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ホラー好きでなくても見てくれ~! 「フェイクドキュメンタリー『Q』」が完結してしまって「Qロス」に陥っているので全力でオススメします(1/2 ページ)

答えのない考察で盛り上がる、不思議な“呪いのビデオ”の魅力。

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 びっくり系のホラーはもういいよ……初めて「くねくね」に触れたときのような「不思議で怖いホラー」が見たいの!

 ――と思っているそこのあなた、良い呪いのビデオがあるんです。

 「フェイクドキュメンタリー『Q』」は、YouTubeで見ることができるショートホラー作品。2021年8月に最初の動画が投稿され、それから半年間で全12本の動画が公開されたが、つい先日完結してしまい筆者はすっかり「Qロス」に陥っている。早く続編を見せてくれ~!

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ライター:のす

エルデの王。好きなゲームは「OneShot」と「魔女と百騎兵」。写真は自宅の動くモップ。

Twitter:@nosunosu

 

「Q」とは何なのか?

 「Q」はいわゆるフェイクドキュメンタリー、その名の通りドキュメンタリー風の実写作品を指す作品スタイルを取っている(モキュメンタリーともいう)。代表的な作品としては、白石晃士監督の「カルト」や、フジテレビ系で放送された「放送禁止」あたりが有名だろう。

 「Q」の監修を務める皆口大地氏は、登録者77万人のホラーYouTubeチャンネル「ゾゾゾ」YouTube)の発起人でもある。全国各地の廃墟や心霊スポットを、物理的に強そうなメンツがガチビビりしながら奥へと進んでいくという内容で人気なのだが、カメラや編集までほとんどを皆口氏が行っており、ゾゾゾで培った恐怖へのセンスがQでもいかんなく発揮されている。

 「Q」の大きな魅力はいたってシンプル。「怖い」ことだ。ホラージャンルの作品は演技、演出、CG、ストーリー……どれが欠けていてもチープに感じてしまって、怖さよりも笑いが先行してしまうなんてことがよくあるが、これは「現実感のなさ」が理由だと思っている。「呪い」でも「たたり」でも、本当にあるんじゃないかと思うからこそ怖いのであって、チープな映像ではそれが感じられない。

 「Q」は怖い。俳優のどう見ても自然体の演技が、実際に現実をくりぬかれて撮られたとしか思えないし、ただの家や中古ビデオショップ、留守電など身近な舞台が、この怪異群と自分が隣り合わせで存在していることを演出してくれる。派手な演出や複線回収がないからこそ、ホラー好き故にホラー耐性ができている自分には怖く、新鮮だった。

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 全12話はオムニバス形式で描かれる。昭和の家庭用ビデオ、30年前の留守番電話、ごく最近の街頭インタビュー……一見関連のなさそうな12の怪異談が、各5分~15分程度で楽しめる。さまざまな媒体を通じて撮影された映像は、時間軸さえつかみどころがなく、どれもがフェイクドキュメンタリーという作品スタイルを生かした設定ばかりだ。

 例えば普通のホラーなら「神聖な鏡を割ってしまったことで、怪異に苦しむようになった」という文脈を伴って説明されるところが、フェイクドキュメンタリーでは「怪異に苦しむようになったんですよね……(怪異の映像が流れる)」という描写にとどまる。なぜなら、怪異は今も起きる「現象」だが、鏡を割った行為は「記憶」なので描写することができないという、ドキュメンタリー風ならではの説明不足があるからだ。

 一般的なホラー映画なら「鏡を修復すれば……」となる展開でも、フェイクドキュメンタリーでは視聴者に「なぜ」が説明されないので「不気味ですねぇ……」で終わってしまい解決の糸口すら示されない。オチがあるのかどうかも分からない、ただただ不気味で理不尽な映像であるというのが、フェイクドキュメンタリーホラーの大きな魅力であり、人を選ぶところだろう。

