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「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」レビュー 国際情勢と奇しくもシンクロした、大切なメッセージ(1/3 ページ)

スネ夫が史上最高に愛おしかった。

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 理想的なリメイクかつ、今の世に必要な作品だ。公開中の「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」は、心からそう思わせてくれた。

 作品としてのクオリティーが高いだけでなく、Twitterではロシアによるウクライナ侵攻に通ずる、タイムリーな内容だと話題になっている。実際に見ればそれも納得、今見るからこそ、さまざまな思考を巡らせられる内容となっていたのだ。

 進化した映像面での魅力も大きい。特に、序盤のジオラマによる特撮映画を撮影するシーンは、多数のVFXや特殊効果を手掛ける映像制作プロダクション「白組」が実際にミニチュアを作り、2Dアニメの質感になじむように加工した上で合成する手順を踏んでいるため、とても臨場感のある映像になっている。

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 加えて「音響」も優れており、戦闘シーンの迫力はもちろん、小人の宇宙人から見たのび太たちの巨大さが、音の演出からも伝わるようになっている。映画ドラえもん史上初となる「ドルビーアトモス版」の上映もあるので、ぜひより良い環境で楽しんでほしい。

「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」新予告

※以下、決定的なネタバレは避けたつもりだが、一部旧作(原作マンガおよび1985年の映画版)との違いや、作品のメッセージには触れている。予備知識なく見たい方は、先に劇場に足を運んでほしい。

ウクライナ侵攻の今を想起させる理由

 「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」は当初の公開予定日から丸1年の延期を経て、3月4日に公開された。劇中のピリカ星では、独裁者が市民の暮らしを脅かし、街では戦車が走り、常に監視の目がある光景が日常のものとなっている。

 現実では2月24日より、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。市民は空爆におびえ、ロシア国内では反戦を訴えた小学生がロシア警察に拘束されるなど、「これが本当に今の世に起こることなのか」とさえ思うニュースが連日報じられている。

 作中では国内での軍隊と自由同盟の内戦が描かれるため、厳密には現実のウクライナ侵攻という国をまたいだ戦争とは異なるのだが、そうした画や設定から、今の世界情勢を強く連想せざるを得ないのだ。

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 そして、メインとなるのは「別の国(星)を救うために戦いに向かう」という物語だ。先日、ロシア軍と戦うためにウクライナに向かう外国人義勇兵に、2万人以上が志願したとのニュースもあった。これ自体に賛否両論もあるが、「困難に陥っている他の国や人のために何かをしたい」という人々の尊い思いそのものは、創作と現実で一致したかのようにも見えた。

 さらに余談だが、少年大統領のパピが首につけるペンダントの色が、ウクライナ国旗と同じ青と黄色のカラーリングだという点も話題になっている。これも、おそらく偶然であろう。

 旧作版が世に出た1985年当時も、ソ連によるアフガン侵攻の最中だった。藤子・F・不二雄がその情勢を作品に反映したかどうかは定かではないが、どちらも戦争においてタイムリーな内容となった点に、運命的なものを感じてしまう。

「まだ子どもなんだ」と思わせる描写

 旧作からのアレンジはさまざまなものがある。中でも、旧作では中盤からのび太たちとずっと離れ離れになるパピが、今回はロケットでピリカ星に向かう道中でも一緒にいることは大きい。

パピとしずかちゃん(画像は新予告より)

 そこで、おしゃべりな犬のロコロコは、パピがいかに優れた人物であるかを語るため、ジャイアンから「カンペキ超人だ」とまで評されるのだが、最後にロコロコが「でも、みなさんと変わらない、年頃の男の子です」とつぶやき、みんなが一瞬で静まり返る場面がある。さらに部屋にこもったスネ夫が自分の情けなさを卑下するのに対して、パピは「同じです。ぼくだって本当は怖い」と正直な気持ちを伝えるのだ。

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