「乗客を深夜の街に降ろして置き去りにして逃げた」夜行バス乗客がトラブル報告 バス会社「適切な処置だった」と弁明(1/3 ページ)
乗客「誠意のない対応だと憤りを感じている」
大阪から東京に移動する夜行バスに乗っていると、深夜1時ごろに突然京都駅で全員降ろされたまま、運転手や乗務員が逃げるように走り去ってしまった――。乗客たちによる報告がきっかけで、バス会社側の対応が物議を醸しています。本当にそのようなことがあったのか。編集部では、乗客と埼玉県に本社を置くバス会社のさくら観光バスに詳しい話を聞きました。なお、対応が物議を醸しているのはさくら観光バスで、福島県に本社を置くさくら観光は別会社です。
問題のバスは当初、9月4日の22時10分に大阪・難波を出発し、9日5日の6時10分に東京・池袋に到着予定でした。しかし、乗客によると、空調トラブルで車内は“サウナ状態”で、パーキングエリア(PA)で調整を試みたものの、復旧できなかったとのこと。深夜1時ごろに京都駅でバスの運行中止について知らされた後、返金対応はあったものの、運転手や乗務員たちがバスに乗って何の挨拶もなく走り去ったというのです。
編集部が入手した動画では、走り去るバスを見て「これやばいですよ」「全員置いていかれてるやん」「会社から逃げろと言われたん?」「え。いなくなっちゃったんだけど」などとパニック状態になる乗客たちの様子がうかがえます。なかには、バスに向かって「帰るのはねえだろうがよ!」と激高している乗客も見られます。
乗客「挨拶もなく逃げるように走り去った」
編集部では、乗客のバイオハザード2最強攻略wiki(@SRG_the_/以下、wikiさん)さんに話を聞きました。wikiさんはTwitterで当日の状況についてツイートするだけではなく、Twitterまとめメディア「Togetter」にそれらのツイートを時系列順にまとめて投稿しています。
──バスの空調に違和感を覚えたのはいつごろでしたか。
wikiさん:乗車して席に座った当初から「なんだかエアコンの効きが悪いな」と感じていました。おそらく、周囲の乗客の皆さんも同じだったと思います。ただ、私の場合は夜行バスに乗るのが初めてで、熟練のフォロワーたちから「夜行バスでの移動は過酷なものである」という話を聞いていたため、「こういうものなのだろう」と勝手に納得していました。
「空調設備の調子が悪いため停車する」という運転手さんのアナウンスを受けて、PAで外に出た際はまるでサウナから出たときのような爽快感があり、“整い”ました。他の乗客も「車内にはとてもいられない」という様子で、車外に出る人も少なくありませんでした。
──運行中止について知らされた際の状況について教えてください。
wikiさん:京都で乗り込む予定の乗客を乗せた後、乗務員さんたちが何やら相談をしていました。車内で20分ほど待機した後、運転手さんが23時55分ごろに「車内空調不備のため運行中止、朝になるまでお待ちいただき、各自で東京へ向かってください。新幹線の運賃は後日、負担します」という旨の車内アナウンスをしました(※)
※SNS上では「バス会社が費用を負担するだろうから」と不確定なアナウンスだったという指摘も見られます
みんな困惑したような表情で下車しました。そのうち10人ほどは行き場もないため、バス乗り場で途方に暮れていました。私もその1人でした。
──SNS上では激怒した乗客がいたという書き込みもありました。
wikiさん:乗客の一部は声を荒げて、運転手さんに詰め寄っていました。深夜なので新幹線はもう終わっており、東京へと移動するには夜が明けるまで待つほかありません。宿代などは出ないのかと交渉をしていました。運転手さんは「宿代は出せない」の一点張りで、その態度がさらに彼の神経を逆撫でしている様子でした。
私は運転手さんにその交渉をする権限はないんだろうなと思っていましたが、話し声が怒鳴り声にエスカレートしたところで警察官2~3人が到着しました。ヒートアップした乗客を警察官が囲い込んでなだめている隙に、深夜0時50分ごろに運転手さんや乗務員さんは皆バスに乗り込み、逃げるように発車して行ってしまいました……。
それまでは他の乗客はそれほど強く怒っているわけではなく、むしろ「これからどうしよう?」という不安が強い様子でしたが、バスが帰ってしまってからは困惑と怒りの表情を浮かべていました。
──取り残されてから朝まではどのように過ごしましたか。
バwikiさん:後で連絡を取り合えるように乗客同士のLINEグループを作成して解散しました。それぞれホテルやカラオケなどへ流れ込んだようですが、私は近くにあったネットカフェに入店し、そこで仮眠を取って朝を待ちました。
──会社側や乗務員の対応についてどう感じましたか。
wikiさん:誠意のない対応だと憤りを感じています。新幹線や飛行機などの移動手段に比べて値段が安く、高品質なサービスを提供するのは難しいということは充分に理解しているつもりです。しかし、乗客を深夜の街に降ろして置き去りにし、挨拶もなく逃げるように立ち去るというのはサービスの質以前の問題だと思います。
一方、バス会社のさくら観光バスは当日の状況についてどのように認識しているのか。編集部では担当者に電話で詳しい話を聞きました。乗客側が大きな不満を抱えていたのに対し、担当者は「ある程度、適切な処置だった」と説明しました。
※対応が物議を醸しているのは、埼玉県に本社を置くさくら観光バスで、福島県に本社を置くさくら観光は別会社であることを明記しました【9月6日22時10分追記】
※バスが走り去り、乗客たちがパニック状態になっている様子の動画を追加しました【9月7日12時30分追加】
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