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nasneの神機能「ニコニコ実況連携」はなぜ復活できたのか バッファロー・SIE・ドワンゴを動かしたのは、終了を惜しむユーザーの“怨嗟の声”だった(1/2 ページ)

一度終わったサービスがなぜ復活できたのか、プロジェクトに関わった3社に取材しました。

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 バッファローのネットワークレコーダー「nasne」で、多くのユーザーから復活が待ち望まれていた「ニコニコ実況連携機能」がとうとう戻ってきます。

 ニコニコ実況連携とは、テレビ番組を不特定多数のユーザーと実況するサービス「ニコニコ実況」と、nasneのテレビ視聴アプリ「torne」を連携させたサービス。簡単に言ってしまうと「ニコニコ動画のようなコメントを流しながらテレビ番組を見られる」という、他に類を見ないユニークなサービス……だったのですが、Adobe Flashの終了に伴ってニコニコ実況がリニューアルした際、惜しまれつつも対応を終了してしまっていました。

 しかし2022年3月24日、バッファローはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)からのnasne事業継承1周年を機に、ニコニコ実況連携機能を復活させると告知(関連記事)。4月中に予定しているアップデートで、PS5を皮切りに、PS4やiOS、Androidなど各プラットフォームに順次対応させていくと発表しました(※バッファロー版nasneだけでなく、SIE版nasneにも対応)。

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ニコニコ実況連携のイメージ

 編集部では、今回のニコニコ実況連携の復活に関わった、バッファローSIEドワンゴの担当者にインタビューを行いました。一度は終了してしまった(しかも技術的な理由で)サービスを一体どのようにして復活させたのか、そこにはサービス終了を惜しむユーザーの圧倒的な熱量と、その思いに応えたいという3社の情熱が背景にありました。

左からバッファローの安藤史朗氏、ドワンゴの高橋薫氏、SIEの柳瀬和大氏

 

終了後、ユーザーから寄せられた“怨嗟の声”

―― 早速ですが、ニコニコ実況連携復活の話はどこから最初に出たのですか?

ドワンゴ 高橋薫氏(以下:高橋):復活させたい思いは、関係者全員が持っていたんだと思います。ニコニコ実況は2020年12月16日、Adobe Flashのサポート終了に伴って新システムに移行しました。その際、旧システムのAPIは全て使えなくなったので、ニコニコ実況連携機能も終了する運びになったんです。

 ところがその後、ユーザーから連携機能を惜しむ声……というより、言葉を選ばずに表現するなら“怨嗟の声”とでも言うようなメッセージが多く寄せられまして……。その声の勢いや熱量を見て、連携機能はユーザーにとって大きなものだったんだなとあらためて思い知らされました。

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SIE 柳瀬和大氏(以下:柳瀬):SIEでもドワンゴさんと同じような声を多くいただきました。連携機能の終了は、nasneの販売事業を継承する前にバッファローさんにお話ししていたんです。そしたら食い気味で「なんとかなりませんか!?」といわれまして(笑)。

バッファロー 安藤史朗氏(以下:安藤):連携機能の終了は、SIEさんからnasneの販売事業を継承した後もしこりとしてずっと残っていました。この1周年というタイミングで連携機能の復活をユーザーに報告できてホッとしているというのがのが正直なところです。

 弊社に寄せられる要望の中では、PS5版torneのリリースを求めるものが多かったのですが(※2021年11月24日に配信済み)、やはり連携機能を求める声は熱量がすごかったですね。

ドワンゴ高橋:こちらでも、ニコニコ実況が新システムに移行してから1カ月後の2021年1月、SIEさん側に届いたユーザーの反応も気になったので連絡してみたところ、「ニコニコ実況連携機能、復活させられませんかね?」みたいな話の流れになりまして。それで2021年2月に本格的な話し合いが行われることになりました。

ドワンゴ ニコニコ事業本部 ニコニコニュース担当部長 高橋薫氏

柳瀬:そこで「新しくなったニコニコ実況のAPIをtorneに実装するにはどうしたらいいか」という具体的な話をドワンゴさんの技術陣とお話ししたんです。このときからもう復活させる前提でしたね。

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高橋:最初から「あ、これやるんだな」という雰囲気の中で全てが進んでいくという不思議な状況でした(笑)。

 

―― つまりバッファロー版nasneが発売される前から、連携機能の復活は各社社内から強い要望があったと。

柳瀬:そうですね。連携機能が終了したとき、弊社の社員からもかなり怒られました。僕のせいじゃないんだけどな……(苦笑)。

高橋:すみません。どちらかというとドワンゴのせいですね(笑)。

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過去のコメント資産もいつか見られるようにしたい

―― 実際に連携機能を復活させるまではどんな流れだったんですか?

高橋:新システム移行前のニコニコ実況のシステムって、ニコニコのサービスの中でもとびっきり古くて、Adobe Flashのサポートが終了するとともにほぼ使えない状態になってました。移行後の「ニコニコ実況」は、サービス名と形は残っているのですが、実はシステムの中身は「ニコニコ生放送」のものなんです。

 そこでまずは、ニコニコ生放送のシステムで以前の連携機能を復活させるために、torneと連携するためのAPIなどをゼロから開発しなければなりませんでした。

柳瀬:ドワンゴさんに無理を言ったポイントでもあるんですが、「以前の連携機能の使い勝手を、そのまま復活させたい」というのがSIEの希望でした。仕様面で変わっているところはあるのですが、使い勝手やコメントの流れ方、連携機能を起動するまでの流れは当時のままです。

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 ただ、以前の連携機能が終了する前に録画した番組のコメントは、残念ながら表示されません。そこが大きな違いになっています。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント プラットフォームプランニング&マネジメント部門 グローバル商品企画部 1課 チーフ 柳瀬和大氏

―― 当時の盛り上がりが分かる貴重な記録でもあったのでそこは残念ですね……。今後のアップデートで復活したりする予定はないのでしょうか?

高橋:実は、新システム移行前のコメントログデータは全て残してあります。それなりに手間は掛かりますが、過去のコメントの表示もいずれ実装できたらいいなとは思っています。

 以前ニコニコニュースで、東日本大震災が起きた2011年3月11日にニコニコ実況やニコニコ動画で流れていたコメントを全部引っ張り出して、それだけを真っ黒の画面に流し続けるという企画を行ったことがあったんです。そのとき、これらのコメントって「人々の感情のデータであり資産なんだな」と実感しました。この出来事は、ニコニコ実況のコメントログデータを残すことにもつながっているんです。ユーザーの新規開拓にはつながらないかもしれませんが、僕個人としても何とか復活できればいいなと思っています。

柳瀬:現時点ではお約束することはできないのですけども、そういった要望が強いことは重々理解しているので、可能性は探っていきたいですね。

―― そうすると古い録画データでも、消さずに残しておけばいつかはコメント付きでまた見られるようになるかもしれませんね。「お引越しダビング」機能(※)も追加されましたし。

古いnasneやHDDの録画データを新しいnasneにダビングできる機能で、2021年11月に実装。従来のnasneではHDDの寿命でデータが消えてしまうのを避けられなかったが、今後はHDDの寿命が来ても新しいnasneやHDDにデータを移せるようになった(なお“引っ越し先”はバッファロー製nasne限定で、“引っ越し元”はSIE版nasneでもどちらでもOK)

安藤:そうですね。もしこれが実現できれば、バッファローが販売するnasneにダビングしても、以前の連携機能が終了する前に録画した番組のコメントが見られると思うので、SIEさん、ドワンゴさん、ぜひよろしくお願いいたします!

柳瀬高橋:(笑)。

 

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