過熱するポーカーブーム、アミューズメント店での高額プライズ提供、オンラインカジノ利用者急増に問題は? 弁護士と法務省を取材(2/4 ページ)
大会のチケットを巡る不正持ち掛けなども問題視されています。
サテライトと高額プライズの関係性、違法性はないのか?
サテライトは大体2000円~1万円程とされることがほとんどですが、プライズとなる上位大会の出場権は5000円~5万円程度の価値を持っているといわれており、プレイヤーは結果的に高額なプライズを得るためにサテライトに出続けることが常態化しています。
というのも、上位大会で結果を残すことができればタイトルの獲得はもちろんのこと、数十万円~数百万円分の副賞(多くの場合は海外渡航費援助等金額分の選手契約という形)が贈られるためです。
こうした背景から個人オーナーが運営するサテライト実施店舗に対して不正を持ち掛けるプレイヤーの存在も明らかになってきました。
2022年には「JAPAN POKER FESTIVAL」のメインイベントチケットを巡って、「1枚8500円で14人分の本選チケットを売ってほしい(サテライトを通過したということにしてほしい)」と持ち掛ける事案が発生。個人オーナー側は不正行為はできないと断ったものの、持ち掛けた人物がアミューズメント大手のJCIグループで店長を務める人物だったため、この問題が表ざたになると大きな波紋が広がりました。
また一部のユーザーらからは「同等の不正行為が常態化している店もある」との指摘も寄せられていました。
こうしたサテライトと高額プライズの関係性について、甲南大学名誉教授の園田寿弁護士は「実質的に考えると賭け事と変わらない」と話します。
――ポーカーを取り巻く法律について教えてください。
園田名誉教授:まず1対1で金銭を賭けてポーカーをするという場合、これは刑法185条「賭博罪」で禁止されています。
次に入場料および場所代という形で料金を取ってトーナメントを開催し、入賞者にプライズと呼ばれる景品を出すという場合。これはいわゆる刑法187条「富くじ罪」に関わってきます。
富くじ行為とはいわゆる宝くじのことなのですが、一定の番号札や券を販売し、その後偶発的な方法で不平等に利益を分配することです。類似行為として何かを買ったときにおまけで付いてくる「福引」が想起されますが、福引は券を直接購入するわけではないので富くじ行為ではありません。
またこれらの法律では例外として「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない」と定められています。
――一時の娯楽に供するものというの具体的にどれぐらいのものなのでしょうか。
園田名誉教授:その場で消費される些細な物を指しますが、具体的には飲み物とか食べ物とかのことです。金額についての具体的な定めはありませんが、おおよそ1000円~2000円くらいの範囲でしょう。
――店舗で開催するトーナメントにおいて上位大会のチケット等、数千円~数万円のものをプライズに設定した場合はどうなりますか。
園田名誉教授:まず法律では原則「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」と定められています。ただ実情としてある一定のプライズが提供されているということを元に考えるとすれば、はっきりとした線引きは難しいのですが、高額なものが得られると射幸性をあおっていると言われかねません。そのような高額プライズの提供が常態化しているとすれば、現行法においては摘発せざるを得ないと思います。
――筆者も以前、無料で出場できるサテライトでWPT JAPANという大会の本選出場チケットを手にし、本選に出場したことがあります。その際入賞し、海外渡航費等の援助として1180ドル分の選手契約のオファーを受けたのですが、この場合はどうなるのでしょうか(関連記事)。
園田名誉教授:Kikkaさんはまず無料の大会に出場して、結果的に入賞したということですが、自分のお金を払って予選に出たわけではありませんのでそもそも賭博にならず、富くじ罪にも触れません。なので、無料の予選に出て本選の権利を得るというのは全く問題のないことです。
――最近オープンしたお店では、リングゲームである程度の成績を残した人に対して、そのお店が提携するオンラインポーカーサイトの日本法人からオンラインポーカーサイトで使用できる換金性のないゲームマネーをスポンサードしているそうです。これは問題ないのでしょうか。
園田名誉教授:換金性はないとはいえ、オンラインポーカーサイトで使用できる現金に代わるものを渡しているとすれば、「一時の娯楽に供するもの」の範囲を超えていますから、現行法上は違法の可能性があると言わざるを得ないかと思います。
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