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「夢や希望もありゃしない世界」 窪田正孝×西野亮廣インタビュー、“バッシング社会”で生き抜くために(1/3 ページ)

「大人になるにつれ、なくしていくものの方が多い気がしていて」。

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 お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんの絵本を原作とした劇場アニメ「映画 えんとつ町のプペル」が12月25日に公開。2016年に発売され60万部超え(2020年12月現在)のベストセラーとなった絵本が、映画に形を変えて世界へ羽ばたいてきます。


インタビューに応じた西野亮廣さんと窪田正孝さん(Photo by こた

 夢を持てば笑われて、声を上げればたたかれる、どこか現代社会と通じる空気がまん延する「えんとつ町」を舞台に、星を信じる少年ルビッチ(芦田愛菜さん)と、ゴミから生まれた“ゴミ人間”のプペル(窪田正孝さん)が星を見つける旅へと繰り出す冒険物語。

 芸人としての活躍から一転し、絵本作家としても活動する西野さん。かたや、コロナ禍の影響を受けながらもNHK連続テレビ小説「エール」で主演を務め、今作に“声優”として挑んだ窪田さん。「えんとつ町」が生まれた背景や今作で抱いた思いをはじめ、エンターテインメントの業界で活動されている2人にメディアの現実や未来、社会との向き合い方まで、たっぷりと聞きました。

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窪田正孝、メディアの変化に「戦うフィールドが変わってきていることは事実」

――ルビッチとプペルが「えんとつ町」で、星を信じて行動して起こしたことは、意思のもとに奇跡が開けていっているように感じたのですが、お2人は奇跡をどのように捉えていますか。

窪田: 何か起きるとか起こすというよりは、起こるべくして起きるものという気がしています。その人のやった結果というか。例えば、目の前にある課題ですごい悩んでいて答えが出ないのなら、それは今答えを求めてもしょうがない。今、答えが出るべきものをやるべき。積み重ねていった結果、その形になったなら、それを“奇跡”と呼んでいいと思うんですけど、追い求めていてもしょうがないかな、と。

西野: 何かを目指して走っているときに、僕がまず考えるのは「やっちゃいけないことは何なんだ」ということなんです。要するに、落とし穴の場所を全部調べて「そこは絶対踏まないぞ!」っていう。それだけで目指すところまで届くのかどうかは分からないんですが、1つ確かなことは、死んだら終わりだということ。だからこそ、何をすれば落ちるのかを徹底的にリストアップして、それを避けるようにしてます。

 踏み込んだ話をすると、例えば2013年から2014年くらいにYouTubeが盛り上がってきて、そのころからもうみんなはメディアをスマートフォンで見るようになってきてますよね。テレビのバラエティー番組に出演するなら、ひな壇で前に出る技術を磨くことも大切ですが、それは画面の面積が大きいメディアに求められている技術。今はスマートフォンで見るから、瞬発力よりも「お前1人で何分保たせられるの?」という持久力の方がより必要だと思うんです。

 だから、1人でしゃべられるようになろうとか、1人で時間を保たせられる人になろうとか、そっちの筋肉を鍛えています。とはいえそれがうまくいくのかは別の話で、成功する確率を上げることはなかなか難しいけど、失敗する確率を下げることは可能だと思っています。

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――なるほど。窪田さんにお聞きしたいんですが、メディアによってお芝居の見られ方は変わらないと思いますか?

窪田: 戦うフィールドが変わってきていることは事実ですね。動画配信サービスが、今後戦うというか生き残る場所なのかなとは思います。映画館はなくなってほしくないですけど。

西野: 確かに。映画館、いいっすよね。

窪田: スマートフォンのように画面が手元にあると、それだけで成立しちゃう。だから、映画館に行く価値を作り手側がどう見い出していくかは、また別の話になっていくとは思いますね。

これからは映画という「体験」に可能性がある

――絵本では描かれなかったストーリーも映画で完結するとのことですが、「映画」というアウトプットにこだわった理由をあらためて教えてください。

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西野: 自分たちが提供している作品やサービスをもっと因数分解した方が良いなと思っていて。例えば、絵本だと「読み物」という意味がある一方で、読み聞かせという「親子のコミュニケーションツール」としての意味もある。さらに、最近僕らがスタートしたサービスだと「ギフト」としても機能する。絵本『えんとつ町のプペル』を贈るサブスクみたいなものがあるんです。毎月2000円で世界中の子どもたちに絵本を1冊毎月贈れるみたいな。だから、絵本は「読み物」「親子のコミュニケーションツール」「ギフト」、この3つの価値があると思うんです。

――映画にはどのような価値があると思いますか?

西野: 映画の場合、「情報としての映画」と「体験としての映画」は明らかに違う。一つ言えるのは“好きなものが同じ”という共通項があると、人との距離はぎゅっと縮まる。昔はテレビがそうで、「あのテレビ見た?」っていうコミュニケーションのきっかけになっていた。今は分断されてしまっていますが。それでいうと、映画は「コミュニケーションツール」と「体験」の機能があって、その2点をもっと押し出していくと可能性がだいぶ広がると思っています。

 今、僕オンラインサロンをやっていて、会員が7万人ほど。今回の映画でいうと、47都道府県で300館、各映画館で一緒に行く人を募っているんです。例えば「山形県の映画館、25日に行く人」で20人ほど集まったら、その人たちが一緒に観に行って、同じものが好きだから話も合うしそのまま飲みに行く。これって、テレビやスマートフォン、動画配信サービスではできない体験ですよね。コミュニケーションツールとしてむちゃくちゃ機能しているので、映画館には可能性しかないと思います。

――映画をコミュニケーションにつなげたいというモチベーションはどんなところからきているんですか?

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西野: 映画に限らずですが、インターネットによって世界がどう変化したかっていうと、あらゆる情報や技術がシェアされて高品質に均一化されましたよね。どのラーメン屋も美味しかったり、どの家電量販店に行ってもほとんど同じ値段になっていたりと、機能で差別化を図ることがなかなか難しくなってきている。

 そこで、お客さんが何で選ぶかっていうと、機能の検索ではなく「あの人が働いてるから行こう」っていう“人検索”。そういった人同士を結ぶサービスの方が強いと思っているんです。エンターテインメントは、情報を飲み込んで終わりじゃなく、「この映画館に行ったらまた会えるから、飲みに行こう」みたいに、人と人がつながるようになったら強いですよね。

 あとは、発信できるのも強いです。テレビは受信する一方ですが、コミュニケーションって会話が発生するので、発信できる楽しさはあるかもしれない。これからはエンターテインメントとコミュニケーションは基本的にセット。それを分けちゃうと、つらくなってくるだろうなとは思いますね。

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