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“信念の天秤”が歩ませるままならない物語 Switch「トライアングルストラテジー」が良すぎるので早口でおすすめします

「『タクティクスオウガ』っぽい」で終わらない「トライアングルストラテジー」ならではの魅力を解説。

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 Switch持ちの知り合いに会うたびに「トライアングルストラテジー」公式サイト)を薦めまくっている私ですが、ねとらぼの副編集長の池谷さんに「『トラステ』超面白いです」みたいな話をしたところ、じゃあ記事にしてみませんかとやぶ蛇カウンターを受けたのでいまPCの前に向かっています。

スクウェア・エニックスから発売された「トライアングルストラテジー」は、「オクトパストラベラー」と同じくHD-2Dと名付けられたドット風グラフィックで描かれるタクティクスRPG

 古き良きゲームを遊んでいたり、知っている方は、本作の画面を見た時に、ああ「タクティクスオウガ」みたいな感じねとか、「ファイナルファンタジータクティクス」的な作品ね……といった受け止め方をするかもしれませんが、そこで止まらずぜひ遊んでほしいと思うのです!

 確かにバトルは、往年のタクティクスRPG風味で、マス目状のマップをユニットで移動し、攻撃範囲の違いや高低差を生かして戦うというものです。ユニットごとのアビリティもさまざまに用意されていて、それを使い分けて強敵を倒したり、はたまた力が及ばないときは訓練的なモードで育成を進めて挑んだりできます。そのうえストーリーが、プレイヤーの選択によって分岐し、いくつかのエンディングが用意されている……とか書くと、やっぱり「タクティクスオウガ」みたいなやつじゃん……と反応されかねないのですが、似ている部分ばかりではないのです。むしろ、遊びこんでいくと本作ならではの良さがにじみ出てくるのです。

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 というわけで、今回の記事では、「トライアングルストラテジー」を、早口で勢いよく紹介したいと思います。

ライター:浅葉たいが

RPGと格ゲーとアドベンチャーゲームが好き。ゲームを最大限に楽しむ集団“ゴジライン”の運営とかやってます。今イチオシのゲームは「トライアングルストラテジー」と「春ゆきてレトロチカ」

 

3つの国の緊張した関係を描く重厚なストーリー

 筆者がこのゲームをめちゃくちゃ推しているのは、ストーリーに「やられた」からです。

 物語の舞台は3つの国が存在するノゼリアという大陸。塩の生産地である聖ハイサンド大教国、鉄の生産と加工に長けたエスフロスト公国、交易の盛んなグリンブルク王国という3つの国は、かつて塩と鉄の利権を争った“塩鉄大戦”を繰り広げました。

緊張した三つの国の関係は、物語とともに大きく変化していきます

 この激しい戦争から30年が経過したところから、本作の物語は始まります。塩鉄大戦は痛み分けに終わりましたが、大陸にはさまざまな野心が燻っているという状況です。

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 そんな緊張感のある情勢の中、グリンブルク王国に仕える「御三家」の一つウォルホート家の跡継ぎである主人公・セレノアは、エスフロスト公国の公女であるフレデリカと政略結婚することになります。政略結婚ということは、この結婚には何者かの思惑が関わっているのですが、当のセレノアは正義感と使命感に燃える真っすぐな若者。フレデリカも公女ではあるものの、祖国での序列が低いためか、何者かの思惑など知る由もありません。

主人公のセレノア(左)と、その妻となるフレデリカ(右)。政略結婚ではありますが、二人の間には徐々に信頼関係が芽生えていきます
序盤のラブストーリー風味のある展開はほのぼの風味ですが……

 そんな何も知らないに等しい、二人のほほえましいなれそめが序盤では見られます。お互いが結婚相手だとは知らずに野盗を倒すために共闘したり、そのあとでセレノアの友達の王子様から「目の前にいる人が結婚相手だよ」って教えてもらったり。それでお互い照れてしまって、ちょっと的外れな自己紹介をしたりとかして……。あああ、尊い、なるほど意外とのほほんとしたゲームだな、とか思っていると、その後の怒濤(どとう)の展開に驚かされるはず。のんびりできるのは最初だけといっていいくらい、本作の物語は怒濤の展開を見せます。

