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いよいよ放送開始、アニメ「5億年ボタン」菅原そうた監督インタビュー 今も語られ続ける伝説的漫画は“原作者本人”の手でどう生まれ変わったか(1/3 ページ)

トレパネーション、スワンプマン、哲学的ゾンビ、水槽の脳……出てくる単語にゾクゾクさせられます。

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 7月14日からスタートするアニメ「5億年ボタン 菅原そうたのショートショート」公式サイト)。「5億年ボタン」の名前自体をどこかで聞いたことがあるインターネットユーザーは多いかもしれません。というのもインターネットの歴史の中で、常にどこかで都市伝説的に語られ続けてきたからです。

 今回アニメ化するのは、その原作を2002年に描いた本人、菅原そうた。「gdgd妖精s」などの作品で知られる彼は、コメディータッチのアニメーションの中に哲学的要素を含める作家です。今回菅原そうた監督本人に「5億年ボタン」アニメ化のいきさつや、新たな挑戦についてインタビューしました。

ネットの都市伝説的ネタとして有名な「5億年ボタン」が、原作者である菅原そうたによってアニメ化!
この予告編を見るだけで、ただのかわいいアニメじゃないのがビンビン伝わってきます。

 

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世代を超えて知られている「5億年ボタン」

―― 昔から今もなおインターネット上で「5億年ボタン」が、都市伝説的に語られている状況自体が面白いと思っているんですよ。

菅原そうた監督(以下・菅原):ほんとですよね。もともとぼくが『週刊SPA!』の連載で描いたのは2002年です。その当時はみんな「ん?」って感じだったんですけどね。20年たった今の人にピントがあっていたのかーと。

―― まだYouTubeがない時代ですね。

菅原:そうなんですよ。当初は2ちゃんねるみたいなところでちょっと流行った感じだったんです。今の小学生は、YouTuberがネタにしてくださった「5億年ボタン」を見ているので、いろんな世代の方がこの話を知ってくれています。

フェルミ研究所がアップしている「5億年ボタン」。このようなオマージュ創作がYouTubeにはたくさん存在しています

 

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―― 今回アニメはどのように作り始めたのですか?

菅原:コロナが始まったころからずっと作っていました。今まではみんなで分散して半年から1年で作っていたんですけれども、声優さんや音楽以外は「自分で全部担えるな」と思って、3年間かけて作ったものです。「5億年ボタン」自体がインターネットで流行した、いわばみんなのものみたいなところがあるので、今来ているVTuber・VSinger文化に合わせてKAMITSUBAKI STUDIO幸コ(※コはしめすへんに古)さんと理芽さんにオープニングとエンディングをお願いしました。

―― 3年間お一人で作っていたんですか?

菅原:そうですね。朝4時からお昼12時までのサイクルで毎日毎日ずっと作ってました(午後は仕事はしないで子どもと散歩&サウナの時間です)。多分コロナがなかったら一人で作ることにはなっていなかったです。

 

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3人いれば社会が生まれる

トニオちゃんは20年以上前に菅原そうた監督が産んだキャラクター。声は野沢雅子

―― トニオちゃんが20年前に生まれたのはどういう経緯だったんですか?

菅原:ぼくはもともと絵が下手で、美術部とか入っても30人のうち下から2番目とかだったんです。一番下は来てない不良。漫画家になりたかったけど諦めていたとき、3DCGを触り始めたんですよ。球を組み合わせてドラえもんのモデルを作ったら友達に「めちゃくちゃうまい」って褒められて。うれしくなって作ったのが、球体を組み合わせたキャラのトニオちゃんだったんです。オリジナルで作った初めてのキャラだったので、へその緒みたいに一生持っておこうと思っています。当時は3DCG自体が異世界みたいで魅力的に見えたので、真っ先にMacではじめて、のめりこんでいました。2000年前後は3DCGとインターネットが同時に伸びた時期ですね。トニオちゃんのデータは全部MOディスクに入っているので、今取り出してます。

―― 2000年前後はインターネットをやっている人自体そんなに多くなかったですね。

菅原:インターネットやってること自体がオタク扱いされていた時代でしたね。PC使ってるやつはオタク、って漫画とかでネタにされてましたよ。今は全員やってるじゃん!(笑) オタクのほうが先取りしているんですよ。

―― 新キャラが増えていますが、彼女たちはどういう経緯で生まれたのでしょうか?

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気が強い少女ジャイ美。真っ先に5億年ボタン押しそう

菅原:ジャイ美はジャイアンのような、気の強い涼宮ハルヒのような「あんたのものは私のもの」みたいな考え方の女の子キャラに憧れがあって生まれた、リア充の無敵キャラです。

深く考えるスネ子。この作品の良心になるか……?

菅原:スネ子はどちらかというと主役になれない女の子で、共感しやすいキャラの方向で生まれました。「私は主人公じゃない」って思っている人たちが「分かる、私はこっち側だ」と感じてもらえたらうれしいですね。

思考実験の人・井上博士。謎。

菅原:井上博士は綾波レイと初音ミクとコロコロ(※)の中間を狙ったような、天才女の子キャラクター。思考実験の話ができる存在がほしかったんです。

※菅原そうた監督作品「gdgd妖精s」のキャラクター。ぼそぼそっと不思議なことを言って周囲を驚かせる

―― 3人というバランス感は「gdgd妖精s」のときからずっとこだわっていますね。

かわいさとシュールさとアドリブが入り乱れる内容で大いに話題になった、菅原そうた監督の「gdgd妖精s」

菅原:ぼくの中で崩せない最小限の単位ですね。スリーピースバンドとかも好きです。人が1人いたら個人、2人いたら対面になって、3人いたら社会になると思うんです。だから3人で物語を作ると生かしやすいんですよね。最初はトニオ、ジャイ美、スネ子の3人姉弟で回していこうと思ったんですけど、禁じ手を持ち込むキャラとして博士を入れました。一方のアドリブコーナーではトニオが抜けて、3人が回す。常にどういう3人にするかのパターンを考えています。

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―― トニオの声が野沢雅子さんなのは、ビジュアルとのギャップもあって驚きました。どういう経緯で決まったのですか?

菅原:以前お仕事で、野沢雅子さんにNiziUのダンスを踊らせたいと言われたので、ぼくは3DCGで野沢雅子さんをスキャンして踊らせたことがあるんです。今回野沢雅子さんに「ぼく『5億年ボタン』ってアニメ作ってるんですけど出てもらえませんか?」って聞いたら、「いいわよ!」って二つ返事で言ってもらえました。いいんだ!? って(笑)。子どものころから「ドラゴンボール」とかで野沢雅子さんが一番好きな声優さんだったので、これで夢がかなっちゃいましたね。

 

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