西九州新幹線の最高速度、開通後の時短効果は？　もしかして料金が高くなってしまうのでは……？：月刊乗り鉄話題（2021年8月版） 「西九州新幹線」の素朴な疑問11選（2）（2/2 ページ）

【疑問 7】料金は高くなる？

　2021年8月現在、料金やダイヤは未発表ですので試算してみました。

　在来線特急料金は2022年4月から値上げするため新料金・繁忙期で計算したところ、残念ですが「少し高く」なります。

　武雄温泉～長崎間は約67キロです。現行の九州新幹線の運賃・料金を当てはめると3600円です。2021年8月現在は肥前山口駅で特急を乗り継ぐと5020円ですから、西九州新幹線は1420円安くなります。現在の武雄温泉～長崎間は特急を2回乗り継ぐため割高で、対して新幹線はショートカットするので乗車券が安くなる計算です。

　博多～長崎間は西九州新幹線と在来線特急を乗り継ぐと6560円になります。新幹線と乗り継ぐ場合に在来線特急料金が半額になる特例を含めた試算です。2021年8月現在、博多～長崎間を「かもめ」で直通すると5790円。西九州新幹線経由は「770円高く」なります。博多～新鳥栖間を新幹線、新鳥栖～長崎間でかもめを使うルートも5910円で、西九州新幹線経由は650円高くなります。

　まとめると、博多～長崎間で、現行の乗り換えなし「特急かもめ」と西九州新幹線乗り換えを比較すると、西九州新幹線に乗ると所要時間が30分～40分短縮されて、代わりに運賃+料金は770円高くなります。なお、西九州新幹線が開業すると「直通の特急かもめを使う」選択肢はなくなります。「新幹線って必要なのかな……。高いし、乗り換えが増えるし、ちょっとしか早くならないし」という声も上がりそうです。

【疑問 8】沿線の見どころは？

　乗り鉄としては新規開業路線ができたならばぜひ乗りたい（関連記事）。でも、乗ってどうする、何をする。というわけで、西九州新幹線沿線の見どころを調べてみました。

武雄温泉駅：武雄温泉、武雄図書館

　武雄（たけお）温泉駅は、1895（明治28）年に武雄駅として開業し、1975（昭和50）年に武雄温泉駅に改名しました。駅名でもある武雄温泉は駅から徒歩10分。公衆浴場が3軒あります。「元湯」は明治9年の建築で、現存する温泉施設としては日本最古だそうです。日帰り可能な温泉宿も9軒、そのうち6軒は少人数の貸し切り利用ができます。

　カフェを併設したおしゃれな図書館として観光名所となり、蔵書管理など運営問題でも注目された「武雄図書館」も見どころです。駅から徒歩15分。陶芸が盛んで、陶芸体験を楽しめる窯元もあります。

嬉野温泉駅：嬉野温泉

　嬉野（うれしの）温泉駅は、西九州新幹線のために新設される駅です。嬉野市はかつて路面電車や軽便鉄道がありました。しかしどちらも1931年に廃止されてしまいました。嬉野温泉駅は地元にとって91年ぶりの新鉄道、新駅ということになります。駅は嬉野温泉地域の東端にあり、中心街へはバスと徒歩で10分程度。駅ができれば新幹線と接続するバスなども増えるでしょう。

　「嬉野温泉」は日本三大美肌の湯、九州でも有数の温泉街とのことです。「嬉野（うれしの）」とは楽しい地名です。由来は第14代天皇の皇后・神功皇后が戦いの帰りに立ち寄り、温泉で兵士の傷が治って「あな、うれしいの」と言ったからだそうです。

新大村駅：長崎空港、最新の交通拠点に？

　新大村駅も西九州新幹線のために新設される駅です。この付近では西九州新幹線とJR大村線が並走します。大村線にも新大村駅が新設される予定です。JR大村線竹松駅と諏訪駅の間、大村駅から2つ目という位置関係です。長崎空港にほど近いので、西九州新幹線と航空便を乗り継ぐ拠点になるかもしれません。

　「大村寿司」という押し寿司は、戦国時代に大村氏が島原の軍勢から統治を取り戻した祝いとして振る舞われました。500年の歴史を持つ名物料理だそうです。江戸時代には長崎と江戸を結んだ長崎街道の宿場として栄え、近代は陸軍・海軍の拠点として栄えました。そして今度は最新の交通拠点になるわけですね。

諫早駅：島原鉄道の起点、轟渓谷／富川渓谷、有明海の幸

　諫早（いさはや）駅は、長崎本線の諫早駅に併設されます。大村線と長崎本線が接続する駅です。乗り鉄には島原鉄道の起点としても知られています。

　諫早市は春から秋にかけて花咲くスポットが多く、夏は轟渓谷、富川渓谷など水の景色が美しいところ。冬の味覚はみかん、牡蠣、鰻。島原鉄道は有明海の島原港へ向かうローカル線で、海沿いの景色の良い路線です。かつては半島を半周して加津佐駅に達していました。バスでぐるりと半島巡りも良さそうです。

　島原港からは熊本、福岡県大牟田へフェリーが出ています。有明海を周回する旅も楽しそう。

長崎駅：路面電車、平和公園、めがね橋、「我が国鉄道発祥の地」の石碑

　終点の長崎駅。著名都市・観光地として説明不要の感はありますが、乗り鉄視点では「路面電車が楽しい」街。平和公園、原爆資料館、出島、めがね橋、大浦天主堂、グラバー園へアクセスできます。石橋駅からグラバー園に行く途中のグラバースカイロードは、日本で初めて公道に設置された「斜行エレベーター」です。

　鉄道ファンなら訪ねたい場所がもう1つ。メディカルセンター電停付近の「我が国鉄道発祥の地」の石碑です。「あれ、日本の鉄道は新橋～横浜間（1882年）が最初じゃなかったの？」と思いますよね。実はここ、江戸時代の1865年に、英国人貿易商のトーマス・グラバーが軽便鉄道の小型機関車を展示し、2両の客車をつないで試乗会を開いたところです。鉄道史に興味があるなら押さえておきたいところ。石碑しかありませんが（笑）、水辺の公園を背景に路面電車の写真を撮れます。

（続く）

　次回は、西九州新幹線開通に伴う「在来線の今後」「開業区間が中途半端……な謎」の疑問を解説します。お楽しみに。