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順に並べて分かった意外な事実 新型車両「315系」デビュー記念! まとめてみましたJR東海「20年ぶりの新車」と仲間たち月刊乗り鉄話題(2022年3月版)(4/5 ページ)

意外と“へぇ~!” 2022年春のダイヤ改正はちょっと寂しい話題が多かったので……「JR東海の現行車両カタログ」をどうぞ。

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N700系電車「スモールA」(2007年~2012年製造、2012年~2016年改造) 新幹線N700系をN700A相当に改造した小さいAロゴの「スモールA」


N700系「スモールA」

 新幹線N700系電車は、新幹線700系電車に次ぐ次世代標準車両として製造されました。山陽新幹線内で時速300キロ運転を達成しました。

 東海道新幹線でも曲線区間の速度を向上させました。最高速度の時速270キロは700系と同じです。しかし、車体傾斜システムを搭載して、最高時速270キロで走行できる区間を増やしたことで、東京~新大阪間の所要時間短縮に成功しました。

 後にN700系電車「通称:スモールA」として走行性能をN700A系(通称:ラージA)と同様にするための改造を受け、東海道新幹線内の最高速度は時速285キロに引き上げられました。改造後の車両は車体のロゴマーク「N700」に小さなAを追加したことで「スモールA」と呼ばれています。

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キハ25形(2010年~2016年製造) 313系電車にそっくりな非電化区間の標準的な気動車


キハ25形。313系とソックリ(写真提供:JR東海)

 キハ25形は313系電車にそっくりな気動車です。313系電車が標準的な車両だったように、キハ25形は非電化区間の標準的な車両として開発されました。2両編成を33本、合計66両が製造され、気動車の最大勢力となっています。最高速度は時速110キロに抑えられ、平時は最高時速95キロで走ります。

 キハ25形は、まず武豊線に配置されました。武豊線のキハ75形を置き換えるためです。2013年に「第62回式年遷宮」を控えており、快速「みえ」の輸送力を増強する必要がありました。そこで武豊線で運用されていたキハ75形を「みえ」に使いたかったわけです。その後、キハ25形は非電化区間の主力車両として、国鉄時代の車両やキハ11形を置き換えていきました。

N700A電車「通称:ラージA」(2012年~2020年製造) N700系の改良版、大きなAロゴの「ラージA」


N700A電車「ラージA」。先頭車の青い帯が運転席の下まで届いている。列車がやってきたときにラージAかスモールAかをすぐ見分けやすいポイント

 新幹線N700A電車は、N700系電車の改良版として新造されました。走行機能の改良点はブレーキ制動距離の短縮、車体傾斜システムの改良、台車振動検知システム、定速走行装置の採用などです。客室の改良点は、構造変更による静粛性を向上、ヘッドレストの改良、トイレと洗面室に人感センサー式LEDを採用し省エネ化、乗降扉の上に開閉予告灯を設置するなどです。2014年からは温水洗浄付きトイレが採用されました。

 車体のロゴは大きな「A」があしらわれており、「ラージA」と呼ばれています。先頭車の形状は「エアロ・ダブルウィング」で同じです。ただし、「鼻」の部分にかかる青い帯については「ラージA」のほうが少し長く、運転席の窓の下まで達しています。

 2015年からはパンタグラフ監視機能、台車の振動検知システムが搭載されました。これらの新機能は初期の「ラージA」にも追加改造されています。

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 「スモールA」と「ラージA」の走行性能はほぼ同じです。利用者目線では「ラージA」の方が静粛性に優れ、インテリアがちょっと違う、という感じです。

HC85系ハイブリッド車(2017年~製造) エンジンで発電し、モーターで動くハイブリッドな新世代車


試運転中のHC85系(写真提供:JR東海)

 HC85系ハイブリッド車は2017年に量産先行車が製造されました。2022年現在は試運転中のハイブリッド式車両。ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモーターを回して走ります。2022年7月1日から特急「ひだ」で営業運転を開始する予定です。

 形式名の「HC」は「ハイブリッドカー(Hybrid Car)」の略、85はキハ85系の後継という意味です。キハ85系はJR東海が発足間もなく作った車両だけに、製造から30年以上も経過しました。その置き換え用として、「ひだ」「南紀」に投入するというわけですね。

 今後、2023年度までに64両が導入予定です。2022年現在のキハ85系は80両ですから、2年間でほとんどの車両が入れ替わります。

N700S電車(2018年~製造) 最高(Supreme)の「S」を冠した最新型新幹線

 新幹線N700S電車は、東海道新幹線の新世代車両として開発された電車です。運用開始は2020年7月から(関連記事)

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N700S電車。先頭車の帯は独立して運転席の前まで伸びている

 形式名に「N700」が付いているため「N700A」のような改良型と誤解されそうです。しかし「N700S」は新形式です。それならば800に……とも思いますが、800系は九州新幹線ですね。その次の900も試験車に使われています。

