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死んだ暴力団員が猫に転生→子どもを守る!? 埼玉県警の制作した漫画が「ユニークで面白い」と話題、制作経緯を聞いた(1/2 ページ)

青少年に読んでもらえるよう、面白い漫画を目指したそうです。

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 埼玉県警が制作した「暴力団員が猫に転生した漫画」が、ユニークかつ面白い、とネットで話題になっています。制作経緯などについて県警に話を聞きました。

 この漫画をTwitterで紹介したのは、漫画家の荻野眞弓(@mymejp)さん。荻野さんによると、この漫画は学校にてプリントで配布され、中学生の長男が持ち帰ってきたものだそうです。

 漫画の内容としては「暴力団組員の生まれ変わりで前世の記憶を持つ猫が、飼い主の少年を諭すという形で、青少年が反社会的組織や暴力団に関わることのないよう注意喚起を行う」というものとなっています。

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 荻野さんいわく「いつもならプリントを鞄の底でグシャグシャにしている長男が、この漫画に関してはきれいに持ち帰ってきてうれしそうに渡してくれた」とのことで、普段プリントにあまり目を通さないお子さんにも届く内容となっているようです。

 漫画はTwitter上で大きな話題となり、1万件を超えるいいねが集まりました。さらに「普通にマンガとしてもおもしろくて、すごい効果的」「埼玉県警スゴい」「他の地方の小学校にも配布して欲しい」といった好意的な反応が多く寄せられています。

 受け取ってほしい相手にメッセージを届けるにはどうすればよいのか、そこにはきっと試行錯誤があったことでしょう。そして狙い通り、子どもが興味を持ってくれたという、とてもすばらしいこの取り組み。漫画を制作した「埼玉県警 刑事部 捜査第四課」に、経緯や今後の展望などを聞きました。

「埼玉県警 刑事部 捜査第四課」へのインタビュー

――まず、刑事部捜査第四課について教えてください。

埼玉県警 刑事部捜査第四課 担当者(以下・埼玉県警) 簡単にまとめますと「暴力団など反社会的組織に関する事件や案件を担当している部署」です。

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――この漫画を制作しようと思ったきっかけを教えてください。

埼玉県警 「埼玉県暴力団排除条例」というものがありまして、それに沿った活動のひとつに「青少年に対して、暴力団に入らないよう、接触しないよう啓蒙・教育する」というものがあります。

 今回配布した漫画のリーフレットはこの条例にもとづき、青少年が暴力団や反社組織の被害に遭わないように啓蒙する、という目的で制作・配布したものです。

 実は今までも毎年、同じように漫画のリーフレットを作っていまして、青少年にも分かりやすいように、伝わりやすいように腐心していたのですが……大きな反響をいただいたのはこれが初めてです。

――なるほど。この漫画は県内のどのような学校で配布しているのでしょうか。

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埼玉県警 青少年に対する啓蒙活動として1年に1度、県内の中学校と高校の1年生に配布するよう、各学校にお願いしています。

――今回のような、コミカルで楽しい漫画になった経緯などがあれば教えてください。

埼玉県警 例えば2021年の漫画リーフレットなのですが、そのストーリーが「気軽なバイトがある、と言われてやってみたら特殊詐欺の受け子だった。辞めようにも元締めの暴力団員に脅されて辞められず、ズルズルと受け子を続けるうちに捕まった」というものだったんです。正直に言ってしまうと実に警察の啓蒙らしい、暗い内容ですよね(笑)。

 経緯としては、これを読んだ捜査四課の女性捜査員が「こんな暗い内容、しかもバッドエンドでは子どもウケが悪い、子どもたちが読んでくれない」と言い出したんです。さらに彼女は「もっとエンタメに寄せて、楽しく読める漫画にしたほうが見てもらえるだろう」と提案してくれまして。その結果として、今回の漫画が描かれることとなりました。

――なるほど。では、漫画の作者さんを教えてください。

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埼玉県警 さきほどの提案を出してくれた、捜査四課の女性捜査員です。彼女が自分で作ると申し出まして、ストーリーも漫画も彼女がすべて考え、描いてくれました。

――漫画家さんに頼んだわけではなく、その女性捜査員さんが漫画を描かれた、ということですか?

