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ガンダムやゲッターロボのオープニングを“雑に実写再現” 100万再生のファンメイド動画、制作者に聞く裏側(1/3 ページ)

「『雰囲気』を完全再現」「ハイクオリティと低クオリティの高度な融合見飽きない!」と大きな反響。

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 アニメや特撮、映画などざまざまなジャンルのファンアートで、本物さながらの再現度を目指す人がいる一方、あえてその逆を行くような動画が注目を集めています。その名も「雑に実写再現」。

「雑に実写再現」の「Z・刻をこえて」に登場するガンダムの着ぐるみ

 「雑に実写再現」は、YouTubeチャンネル「ツカーサさんの記録」で公開されている動画シリーズ。プロデューサーのツカーサさんのもと、数々の巨大ロボットアニメのオープニングを実写化しています。動画には大きな反響があり、なかでも「機動戦士Zガンダム」のオープニング「Z・刻をこえて」は再生回数100万回を突破しています。

「雑に実写再現」の「Z・刻をこえて」

 「雑」と銘打っているにも関わらず、「低予算ながら綿密に再現されている動画に賞賛っ!!」「いや、タイミングの合わせ方といい、すっごい神経使った編集してますやんwwwちゃんと『雰囲気』を完全再現してるから、100点満点の出来栄え」「雑と言いつつ、登場人物の細かい角度や、髪のなびき方まで、作品愛を感じてめちゃくちゃ好き」など、多くの賛辞が寄せられています。

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クワトロ・バジーナ(シャア)とカミーユのシーンも

 「この雑さの中にオリジナルを彷彿(ほうふつ)とさせるクオリティがたまりません」「このハイクオリティと低クオリティの高度な融合見飽きない!」というコメントもあり、出演者の表情や編集の妙、手作りのガンダムの着ぐるみなど強いこだわりが感じられる箇所がありつつも、コクピットは段ボール、スペースコロニーは缶ビールの「金麦」で表されるなど、素材むき出しの状態であえて見せる「雑さ」とのバランスも魅力のようです。

コクピットは段ボール
衝撃&笑撃の金麦コロニー

 「雑」かつ完成度の高い動画はどうやって生まれるのか、どんな人が作っているのか。ツカーサさんに聞きました。 

結婚式に出られない、コロナ禍で実家に帰れない……。不測の事態から誕生

 ツカーサさんは関東在住の30代後半の男性。仕事が休みの土日中心に創作活動を行っています。「雑に実写再現」動画を作り始めたきっかけを聞くと、意外な答えが返ってきました。

 「8年前、友達の結婚式に出られなくなってしまって、ビデオメッセージを「北斗の拳」のオープニングテーマ「サイレントサバイバー」で作ったのがきっかけです」(ツカーサさん)

「北斗の拳」のオープニングテーマ「サイレントサバイバー」 近所の公園が世紀末の世界に

 初めて「雑に実写再現」した「北斗の拳」のオープニングは再生回数が伸び、手ごたえもあったそうです。しかし、当時、編集に使用していたのが「YouTubeビデオメーカー」で、動画を切ったりはったりしかできず、ツカーサさんは技術的な限界を感じ、次の作品までに約6年もの年月を要してしまいました。

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 しかし、意外な出来事が制作再開につながります。

 「次に作ったのが『装甲騎兵ボトムズ』の雑に再現動画です。コロナ禍のゴールデンウィーク(2021年)に実家に帰るのをやめにして、休みを有効利用するために作ろうってことになりました。ちょうどその時、新しい画像編集ソフト『パワーディレクター』っていうのを手に入れて。友だちにやらないかと声を掛けました。だいぶ間が空いてしまい、再スタートという感じですね」

現在も使用するソフトで初めて「雑に実写再現」したロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」のOP

 動画には「マジンガーZ」「無敵超人ザンボット3」など、70年代に放映されたロボットアニメを再現したものも。ツカーサさんの年齢だと、リアルタイムで見ていないアニメのはずですが……。

 「僕は40歳近いのですが、昔のロボットアニメってