貫性があることが分かる。

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 まず、山崎の劇場用長編デビュー作である「ジュブナイル」は、ドラえもんのファンが発表した同人作品「ドラえもんの最終回」が下敷きになっており、実際に読んだ山崎監督が、「居ても立っても居られない」ほどに感動したことがきっかけで企画がスタートしている。この同人誌の物語は「ドラえもんを作ったのは大人になったのび太であった」という過去と未来がつながる構造になっており、そのことが「ジュブナイル」の作劇でも踏襲されていた。

 そして、前作「STAND BY ME ドラえもん」は、原作のいったんの最終回である「さようならドラえもん」と、連載再開した時の「帰ってきたドラえもん」を合わせてクライマックスに持ってきている。これを長編映画の中で続けて見ると、のび太はジャイアンと対決して「ドラえもんから卒業する」という自立および成長をしたはずなのに、結局は“元のままに戻る”という話にも思えてしまうという問題があった。

 つまり、山崎監督は「ドラえもん」という作品を、「結局はこういう未来になる」という“定められた運命”の物語と捉え、それこそが良い話だと思っているフシがある。その価値観は、タイトルにまさに運命が入っている「DESTINY 鎌倉ものがたり」の作劇でも引き継がれていた。

 いや、「ドラえもん」という作品は、その全く正反対の、ドラえもんが来たことにより、のび太が「未来を変える」話ではなかったか? もちろん物語が人によっていろいろな捉え方ができるのは承知しているが、個人的には全くの解釈違いだったのだ。

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