 そんなわけで「Q」のストーリーも「なぜ」までは説明されないので、毎回「これで終わり!?」となんとも気持ちの悪いモヤモヤを抱えたまま、その日を過ごすことになってしまう(ちなみに公開日は土曜日の24時なので、リアタイすると嫌な夢を見てしまう最高の時間帯だ)。

 

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コメントでつながっていく恐怖

 そして「Q」の一番面白い瞬間。それは動画のコメント欄を見ているときだ。

「あれ…この声、4話の留守電の声じゃ…」「このおじいさんって、1話で遺影に映ってた人では?」

 時間軸も場所も話もバラバラな、関連のなさそうな12話のオムニバスが、コメント欄でつながっていく。不思議が怖さに変わって何倍にも膨れ上がっていくような「考察」がとても面白い。

 自分も最近はいくつかの気付きがあったので、コメントを投稿して楽しんでいるが、すぐにイイネがついて、コメントのツリーで「ということはこれもつながっていそう」「いやいや、それは関係ないでしょ」と議論が行われたりと、2ちゃんねる00年代の「洒落怖」シーン(※編注:2ちゃんねるのオカルト板に投稿された「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」スレッド)のような、リアルタイムで参加する楽しさがある。

 こうした考察は全12話が公開された今でも盛んに行われており、新たな気付きからまた怖い妄想が繰り広げられたりしているので、今から視聴する方も、気付いたことがあったらコメントして盛り上がりに参加してしてくれたらうれしい限りである。

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 実はフェイクドキュメンタリーというジャンルでは、「物語の回答が提示されない」というのは異色である。

 フェイクドキュメンタリーの名作「放送禁止」は、フジテレビの深夜帯に一切の告知なく放送された30分程度の番組で、「大家族のドキュメンタリー番組かと思いきや、どう見ても長男がお父さんを秘密裏に〇している」という内容だ。番組の最後に「フィクションですよ」と注意書きがされるが、仕事から帰ってきて偶然この番組を見た人はパニックになり、フジテレビに苦情の電話が多数あったという話まで存在する。

 つまり「フェイク」ということは通常隠されていて、視聴することでこれが作り物であると分かる、というのがフェイクドキュメンタリーの通常の構成で、視聴者は推理しながら伏線回収を楽しむという分かりやすい面白さがあったが、「Q」の場合オチにあたるようなものは一切ない。「Q」の怪異に真相があるのか、ただただ不気味な映像なのか。それはまだ明らかにされていないが、「Q」のように「はじめからフェイクを名乗っている」フェイクドキュメンタリーというのは異色中の異色であるというのは間違いないだろう。

 なぜフェイクを自ら名乗るのかについてはいくつか考察があるが「フェイクという事自体がフェイクである」という考察が好きだ。つまり、これらの映像は「本物の怪異」なのではないかというものである。もちろんそんなバカなという気持ちで楽しんでいるが、実際そうでもおかしくないよなと思わせるほどの表現力がある「Q」ならではの考察は、この作品のことをさらに好きにさせてくれた。

 

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普段ホラーを見ない人でも味見しやすいボリューム

 「リング」「呪怨」などの有名ホラーならともかく、あまり有名ではない2時間のホラー映画を見るのはすごく勇気がいる。怖がらせ方がチープなびっくり系ばかりだと嫌だし、ストーリーもモヤモヤで終わることが多いのでなかなか手が出しづらい。

 「Q」は1話は20分弱、2話は6分半と「取りあえず味見してみるか!」となりやすいボリュームなので、フェイクドキュメンタリーに触れたことのない人もぜひ味見してみてほしい。ホラーが苦手なら、友達と一緒に「ここってこういう意味なのかな」と喋りながら見るのもおススメだ。自分は怖いのめちゃくちゃ苦手なので、「Q」のアップロード日は友達を数人Discordに召喚して一緒に見てもらっている。「今なんか後ろいなかった?」なんて友達が気付くとめちゃくちゃ怖いので、結局一人で見るより怖いのだが。

 

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