「乗客を深夜の街に降ろして置き去りにして逃げた」夜行バス乗客がトラブル報告 バス会社「適切な処置だった」と弁明(2/3 ページ)
乗客「誠意のない対応だと憤りを感じている」
バス会社「ある程度、適切な処置だった」
──当日の状況について教えてください。
担当者:当日、乗務員から「エアコンの調子が大変悪い」と連絡がありました。室温が35度を超えてしまっていたようです。車内は満席で37人のお客様にご乗車いただいており、運転手と乗務員を含めて39人です。そのまま運行するのはいかがなものかという乗務員からの相談を受けて、熱中症や体調不良を起こす可能性が十分にあるだろうとして、運行中止を判断しました。
──やはり、空調トラブルが原因なのですね。代わりのバスを用意することはできなかったのでしょうか。
担当者:実は弊社は大阪に営業所がありません。埼玉から京都まで向かわせると、約10時間かかってしまいます。下手をすると、昼の12時近くになってしまうという事情もありました。
──返金などの対応について教えてください。
担当者:ご乗車していただいたお客様にバス代金(8500円)に加え、私どもの誠意として金額を+αしてお渡し、「新幹線や他社のバスをご利用いただけないか」とお願いしました。具体的には、東京に到着するお客様には(バス代金を含めた総額で)1万5000円、埼玉行きのお客様には+1000円をしないといけないと判断して(バス代金を含めた総額で)1万6000円をお渡ししています。
──「宿代」を渡すのは難しかったのでしょうか。
担当者:個人差があるため、難しいですね。京都には24時間営業の喫茶店やレストラン、漫画喫茶、インターネットカフェなどホテル代わりにお使いいただけるところが十分あることを承知しており、そちらでのご対応をお願いした形になります。
──乗客は皆さん納得された様子だったのでしょうか。警察も来たようですね。
担当者:私どもとしてはお客様に大変申し訳ないと思い、最善の努力をさせていただいたつもりなのですが、なかなかその思いが伝わらなかったお客様も1人いらっしゃったと伺っています。警察はその方がお呼びになったようです(※)。乗務員からは「パトカーも来ていたようですね」ぐらいの報告でした。とくに警察からの指示などはなかったと思います。
※wikiさんは警察を呼んだのは乗務員だとして、「当時、乗務員さんは『会社も警察を呼んで良いと言っている』と言って警察を呼びました。悪い言い方をすると、『激高している乗客に警察官を差し向け、取り囲まれている間にバスで逃げた』というのが実情です」と振り返っています。
※後日、さくら観光バスの担当者は乗務員への聞き取り調査を経て、警察を呼んだのは乗務員であったことを認めました【9月7日15時30分追記】
──SNS上では1人のみならず、数人の乗客が声をあげています。とくに物議を醸しているのは、運転手や乗務員がバスに乗って無言で立ち去ってしまった、言わば“置き去り”にされたという部分です。
担当者:乗務員は2人で対応していますし、説明しない限りお客様がバスを降りることもないと思います。仮に、実際に置き去りにした場合はご返金もなく、お荷物もトランクからお返しできませんので、個人的には“置き去り”という表現は適切ではないと思います。
──返金対応などをしていたにもかかわらず、一部の乗客が心情的に“置き去り”にされたと認識しているということは、コミュニケーションにも問題があったのではないかという気がします。
担当者:全員ではなく数人の方とのコミュニケーション不足があったと思います。昼は数多くいますが、夜は1~2人の体制でやっていますので、1人1人にメールや電話をできなかったのだろうなと想像します。
実際、数人の方からお電話をいただき、なかには宿泊料金を求められたお客様もいました。お電話をいただいたお客様には返金の内容を説明したことは確認しております。大変お客様には申し訳なかったですが、ある程度、適切な処置だったと思います。
──コミュニケーションの一部には問題があったものの、処置としてはある程度、適切だったと。
担当者:逆に、バスが35度の室温で40名近い人が乗っているなかで、運行を続けたことを考えると、ぞっとします。2時間に1回休憩は取りますが、満席でエアコンが効かないとみんな病気になってしまうのではないですかね。
新型コロナもまだ収まっておらず、皆さんマスクを装着して乗車されています。マスクも外さないといけなくなるでしょうし、その状況は想像しづらいです。そう考えると、現場と弊社の判断は本当にお客様には大変申し訳ないのですが、正しかったような気がします。
一部の乗客からは今回の騒動は「空調トラブルによる“サウナ状態”」「深夜1時ごろに、コミュニケーション不足にも関わらず、“立ち去る”」と、トラブルが重なったことから、強い不満を買いました。動画からもその戸惑いや怒りは強く見受けられます。
それに対して、さくら観光バスの担当者は、乗客が“立ち去る”と認識するに至るような「コミュニケーション不足」については認めたものの、「バス代金(8500円)だけではなく、誠意として総額で1万5000円あるいは1万6000円を渡している」「空調トラブルのまま走行を続けていた場合の熱中症などのリスクを考えると、ある程度、適切な処置だったと考えられる」と見解を示しています。
担当者は「これ以上、お客様にご迷惑をかけないように一生懸命頑張ります」として、コミュニケーション不足については「定期的に実施している乗務員教育では、車両故障やトラブルの際にはお客様に丁寧にご案内するように教育していきます」と話しました。さくら観光バスの今後の対応が注視されます。
バス会社、国土交通省に代表が報告【9月7日15時30分追記】
さくら観光バスの担当者は乗務員への聞き取り調査を経て、警察を呼んだのは乗務員であったことを認めました。警察を呼んだのは「ある男性のお客様が相当絡んできて、困ってしまった」ことが原因とし、“置き去り”と言われるバスの出発については「『これ以上いてもらちがあかないし、僕たちが帰った後に暴力沙汰になってはいけないから出なさい』という警察の指示に従ったものです」と話しています。なお、本件については国土交通省に代表が報告したとのことです。
※バス会社が乗客に渡した金額が、バス代金を含めた総額であることを明記しました【9月6日22時10分追記】
※当初、記事中で「深夜バス」という呼称を使っていましたが、正しくは「夜行バス」でした。お詫びして訂正いたします【9月7日0時10分追記】
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