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大好きなアイドルの肌が荒れた―― SNS炎上やアトピー描く漫画に反響 作者に思いを聞いた(2/3 ページ)

ファンアートがバズって、そして燃えた。漫画「推しの肌が荒れた」作者インタビュー。

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―― ファンアート、SNS炎上、アトピーなどさまざまな面を持つ作品ですが、これらのテーマを選んだ理由を教えてください

もぐこんさん 前作の「あつい皮膚」でもアトピーを描いたのですが、短編の分かりやすさを重視して、アトピーの人の内面のみに注目したシンプルなストーリーでした。そこで描き切れなかった、アトピーとアトピーじゃない人(世間)の関係性をずっと描きたいと思っていて、現代でそれを表現する題材を考えるうちに、アトピーとアイドル、SNSというモチーフを発見したという感じです。

 誰にでも「推し」がいる時代、みんな「推し」には幸せになってほしいと思っているけど、SNSという場所ではそれぞれの人が見ているものがずれているので、良かれと思ってしていることがおかしなことになっていく……ということが描きたかったのではと思います。

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「あつい皮膚」

―― 主人公の絵に寄せられたSNSの炎上コメントにリアルさを感じましたが、身近で炎上が起きたことはありますか

もぐこんさん 私が一番記憶に残っているのは、初めてくらげバンチに「裸のマオ」という漫画を載せていただいたときに、漫画のコメント欄で、見ず知らずの人たちが私の絵が上手いか下手かについて議論をしていたことです。

 見ているとまずネガティブなコメントを書く人がいて、そのコメントに対して、擁護してくれる方がコメントを寄せてくれる、という流れが何度かありました。もちろん褒めてくれる方がうれしいですが、コメントをよく読んでいると、どう考えても「上手い」の基準(自分の正義)が違う人たちが議論してるので、いつまでたっても議論は平行線でどちらかが折れるようなことはないのだなと感じていました。もちろん炎上と言えるほどのものではありませんでしたが、世間の大炎上のミニチュア版を身近に見た経験でした。確実に今回の話のきっかけになっていると思います。

――  作中では承認欲求についても描かれていますが、創作者として承認欲求とどのように向き合っていますか

もぐこんさん 作品を作る以上承認欲求はもちろんあります。私はかなり嫉妬深い性格をしてると思います。知り合いの漫画家や知人がTwitterなどでバズってるのを見ると毎回「ぐぬぬぬ」と嫉妬で狂いそうになるので、あまり漫画家はフォローしないようにしています。SNSやWeb漫画が普及して見られていることが可視化されてしまったのでそれを意識した作品作りを避けれなくなってしまっている気がしますが、「バズりそう」よりも自分が描く意味があるものを描いて、結果バズれればいいなと思っています。

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―― 「肌」へのこだわりを強く感じた作品でした。こだわりはどこから来ていますか

もぐこんさん もちろん自分がずっとアトピーで悩まされていたということが第一です。今は少し落ち着いていますが季節によってひどくなったり、急に体がかゆくなって我慢できなくなったりという経験が今でもあり、自分の荒れた肌が人にどう見られているかいつも不安に感じています。

 この感覚はアトピーだけでなく結構多くの人が経験したことがあると思うのですが、それを描いた漫画があまりなかったので描こうと思いました。肌は自分が他人や世間や世界と触れ合う部分でもあり、肌の色で差別されたり偏見の目にさらされたりすることも多いのに、漫画作品やアニメ作品で肌がつるつるの人たちばかりが描かれるのも違和感がありました。

―― 読者からの反響について感じたことを聞かせてください

もぐこんさん 私の漫画のコメント欄にはいつもいろいろな人がいろいろな意見を書き込んでくれて、アトピーを題材にすること自体に嫌悪感を感じるような人もいるし、よくぞ描いてくれましたという人もいます。多種多様な意見がある今のコメント欄がいい状態だなと思っています。コメントは本当にありがたいです。誹謗中傷的なコメントはすぐ削除要請で消えてしまうのですが……。

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―― 今月(6月)には作品集が出版されましたが、今後はどんな作品を作っていきたいですか

もぐこんさん 単行本の帯文に編集部が「群れからはぐれた人々描く」と書いてくれたのですが、それがすごく気に入っています。それを読んで初めて自分は「群れからはぐれた人々を描」いていたのだなと気付きました。たぶん自分が若干群れからはぐれているからだと思いますが、今度は少し長めの「群れからはぐれた人々」の漫画を描きたいです。


 「推しの肌が荒れた」は漫画サイト「くらげバンチ」に掲載されている他、6月9日に発売の『推しの肌が荒れた~もぐこん作品集~』に収録。作品集には他にもSNSで話題になった読み切り「あつい皮膚」「裸のマオ」も収録されています。

(C)もぐこん/新潮社

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