ニコ動で一世を風靡した「少し楽しくなる動画」を実写&CGで完全再現 3年かけた大作動画の完成度がすごい(1/2 ページ)
中曽根ティーチャー! 中曽根ティーチャーじゃないか!
かつてニコニコ動画で一世を風靡した、“水色”のTシャツを着たおっさんが街やオフィスを妙にノリノリに練り歩く「少し楽しくなる動画」を覚えているだろうか?
印象的な空耳歌詞「中曽根ティーチャー♪」「おまいGONZO♪」なども人気を集め、ニコニコ動画では2007年の投稿から現在までに180万回以上の再生を記録。いわゆる「β時代の英雄」的動画だが、それを実写とCGで完全再現した動画が2021年1月に登場。あまりにすばらしいできだったので、ねとらぼ編集部では監督をはじめとする動画スタッフにインタビューを行った。
原曲は高橋孝博さんによるソロユニット・HALFBYの「RODEO MACHINE」と「SCREW THE PLAN」の2曲。ミュージックビデオはもともと「GRV2283」という題で、デザインユニット・GROOVISIONSが手掛け、DVD化もされている。ミュージックビデオではリズムに合わせ街を練り歩く集団を上空から捉えたパートと、“水色”のおっさんがオフィスビル内を暴走するパートに分けられ、いずれも画面内をわちゃわちゃと動き回る無数のモブのアニメーションがリズミカルで楽しい。
動画を現実に再現するオフ会は空耳歌詞にちなんだ「中曽根オフ」として、2007年ごろから全国各地で行われる人気に。今回紹介する「中曽根OFF in SATSUMA」もそうしたオフ会の1つとして、2007年9月に第1回が開催された。
同グループでは元動画の10周年を記念し、2017年に「中曽根OFF in SATSUMA」の第3回を開催。技術の進歩で可能になった新たな動画を作るため、監督のつくPさんを筆頭に、16人の運営スタッフ、数十人の撮影参加者が集う一大プロジェクトとなった。
動画の前編は2017年末に公開され、ドローン撮影を駆使した上空からの大人数撮影が話題に。オフィス内を俯瞰視点で行進する後半パートは実現困難と思われたが、2018年にはグリーンバックを使った追加撮影を実施。別々に撮影した大量の人物をCGで作成した建物内に合成していくという力技で、撮影完了から約2年4カ月を経て、このたびついに公開となった。
完成度の高さについては実際に動画を見てもらうとして、今回のメールインタビューでは監督のつくPさん(総監督/企画立案/撮影/編集)、サポートを行った運営スタッフの方々、そして“水色”役として動画に参加した星場サトシさんにこだわったポイントや苦労話を聞いた。
撮影から完成まで3年以上かけた力作
――動画の完成おめでとうございます。前編と後編、順を追ってお話を聞いていければと思います。まず前編は空撮がすごいですね。
つくP 前編はドローン撮影で、まさに空中からの視点で撮影できるじゃん! というところから企画を思い付きました。
スタッフ 以前は脚立や階段上からのアングルでしかできなかったものが、「本家さながらのアングルで撮れる、いくか!(監督)」→「面白いことやろーぜ!(スタッフが集まる)」→「どうせなら後半も撮ろうぜ!!!(CG合成)」と企画が広がっていきました。
――作る上で大変だったことは?
つくP 前編は撮影対象を自動的に追いかけてくれる機能を使って楽勝かなと思っていたのですが、当日うまくいかず、結局手動操縦することに。ワンカット撮影のためミスがあまり許されず、かなり緊張しました……。
スタッフ 最初の撮影が雨で流れたのも大変でした。ですがその日は準備不足で、細かい撮影の段取りが詰められていなかったので、むしろ流れてくれたおかげで「ワンカット撮影」という指針をはっきりさせることができました。次の撮影ではワンカットで撮るための施設と、会場でのルート選びをしっかり準備してから臨めて良かったです。
星場 雨といえば、撮影のために丸坊主にまでなったのに、雨で流れたりしたせいで合計3回丸坊主にするはめになりました……。
――動画内でかつらが外れるシーンがありますが、あそこはCGじゃなかったんですね……!
星場 身の回りで聞かれたときには、身バレしたくないので説明に困りましたね(笑)。前編はワンカット撮影のためほぼずっと歩き&走りっぱなしのため、かなりバテました。ラストでヅラが取れないNGを出して、そのテイクが全てオジャンになったこともありました(笑)。
――あの動きで歩き続けるのは大変そうですね。
星場 “中曽根ウォーク”の独特なステップは撮影に向けてあらためて細かく確認して、再現にこだわったところです。友達からも「中曽根ウォークでお前に勝てる奴はいない」と言われました。
――今回公開された後編は、撮影から完成まで長い期間を要したとか。
つくP 制作時間の確保に非常に難儀したため、撮影から3年もかかってしまいました。おかげで先の年末年始には作業のため監禁される事態に……。
スタッフ スタッフ陣で監督を捕まえて、編集作業の生配信もしました。本人はアニメ「SHIROBAKO」のように監禁されて大いに喜んでいたようです。3日間の生配信+ちょっぴり延長で完成できて良かったです。
つくP 後編では3Dソフトの「Blender」を覚えるのにも苦労しました。もっと調整・追加していきたかったのですが、また公開が伸びてしまうので、そこは泣く泣く断念しました。
――十分豪華な画面になってますよ! 監督に加えて、スタッフが総勢16人とかなりの大所帯ですが、分担はどのように?
スタッフ 技術的なことはほとんど監督がやるので、それ以外のスタッフはとにかくイベントとしての中曽根オフを成立させることを目標に取り組みました。作業分担は基本的にやれる人がやれることをやるスタイル。当日までにやれることをみんなで洗い出していって、それぞれがやりたいこと・できることをやりました。
星場 ドローンによる視点の再現や、グリーンバックによる撮影に参加できて、昭和っぽい表現ですが、「ブラウン管の向こうの世界」が身近に感じられて、「科学のちからってすげー!」と思いましたね。参加者みんな、そんな撮影技術に触れられたのは面白かったのでは、と思います。
――最後に企画をやり遂げてのコメントをお願いします。
星場 鹿児島もなかなかやるなって思ってもらえたんじゃないでしょうか。一連の動画で鹿児島に興味を持ったら、落ち着いたタイミングで遊びに来てもらえるとうれしいです。あと、スタッフが若干オイラのことをぞんざいに扱い過ぎなので、もう少し優しくしてください。
スタッフ そして監督はわれわれスタッフにおいしいものをおごるべき。
つくP 参加者に、スタッフに、中曽根感染者たちに感謝……。
スタッフの3年分の情熱が詰まった動画はニコニコ動画とYouTubeで公開中。
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