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「グッバイ、ドン・グリーズ!」レビュー 「よりもい」ファンの期待に応えた“疎外感”に向き合う傑作アニメ映画(1/3 ページ)

和製「スタンド・バイ・ミー」であり、その先の飛躍もあった。

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 テレビアニメ「宇宙よりも遠い場所」(以下、「よりもい」)のいしづかあつこ監督の新作アニメ映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」が2月18日から公開されている。

映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』 2022年2月18日(金)全国ロードショー 配給:KADOKAWA (C) Goodbye,DonGlees Partners

 いしづか監督の前作「よりもい」は国内外から稀に見る高評価を得ており、第22回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品に選ばれ、ニューヨーク・タイムズ紙において「2018年の最も優れたテレビ番組」の海外番組部門に選出、「bilibili moe 2018 アニメーションアート賞」の日本アニメーション部門において最優秀ドラマ賞と最優秀シリアル賞に輝いている。

「宇宙よりも遠い場所」PV

 その「よりもい」に引き続き、今回の「グッバイ、ドン・グリーズ!」でもキャラクターデザインを吉松孝博、制作をマッドハウスが手掛けている。結論を申し上げれば、今作は「よりもい」ファンの期待に応えているのはもちろん、それでいて予備知識ゼロでも楽しめる、いしづか監督(今回は脚本も兼任)らしい優しさにあふれた素晴らしい作品だった。

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 劇中のメッセージを鑑みれば若い人にこそ見てほしいと心から願えたし、大人が見ても劇中の少年たちに「あの頃の自分」を思い出す感動があるはずだ。さらなる魅力を紹介していこう。

「グッバイ、ドン・グリーズ!」本予告ロングver.

「スタンド・バイ・ミー」な冒険へ

 あらすじはこうだ。高校1年生のロウマと、その親友のトトのふたりだけだったチーム「ドン・グリーズ」に、新たにドロップという少年が加わった。その後、期せずして山火事の犯人に仕立て上げられたロウマたちは、無実の証拠となる映像が残されてるかもしれない、遠く離れた場所へ飛ばされたドローンを探しに冒険へと旅立つ。

(C) Goodbye,DonGlees Partners

 言ってしまえば、この物語は1986年の映画「スタンド・バイ・ミー」に似ている。そちらが死体を探しに行くのに対して、こちらはドローンを追い求めて旅に出る。その先で少年たちはさまざまなハプニングに遭遇するが、悩みを打ち明けたり、はたまたケンカを経て分かり合うこともある。まずは「ジュブナイル冒険もの」として、大いに楽しめるだろう。

 それでいて、「スタンド・バイ・ミー」の主人公たちが12歳だったのに対し、この「グッバイ、ドン・グリーズ!」では高校1年生という、子どもと大人の境界線のような年齢に設定している。そこには当然「将来の悩み」もあるし、いい年をして子どもっぽいチームにこだわり続けていることや、LINE(のようなSNS)グループでのイジメも含む周りからの疎外感など、簡単には割り切れない、年相応の複雑な感情が見て取れる。

想像もつかない「飛躍」

 こうした普遍的な悩みを持ったまま旅立つ冒険は、やがて「スタンド・バイ・ミー」にもなかった、想像もつかない「飛躍」へとつながっていく。初めは自分たちの無実を証明するため、それだけのはずだった冒険が、やがてかけがえのない「宝物」へと変わっていくのだ。

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(C) Goodbye,DonGlees Partners

 描かれる冒険が誰もが経験しないようなものであっても、彼らの悩みそのものは誰もが通りうる普遍的なものであり、さらにその先の飛躍には福音となる尊いメッセージが提示されるので、涙が溢れんばかりの感動が待ち受けていた。

 そして、おとなしく思える主人公を花江夏樹、マジメであるが故の悩みを持つ親友を梶裕貴、中性的で幼く見える少年を村瀬歩と、日本トップの声優が、三者三様の魅力を持つ少年を熱演しているのも見どころだ。この3人の声優のファンにとってはずっと耳が幸せなことは間違いないし、文句のつけようのない演技がキャラクターにハマっているからこそ、それぞれの複雑な内面が伝わってくる。「よりもい」に続く出演となる、存在感のある少女を演じた花澤香菜もまた素晴らしい。

(C) Goodbye,DonGlees Partners

 さらには、スピード感のあるアクションも展開し、美麗で荘厳な背景描写もあって、「スクリーン映え」するアニメとしてのクオリティーも存分にある。劇場で堪能する意義も大きい、オリジナルのアニメ映画が誕生したことそれ自体がうれしくなる。

「よりもい」に通ずる精神性

 いしづか監督の「よりもい」は、女子高生たちが南極を目指す、周りからは不可能と言われる冒険に向かう物語だった。しかし、目標設定がとっぴに思えるものでありながら、少女4人それぞれが個性的かつ、描かれている悩みが身近なものであるからこそ、見た人各自が「自分に近いキャラクター」に大いに感情移入できるつくりになっていた。

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