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シンカンセンスゴクウマイカキゴオリ、登場!? 奈良で「かき氷新幹線」食べてきた月刊乗り鉄話題(2021年10月版おまけ)(3/3 ページ)

シンカンセンコナイ奈良駅で提供しているんです。

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ナラとコオリとシンカンセン

 ところで、なぜ「奈良」で「かき氷」なのでしょうか。

 JR奈良駅はJR西日本の駅です。JR東海の駅ではありません。もちろん新幹線も停まりません。将来、奈良県にリニア中央新幹線が通ることは決まっていますから、その地ならしでしょうか。

 いえいえ。実は、JR東海の奈良キャンペーンの歴史は長いのです。始まりは何と28年前、1993年の「いま、奈良にいます。」でした。2005年から「いま、ふたたびの奈良へ。」。そして2009年に「うまし うるわし 奈良」が始まりました。2010年に奈良県が開催した「平城遷都1300年記念事業」を見据えた施策でした。

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 JRグループの「そうだ 京都、行こう。」キャンペーンを知っている人は多いと思います。JR東海は、その流れをもっと広げようと考え、独自に地域と連携して奈良キャンペーンをはじめたのです。

 東海道新幹線と言えば「働く人向け」のイメージもありますが、実は京都、奈良のほか、「あいち冷やし旅」「しずおか元気旅」などの地域と連携した観光促進キャンペーンも行っています。

 奈良に、氷の神様を祀る「氷室神社」があります。その歴史は平城京までさかのぼります。和銅3(710)年に氷の神様を祀り、氷室で氷を保存して、春から夏まで平城宮に氷を献上したそうです。その歴史を伝える献氷祭が、2021年現在も毎年5月1日に開催されます。全国から製氷業者が集まり、業績成就を祈願します。奈良と氷の縁は深いんですね。


ホテル日航奈良のかき氷調理風景、赤いボトルがエスプーマの道具

 そんな「かき氷の里」奈良にグルメかき氷ブームがやってきました。

 「イマドキのかき氷は、なぜ1000円超えが普通なのか?」によると、近年かき氷ブームの始まりは2003年頃から。2011年に発生した東日本大震災に関連する節電で、暑さを乗り切るためのかき氷が注目されました。冬にかき氷を提供する店も増え、2012年にかき氷の革命が起きます。

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 それが「エスプーマ」です。東京・祐天寺の和食店が実験的に試み、話題となって広まったとされています。

 エスプーマは、食品に亜鉛化窒素ガスを注入してプシューと出した「空気のように軽い食材の泡」です。スペインのシェフが考案した技法です。この技法と専用器具が日本に伝わると、かき氷との相性の良さとクリームの見栄えで多くのかき氷ファンを魅了しました。「SNS映え」ブームと重なって、エスプーマかき氷はグルメかき氷ブームの1分野を確立したようです。

 奈良市には多くのかき氷提供店があります。JR東海の「うまし うるわし 奈良」サイトでも「絶品かき氷をたべつくす。」という特設コーナーまで作って紹介しています。今回は、そのほとんどのお店が氷を仕入れるという製氷会社「日の出製氷」も見学しました。


うまし うるわし 奈良の「絶品かき氷をたべつくす。」コーナー

 日の出製氷の氷は、天然氷に匹敵する「透明で上質な氷」が特徴。純度が高く、硬い氷を作るため、空気で攪拌しながら、まずは24時間かけて凍らせます。製氷器の中で、水は器の壁側から内側へ凍っていきます。

 このとき、水道水として浄水するときに添加された成分は凍らずに内側に残ります。その水を抜いて、新たに水を入れて、24時間かけてまた凍らせる。もう一度中央の水を抜き、再度水を入れて24時間凍らせる。このようにじっくり丁寧に時間を掛けることで不純物のほとんどない氷柱ができます。

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日の出製氷の製氷室

 奈良市の水道水は森の豊かな布目川、白砂川から取水されているそうです。「自然流下一万メートル」というお水のブランドもあります。その水を使い、合計72時間もかけてゆっくりと凍らせた氷は透明度抜群。キューブカットされた氷はくすみ1つないクリスタルのようでした。


製氷器から取り出した氷、ほとんど透明

氷貯蔵室の様子。透明度の高い氷はすこし青みがかって見える

かき氷器に入るキューブサイズに切られた日の出製氷氷

 今回食べたホテル日航奈良のかき氷新幹線の氷も日の出製氷製です。氷室を見学中、奈良の有名和菓子店「萬御菓子誂處 樫舎(かしや)」さんも氷を仕入れに来ていました。「さらにひと手間加えて」、美しくおいしいかき氷を提供するそうです。緊急事態宣言が解除され、東京など遠方からも予約が多く入るようになりました。

 ホテル日航奈良にも、「かき氷新幹線」を求めてかき氷ファンから、鉄道好き家族の皆さんも多くいらっしゃるとのことです。提供は2021年11月30日まで。新幹線ファン、かき氷ファンは1度は食べておきたい味ですよ。


「かき氷新幹線」提供は2021年11月30日まで

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)

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