埼玉県警 はい、捜査四課の女性捜査員がひとりで作ってくれました。

――なんと! 警察の方が描かれたとは大変驚きました。漫画としてまとめるにあたって、苦労した点などがあれば教えてください。

埼玉県警 難しかったのは「警察的な表現や単語をどうするか」ですね。警察から発行するものとして、警察的な表現や単語は正確に書かなければいけないのですが……それらを厳守すると堅苦しくなり、漫画としてつまらなくなってしまう。コミカルな内容で子どもたちに伝わるように、読んでもらえるようにしなければ本末転倒ですからね。

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 「警察的な表現や単語をどこまで崩していいか」が一番だったのですが、他にもいくつか問題がありまして……内部で3~4カ月ほど揉みに揉みまして、なんとか仕上がった感じです。

――ところで猫になった「四太」くんですが、やはり由来は「四課」でしょうか? 目の所の模様も数字の「4」になっていますし、思い入れが感じられます。

埼玉県警 よく見てますね、その通りです(笑)。知っている方なら分かると思いますが、暴力団の取り締まりといえば「四課」なので。警視庁の四課は最近「暴力団対策課」に変わったのですが……われわれも「四」という数字にはとても思い入れがあります。

左目のところの模様が数字の「4」になっています

――今回のTwitterでのいわゆる「バズり」に関しては、いつごろ気付かれたのでしょうか。

埼玉県警 漫画家の荻野眞弓さんがTwitterで紹介してくださり、それにたくさんの「いいね」や「リツイ―ト」がついたのが12月13日で、われわれも同日中には把握していました。とは言いますけれど、実際のところは署内の者から「あの漫画バズってるよ!」と教えられたからなんですが(笑)。

 ちなみにこのリーフレット自体は、11月の下旬から配られているものです。少しだけ時間差がありますね。

――漫画がバズったことに対する感想をお聞かせください。

埼玉県警 漫画という形での中高生に対する啓蒙活動は毎年行っているのですが、今まで反響はほとんどありませんでした。今回初めて大きな話題となり、さまざまな感想や問い合わせをいただけたのは本当にうれしく思っています。

 署内の各部署からも「うちの子が漫画のプリントを持って帰ってきてたよ」といった反応を聞いておりまして、繰り返しになってしまいますがとてもうれしいです。

 そして何よりも、私たちは「子どもたちが暴力団や反社組織の被害に遭うことのないように」と、思いを込めて漫画リーフレットを作っています。今回はたくさんの人に見てもらえたこと、子どもたちが読んでくれたこと、結果として大成功になりました。本当にありがとうございます。

――今後の啓蒙活動として、新しいアプローチなどは考えていらっしゃるでしょうか。

埼玉県警 新しい試みとしては、今回の漫画をアニメ化することを予定しています。アニメ化とは言いましたが、おそらく声をあてた紙芝居的な動画になるかと思います。予算の都合などもありまして(笑)。しばらくお待ち下さい。

 また今回のバズりを受けて急きょ、埼玉県警の運営するTwitter「埼玉県警察犯罪情報官」と、「埼玉県警公式サイト」に漫画を掲載しました。ホームページからは、漫画リーフレットのダウンロードも可能です。

――最後に一言お願いします。

埼玉県警 暴力団や反社会的組織は、虎視眈々(こしたんたん)と皆さんを狙っています。隙あらば付け込んできますので、甘い言葉に誘われないよう、くれぐれもお気を付けください。

 少しでも不安に思われた際には、どんな些細なことでも構いませんので、最寄りの警察署までお気軽にご相談いただければと思います。

記事・取材:たけしな竜美(@t23_tksn)、企画・編集:十津川あきら

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