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東海道線と東海道本線ってどっちが正解? 山手線の「山手」って何なの? 実は楽しい「鉄道路線のお名前」の謎月刊乗り鉄話題(2022年6月版)(4/4 ページ)

知らなくても困らないけど、知ると何だか乗りたくなってくる「鉄道路線名」のお話をどうぞ。40代以上の皆さん、覚えてますか……?「E電」。

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線路名称でも路線名称でもない第三の名前「路線愛称」とは

 線路名称、路線名称ときて、近年目立っている路線名が「路線愛称」です。

 JR東日本は東北本線を「宇都宮線」、JR西日本は東海道本線を「JR京都線」「JR神戸線」などと表記し、案内します。理由は単純です。「その方が利用者にとって分かりやすいから」です。

 東北本線は東京都の東京駅から岩手県の盛岡駅を結ぶ路線名称です。東北本線といわれても範囲が広すぎてどこへ行く電車か分かりにくいです。しかし、宇都宮線ならば方向をイメージしやすいし、高崎線とのバランスも取れそうです。

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 大阪駅から京都や神戸方面に行くときもそうです。「東海道本線」の表記だけだと、右へ行く電車も左へ行く電車も東海道本線になってしまいます。小さい字で別途行先を添えるくらいならば、「JR京都線」「JR神戸線」として案内する方が分かりやすい。こういった線路名称でも路線名称でもない呼び方が「路線愛称」です。


(参考)路線愛称は“各社”が分かりやすいように用いる呼び方。例えばJR西日本の路線愛称「琵琶湖線」は、JR東海の東海道新幹線では使われず、線路名称である東海道線として案内する(写真:大泉勝彦)

 路線名として案内されていない「通称」も愛称のひとつでしょうか。例えば東海道線の支線、品川~鶴見間は「品鶴(ひんかく)線」。ここは私の母の実家のそばで、地元の人々からも「品鶴線の踏切渡ってさ……」などと話題になってました。同じ区間のもうひとつの通称は「新横須賀線」です。じつは横須賀線の正式区間は大船~久里浜です。かつては大船から東京まで、東海道線に直通していました。東海道線の運行本数が限界に達してしまい、横須賀線を品鶴線経由にしました。このとき「新横須賀線」とも呼ばれるようになりました。現在の路線案内は横須賀線で統一されています。

 観光要素の強い路線愛称も増えています。「しまんとグリーンライン」はJR四国の予土線のことです。予土線は「伊予と土佐を結ぶ」に由来します。鉄道ファンには新幹線の皮を被ったディーゼルカー「鉄道ホビートレイン」(関連記事)が走る路線としても知られています。しまんとグリーンラインは観光名所の四万十川にちなんだ路線愛称です。


しまんとグリーンラインを走る四国の新幹線こと「鉄道ホビートレイン」

 「ほっとスパ・ライン」は野岩鉄道会津鬼怒川線の路線愛称です。東武特急「リバティ」が乗り入れます。温泉があることを強調した呼び名ですが、日本は温泉が多いので「スパ」単体だと場所が分かりにくいですね。せめて「会津」を入れたほうが良かったかも。


「ほっとスパ・ライン」こと野岩鉄道会津鬼怒川線

 「奥の細道湯けむりライン」はJR東日本陸羽東線の路線愛称です。情緒たっぷりで、サスペンスドラマのタイトルになりそうです。ちなみに陸羽西線にも「奥の細道最上川ライン」という路線愛称があります。

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奥の細道湯けむりライン、奥の細道最上川ラインという情緒のある路線愛称がある陸羽東線、陸羽西線。車両に「奥の細道」のステッカーも貼られている

 カッコ付きで観光愛称を付けるくらいならば、「初めから観光要素のある路線名称を付けてしまおう」という鉄道会社もあります。例えば、えちごトキめき鉄道の「日本海ひすいライン」「妙高はねうまライン」、道南いさりび鉄道の「道南いさりび鉄道線」、わたらせ渓谷鉄道の「わたらせ渓谷線」、舞浜リゾートラインの「ディズニーリゾートライン」などです。

 「東武アーバンパークライン(東武野田線)」のように、分かりやすいけれど、長くて使いにくいといった賛否両論ある路線愛称もあります。沿線の方、どちらを使っていますか? 路線愛称はネーミングセンスが問われます。失敗すれば使われなくなってしまいます。難しいですね。

 実用系、観光系も含めて、全国に80以上の路線に「路線愛称」があります。市販の時刻表の巻頭地図を開くと、路線名称にカッコ付きで添えられています。ぜひチェックしてみてください。乗りに行きたくなりますよ。

 忘れ去られてしまった愛称といえば、40代以上のみなさん、これを覚えていますか? 「E電」(関連記事)

 ……お後がよろしいようで。

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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2022年5月時点)

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