急展開! 東京メトロの「有楽町線延伸」 江東区の悲願ついに叶う?:月刊乗り鉄話題(2021年9月版) どうなる?東京の鉄道・地下鉄新路線(1)(2/3 ページ)
どこに、いつできるの?──。実はとてもたくさんある、東京圏の鉄道・地下鉄新路線計画。2021年7月に行われた「国交省の交通政策審議会」の答申から、期待の新路線計画をひもといていきます。
なかなか進展しない8号線の延伸 2011年に訪れた「転機」
8号線の延伸は実は、2004年に事実上の建設凍結となったこともあります。この年、国と東京都などが出資した帝都高速度交通営団(営団地下鉄)が民営化され、「東京地下鉄株式会社(東京メトロ)」が発足。その経営方針として「建設中の13号線(現在の副都心線)を最後に、新路線は開業しない」と示しました。
民間会社となった東京メトロは、新線建設という莫大な投資よりも、既存路線の輸送力増大、安全設備の導入を優先したかったわけです。
しかし江東区は諦めません。国の審議会で認められた路線ですから、東京メトロ以外の会社が建設しても良いはず。江東区は国や都に働きかけるとともに、独自に実現の可能性を探る検討会を開始しました。
東京の地下鉄については、都営地下鉄と東京メトロの統合案などが検討されました。8号線延伸も江東区が働きかけを続けていました。実現への課題は「建設費用とその負担」です。そこで東京都は平成30(2018)年度予算から「東京都鉄道新線建設等準備基金」として、新線建設の費用を貯金しはじめました。
江東区も2010年から建設基金の積み立てもはじめました。上下分離式を採用し、建設と維持は江東区が保有・管理し、営業運行のみを東京メトロが担当する……という形も見えてきました。建設費用の負担がなければ東京メトロも参加してくれるだろうと期待してのことです。
転機は2011年に訪れます。東日本大震災です。国は復興財源を確保する必要がありました。歳出を減らし、国債を増額して予算を確保し、復興目的の特別債権(復興債)の発行、所得税と法人税の復興特別税を設定。そして、国が持っている日本たばこ産業と「東京メトロ株」を売却して財源を確保することにしました。売却期限は2027年度末です。
国と東京都は東京メトロの主要株主です。東京メトロの経営、地下鉄運営について、株主として発言権を持っています。国が東京メトロ株を売却すると、国の東京メトロへの影響力が小さくなります。同時に、東京都が筆頭株主となり、発言力を強めることになります。
大きく動いたのが2021年7月です。国土交通省の交通政策審議会は2027年の東京メトロ株売却期限に対応するため、「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等について」という審議を実施しました。
この答申371号で「国と都が同時に同率で株式を売却する」。ただし、「東京8号線、都心部・品川地下鉄構想」と「都心部・臨海地域地下鉄構想」の整備中は「国と東京都は東京メトロ株の過半数を保有する(国と東京都は同じ影響力を保つ)」「東京8号線と都心部・品川地下鉄構想の事業主体は東京メトロが担うべきである」、そして、「東京メトロに公的支援を実施し、新路線建設をしない方針を撤回してもらう」などが答申されました。
国と東京都は、2027年末の東京メトロ株売却期限までに新線を開業させる必要があるということになります。一歩進んだ有楽町線延伸、江東区長年の悲願が叶いそうです。
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