この自己紹介はアバンギャルドすぎる 投げ込みチラシやレシートで己を語る京都芸術大学の卒業制作が秀逸(1/2 ページ)
レシートや駄菓子、バニラのトラックなど、日常的に目にするデザインのパスティーシュ。
健康食品か何かの投げ込みチラシかな? と思ったら、文面は「トイレットペーパーはシングルをいっぱい使う」「やっかいな親知らずが出てきて残念」といった脈絡のないメッセージ――。身近なデザインに自己紹介を落とし込んだ、京都芸術大学の卒業展2021年度学長賞受賞作品が注目を集めています。
作者は情報デザイン学科の長澤花咲(ながさわかえ/Instagram)さん。「超・履歴書」と名付けた作品に、レシートや駄菓子のパッケージなど、日常的によく見るデザインの体裁で、誕生日などの基礎情報や過去の経験、嗜好といった自己を構成する要素を書き連ねています。
例えば、文庫本の売上スリップを模倣した作品の内容は、「初めて会った芸能人はスキー場のイベントに来ていた大友康平」「うそみたいな裏ワザを信じて失敗しがち」「靴下に1500円は高いと思う」など。見慣れたデザインから来る先入観を大きく裏切り、ユーモラスな文章で鑑賞者を引き込んできます。
一連の作品は来場者のツイートがきっかけで広く拡散。「“安っぽさ”の再現が巧み」「視線誘導が緻密ですごく、“情報デザイン”のなんたるかを見た」「共感できる内容もあってついつい読み込んでしまう」「デザインフォーマットが与える“印象”の強さに気付かされた」など、大きな反響を呼びました。
長澤さんは受賞に際し、「私たちの日常にしれっと存在する庶民的なデザイン。コンセプトやおしゃれとは距離を置きながら生活になじんでいるこれらのデザインに、別の価値観の魅力とシンパシーを感じます」とコメント。「ポケットティッシュの販促ラベルに前衛やシュールを感じる不思議が、なぜか自分に対する好奇心を止めたくはないという揺るがない気持ちを湧かせます。アヴァンギャルドな視点で、自分の日常や世の中の普通を変容させたい。そんなことを思いながら投影し続けたセルフポートレートです」と、作品にかける思いを語っています。
画像提供:qp(@akarusa)さん協力:長澤花咲(Instagram)さん
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