 この結婚一つとっても、決して平穏なものでもありません。まずフレデリカはピンク色の髪を特徴とする“ローゼル族”という種族で、この種族は迫害を受けています。そのうえ、フレデリカは何も知らなくても、彼女のいたエスフロスト公国には、野望を抱えた人物がひしめいています。こうした重々しい設定が、序盤からどんどん出てきて、中盤以降でボディーブローのように効いてきます。そして、道徳的にはかくあるべきだが、現実はままならない、というような出来事が立て続けに起きたりもします。セレノアとフレデリカ、そしてその仲間の過酷で、重厚な冒険を描くのが「トライアングルストラテジー」の物語なのです。

各キャラクターのもつ信念や思惑が、セリフに力強く乗ってくるシーンは緊張感があってとても見ごたえがあります。セレノアが真面目な受け答えをしているのに、他国の人に「お前、何も言ってないのと同じやぞ」とか言われることも

 

信念の天秤が歩ませるままならない物語

 そして、こうした重いストーリーに“分岐”が加わることで、ドラマがより深いものになっているのですが、本作の分岐システムはかなり独特です。単純に選択肢で分岐するのではなく、分岐の局面では“信念の天秤”という多数決の投票システムが使われるからです。セレノアは度々「次に何をするべきか」ということを仲間と協議し、その際に“信念の天秤”というアイテムを使い、多数決の投票を募ります。現実において、大事なことを多数決で決めるというのは良いことばかりではありませんが、このゲームにおいては「投票者の間で強い信頼がある」という前提に基づき、この儀式が行われます。

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本作の分岐は、「信念の天秤」によって決定される

 プレイヤーは、信念の天秤の会話パートで、多数決の結果を察することができます。さらに、ただ投票を待つだけでなく、投票前に説得を試みて、意見を翻させるということも可能です。しかし、説得は毎回うまくいくというわけではなく、妻のフレデリカであっても、親友であっても、自らの家臣であっても、ときには強固な意志で投票に臨んできます。

 実は、この説得の成否には、それまでに探索などで得ていた情報と、セレノア自身の“信念”というパラメーターが大きく関わってきます。信念パラメーターには、MoralBenefitFreedomの三要素があり、プレイヤーの行動や選択がこのパラメーターの増加に影響するのです。情報については、仲間を説得する材料になるのですが、ただ情報があるだけでは説得は成功しません。“信念”のパラメーターが足りていなければ、説得できないという状況も多いのです。しかもこの信念パラメーターはマスクデータ、つまりプレイヤーから数値も現状も確認することはできません。このため攻略データなしで本作をプレイすると、“プレイヤーの意見とは違う道を歩む”という状況がしばしば発生します。信念パラメーターが足りていない場合、直前のデーターをロードしてやりなおしても、結果は変わらないことが多いというなかなかシビアな作りです。

信念の天秤の投票前に、説得を試みることができるが、信念パラメーターによっては成功しないことも

 筆者は1周目のプレイをした際、「こうすれば問題が解決するだろう」という考えを持ち、信念の天秤に向かいました。しかし、いざ投票を始めてみると、説得はうまくいかず、自分が望むような投票結果にはなることばかりではありません。ただ、望まない多数決の結果だったとしても、その先に広がる物語で必死に未来を攫もうとする登場人物たちを見ているとじんとくるものがありました。

 3つの国が対立し、利害や生存のために命を懸けて戦いに赴く者たちがひしめく時代に、「誰もが満足する選択」いうのはなかなか存在しません。信念の天秤によって、プレイヤー自身すら納得できない状況に運ばれたとき、そこで諦めず、どうあらがい、未来を切り開くのか。こうしたままならない未来の生き抜き方のようなものが、信念の天秤システムによって強調されるのです。

 最初は思った通りに分岐しないはさすがにどうなのか……と思った信念の天秤システムでしたが、そんなことを感じ始めてからは、これこそが「トライアングルストラテジー」なのだと掌を返しています。

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ユニット同士のシナジーを生かす奥深いタクティクスRPG

 バトルに関しては、タクティクスRPGらしく、ユニットごとの攻撃範囲の違いや、マップの高低差などを生かすものになっています。特徴的なのは、同種のゲームの中でも、適正レベルでの攻略時の難度が高めなところ(育成のために周回できるクエストなども用意されているのですが、普通にストーリーだけを追いかけていくとほぼ適正レベルでの攻略になってきます)。

