湯浅政明監督『犬王』がベネチア映画祭オリゾンティ部門にノミネート 「この作品はある種のロックオペラだ!」
古典芸能である能楽を湯浅監督らしいアプローチで描いたミュージカルアニメーション。公開は2022年初夏に。
湯浅政明監督の劇場アニメーション映画『犬王』が、9月に開催される「第78回ヴェネチア国際映画祭」のオリゾンティ・コンペティション部門に選出されたことが分かりました。日本の長編2Dアニメーションが同部門に選出されるのは初。「この作品は14世紀の日本を舞台に、時代の潮流にあらがうユニバーサルなドラマ性を持ち合わせた、ある種のロックオペラだ!」と紹介されています。
『四畳半神話大系』『夜明け告げるルーのうた』『DEVILMAN crybaby』『映像研には手を出すな!』『きみと、波にのれたら』など多くのアニメーション作品を世に送り出してきた湯浅監督。文化庁メディア芸術祭ではこれまでに4度の大賞受賞、海外でもアヌシー国際アニメーション映画祭などでの受賞歴を重ねる湯浅監督の最新作が『犬王』です。
同作は、室町時代に実在した能楽師・犬王と、そのバディである盲目の琵琶法師・友魚の友情を描いたもので、古川日出男さんの『平家物語 犬王の巻』を原作に、古典芸能である能楽を湯浅監督らしいアプローチで描いたミュージカルアニメーション。
キャラクター原案を漫画家の松本大洋さんが、脚本をドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で知られる野木亜紀子さんが手掛けることも話題ですが、犬王と友魚を演じるキャストには、ロックバンド「女王蜂」でボーカルを務めるアヴちゃんと、五輪開会式でのダンスパフォーマンスも話題を呼んだ森山未來さんの起用を発表。2人の共演は映画『モテキ』以来10年ぶりです。
犬王役のアヴちゃんは『DEVILMAN crybaby』以来となる湯浅作品参加に、「普段女王として生きているわたしが、今回『王』として生きる機会を頂きました。『犬王』。まっすぐに、運命の映画だと言い切ることが出来ます。ああ! 来年をおたのしみに!」とコメント。『聖☆おにいさん』以来2度目のアニメ声優出演で、湯浅作品には初参加となる森山さんは、「琵琶法師、友魚として、これまたぶっ飛んだアヴちゃん演じる、艶やかな犬王に寄り添う。必然、ジェットコースターのような現場でした」とアフレコを振り返っています。
初解禁された特報では、湯浅監督らしい躍動感あふれるアニメーションで描かれた犬王と友魚の姿。「室町時代」や「能楽」といった既成概念を取り払うかのような音楽と映像表現のグルーヴ感が新鮮です。作品のキーとなる音楽には、「あまちゃん」「いだてん~東京オリムピック噺~」『花束みたいな恋をした』の大友良英さんの参加が明かされています。
同作は、カンヌ、ベルリンと並び世界三大映画祭と称されるヴェネチア国際映画祭(会期:2021年9月1日~11日)のオリゾンティ・コンペティション部門に選出。同部門は、先鋭的な映画を発掘し、世界の新しい潮流を紹介するために2004年に新設されたもので、日本の長編2Dアニメーションが選出されるのは初。他部門を含めても2013年の『風立ちぬ』(第70回ヴェネチア国際映画祭メインコンペティション部門選出)以来8年ぶり。フル3DCGアニメーションを含めると2016年の『GANTZ:O』(第73回ヴェネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門選出)以来5年ぶりに日本の長編アニメーションが選出されたことになります。
選出時に、「この作品は14世紀の日本を舞台に、時代の潮流にあらがうユニバーサルなドラマ性を持ち合わせた、ある種のロックオペラだ!」と紹介された同作。作品の上映時期も2022年初夏と発表され、同映画祭での上映がワールドプレミアとなります。
友魚(ともな)役:森山未來コメント
現存する能楽が確立される前なのだから自由な発想で演じられていい、という考えのもとに湯浅監督が生み出したぶっ飛び能楽アニメーション「犬王」。琵琶法師、友魚として、これまたぶっ飛んだアヴちゃん演じる、艶やかな犬王に寄り添う。必然、ジェットコースターのような現場でした。世界最古のミュージカルと言われる「能楽」の豊かな可能性を感じられる映画になっているのではないでしょうか。
音楽:大友良英コメント
正直に書きます。湯浅監督の具体的なのか抽象的なのかさっぱりわからない無茶苦茶な注文と、素人目には何が描かれているか皆目見当がつかないスケッチ段階の動画に翻弄されまくった3年間でした。でもただ翻弄され続けただけならとっくにやめてます。絵が立ち現れ歌や音ともに動き出した時の興奮と感動をいったい何度味わったことか。気づくと自分も「犬王」の世界にすっかり没入していました。とんでもない作品です。大傑作です!
監督:湯浅政明コメント
2人の物語が多くの人に知られると嬉しい。
室町時代にロックな演奏で歌唱で舞で、自分の生き方を貫き、宿命的な奈落から駆け上がって行った2人。映画は見てるだけで胸が熱く、あがるものになるはずです。オーパーツは至る所にあったはず。我々は多くの物語を知らなすぎる。彼らが認められ、称賛されることは、どの時代をも真直に生きる者達が報われる事だ。
(C)“INU-OH” Film Partners
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