「決まりに従って地縛霊してます」「ダセェ」 地縛霊を一蹴する少女の漫画で気付く“決まり”への思い込み(1/2 ページ)
ポジティブリストとネガティブリスト、興味があれば調べてみてください。
ある場所で死んだ人間の魂が、なんらかの理由で死んだ場所から離れられなくなった怪異、地縛霊。ただしその語源はかなり怪しいようで、そもそも幽霊にそのような属性が付与されるものでしょうか。
今回ご紹介する作品には、ある場所から動けない地縛霊と生きている人間のコミュニケーションが描かれているのですが……我々が意図せずも抱きがちな「思い込みと偏見」に、真っ向から立ち向かう物語となっています。作者はさまざまなショート漫画を投稿しているnakashin(@Fill_no_bass)さんです。
月がきれいな深夜、団地の屋上に佇む少女。柵にもたれかかり、物憂げに階下を見つめる彼女の背後から、唐突に声が聞こえてきました。
少女に声を掛けてきたのは、長い髪をたくわえた生首に、本来あるはずの場所に手足の半分が浮いている、というような外見の……明らかに人ならざる「怪異」でした。いわく「私はここで自殺したもの。自殺したら地縛霊となる決まりに従い、この団地にずっと棲んでいる」と言います。
地縛霊は少女を自殺志願者だと思い込んでおり、やるならよそで死んでくれ、と続けました。ですが少女は地縛霊を前に驚きもせず、その物言いと死後のあり方を「ダセェなぁ」と一蹴します。
そういう決まりなのだから仕方ない、誰もが決まりの中で生きている(地縛霊は死後の生き方ですが)、知ったような口をきくんじゃない……トサカにきた地縛霊は矢継ぎ早に言葉を重ねます。そして「人間は空を飛べない、これが自分の言う“決まり”。悔しかったら月に触ってみろ」と、少女を挑発するのでした。
地縛霊の挑発を受けた少女は、なんのためらいもなく柵の上に立ちます。そして「いいよ、月を触ってやる。アタシができたら、あんたもできる。これは約束」と言い残し、建物から飛び降りてしまうのです。
一瞬の出来事に驚き、柵に駆け寄った地縛霊が見たのは……水面に浮かぶ少女の姿でした。実は団地のある場所は、相当な昔にダムの底へと沈んでおり、少女は水深の浅くなったそこへ泳ぎに来ただけ。建物の中に長年閉じこもっていた地縛霊は、それを知らなかったのです。
少女は手のひらに水を溜め、そこに月を映し、間接的ながらも「月に触り」ました。とんちのようなものですが、目の前で「自分の言う“決まり”」を破られた地縛霊は気付きます。彼女ができるなら、自分もできる。「自殺者は地縛霊になる、という決まりはある。だけど、どこかへ行きたくなったら、実はどこへ行ってもいいのだ」と。
そして地縛霊は、一緒に泳ごうという少女の誘いを受けて――。
作品提供:nakashin(@Fill_no_bass)さん
記事:たけしな竜美(@t23_tksn)
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