 ちょっと難しいなと感じた場合は、ゲーム内で難度の調整も可能なのでご安心を。難度ノーマル、ハードでのプレイを選べばヒリつく戦いを楽しめますし、この手のゲームに不慣れ、もしくはストーリーを追いかけるためにサクサク進めたいという場合には、ベリーイージーを選ぶのも手です。

 適正レベル、難度ノーマル以上で攻略する場合は、敵の攻撃のダメージが高めなので、やみくもに突っ込むとすぐにパーティが壊滅してしまいます。しかしその分本作には強力な「アビリティ」(ユニット別の特殊コマンド)が多いので、これらをうまく生かし、ユニット同士のシナジーを引き出す戦い方をするのがセオリーとなります。あるキャラクターでワナを貼り、ノックバックの発生する攻撃でそれに押し込んだり、強力なアビリティを持つキャラを、他のキャラのアビリティですぐに再行動させたり。戦術のバリエーションはかなり多岐にわたっており、マップの攻略法もさまざまです。また、プレイしていると、信念のパラメーターや分岐に応じて、新たなユニットが仲間に加わってくれるので、戦術の幅もどんどん広がっていきます。

ユニットごとに範囲攻撃や状態異常、補助など、さまざまなアビリティを持っています。中には、高低差を無視できる「ハシゴ」をかけられるユニットなども存在します
タクティクスRPGではおなじみのクラスチェンジシステムも。上位クラスになると、より強力なアビリティを覚えることも

 本作を1周遊んだ時点では、ストーリーのボリュームが分厚い分、バトルに関してはややボリュームが控えめに感じるかもしれません。ただ、周回プレイを考えると、なかなか適切なボリュームなのではと筆者は考えています。全てのルートを見るとなるとなかなかのボリュームになりますし、周回プレイで変化する要素も実は多いのです。

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周回を重ね、全ての物語を目撃してほしい、そしてサントラを聞いてほしい

 「トライアングルストラテジー」のドラマは、“人”が中心です。魔法などのファンタジー要素はあるものの、本作は主に人と人との関係を描いた作品で、手を組むのは人同士、争うのも人同士というケースがほとんど。しかし登場人物は、善悪、敵味方と単純に分けられるものではなく、あるルートでは完全な悪に見えた人間でも、別のルートを遊ぶとそうならざるを得なかった事情などが見えてきます。

 1周目は信念の天秤に逆らえない状況も多いと思うので、ときには天秤の決定に身を任せて先に進んでください。1周目をクリアすると、他のルートに行きやすくなるサポート機能的なものが解禁されるので、2周目以降では運命をコントロールする楽しみが得られるはず。本作はちゃんと“周回プレイ”を考えた作りになっているので、ぜひ最後まで遊びつくして、全てのルートを見てほしいと思います。1つのルートをクリアするたびに、「トライアングルストラテジー」の物語の地層が積みあがり、最後にはきっと、このゲームでしか得られない満足感を味わえるはず。全てのエンディングを見終えた瞬間の興奮を、ぜひ皆さまにも味わってほしい!

 そして、全てのルートをクリアしたなら、サントラも聴いてほしいと思うのです!

 本作のサウンドは、名作ドラマやアニメの楽曲を多数手掛けてきた千住明氏が制作。どの場面のサウンドも、ものすごく世界設定や状況にあっていて、実にドラマチックです。特に、オープニングで流れるメインテーマ「TRIANGLE STRATEGY -Main Theme-」には、本作で描かれる激動の歴史が詰まっているかのような迫力で、プレイするとサントラが欲しくなる方も多いのでは。

 そしてなんとこのメインテーマ、サントラにはボーカルを乗せて編曲された「Song of TRIANGLE STRATEGY」が収録されており、クリアしたあとに聞くとこの歌詞が涙腺に来るほど良いのです……! サントラには歌詞カードが入っていませんが、筆者が確認した限りではiTunesで購入すれば歌詞が見られます。

 Switchをお持ちの方は、ぜひ、ぜひ「トライアングルストラテジー」をプレイしてみてください。

 

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