 結局、東海道新幹線は「N700」のシリーズ名が定着しているため「N700S」となったようです。今後の新形式はどうなるでしょう。アルファベットは26文字。残りは24文字。7年ごとに新型車を出すとしてら168年掛かります。今から心配しなくても良いかな(笑)。

 N700S電車は新形式として、外観も性能も居住性も一新されています。先頭車の形状は「デュアルスプリームウィング形」になりました。鼻筋がシュッと通り、LEDライト部分から後方に向かってエッジを立てたデザインです。青帯も運転席窓の前部まで達しました。プラットホームに列車が来たときに分かりやすいですね。車体ロゴは「S」を強調した金色になりました。

 室内インテリアもLED間接照明を使うなど刷新しました。座席はグリーン車、普通車とも、背もたれと座面が連動して、より深く倒れ、くつろぎやすくなりました。特にグリーン車の深度は大きくなりました。もし、背もたれを最大限に倒したまま起き上がろうとすれば、あらかじめ腹筋を鍛えておく必要があるくらいに深い。電動調整式ですから、立ち上がる前に背もたれを戻すのが賢明です。グリーン車など一部の車両には「フルアクティブ制振制御装置」を採用し、揺れを抑えています。

 性能面ではモーターなど走行機器の小型軽量化と省エネルギー化、リサイクルアルミ合金の採用など環境面に配慮しました。リチウムリオンバッテリーを搭載した自走システムを搭載し、災害など停電時に安全な場所まで移動できます。

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 このほか、床下走行機器の配置見直しによって最短で6両編成の運用も可能になりました。長い東海道新幹線だけではなく、ほかの新幹線や海外の高速鉄道に採用しやすくなります。2022年9月23日に開業する西九州新幹線(関連記事)はN700S電車の6両編成が採用されました。また、リニア中央新幹線が開業したら、東海道新幹線も短縮編成を採用して、柔軟な運用ができるかもしれません。

315系電車(2021年~製造) 「JR東海の新しい顔」を担う新世代の主力通勤型電車

 315系電車は、JR東海の新しい顔となる次世代の主力通勤形電車です。先頭車運転席付近も含めて全てステンレス製になり、直線と平面を基調とした姿になりました。


JR東海「315系電車」

 顔は311系、313系のFRP製のそれと比べると、何となく平べったい印象です。ただしデザインは「JR東海カラー」を継承して、運転席窓回りを白、ヘッドライト付近にオレンジの帯が3本入っています。この帯は側面にも採用されて、窓回りは太く、乗降扉上部にも細帯が入ります。ホームドアからの視認性を考慮したデザインです。

 運転席窓は平面タイプが3枚で、黒い枠で囲み一体的に見えます。丸くなったヘッドライトを目、連結器を口に見立てると、なんとなく、映画「トランスフォーマー」のキャラクター「バンブルビー」を連想しませんか? かわいい顔ですね。


315系電車。前面の下半分が顔に見えませんか……?

 外観と同様に走行装置も新しくなりました。台車はフレームを一体プレスとして溶接部を削減し、強度と保守性を向上しました。車軸を支持する部分の上下にコイルバネ、左右と前後に積層ゴムを設置し、揺れを抑えて乗り心地を向上しています。台車や車体振動の状態監視システムを搭載し、異常時の迅速な対応を促すとのことです。

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 車内はJR東海の車両で始めて案内表示画面を搭載しました。車内防犯カメラも製造時から取り付けています。最高速度は時速130キロ。313系一般車より向上しています。走行用バッテリーも搭載しており、停電時も安全な場所まで自走できます。ただし、バッテリー搭載は2022年夏以降になります。コロナ禍に影響した世界的な半導体、バッテリー不足が影響しているかもしれません。

 JR東海は315系を5年間で352両を投入します。内訳は8両編成が23本、4両編成が42本。2022年3月までに7編成、2023年に8編成、2024年に20編成、2025年に16編成、2026年に14編成です。これで211系、213系、313系と交代させる計画です。315系を幹線系統に、313系を支線系統にという配置になりそうですね。


床下にバッテリーを搭載する予定

JR東海としては初の車内ディスプレイを設置

導入時系列で並べて分かった、JR東海の車両デザイン・導入傾向・技術進化の系譜

 導入した時系列で並べてみると、JR東海の在来線車両と新幹線車両でデザインの系譜が分かりやすくなったと思います。在来線と新幹線は分けても良かったかもしれませんが、新技術の導入傾向から全体的な進化の様子を読み取れます。

 あらためて並べると、N700SよりもHC85系のほうが先に製造されていたのはちょっと意外な結果でした。新技術を導入したら、慎重に試運転をするんだな、なんて想像するのもまた楽しいものです。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)

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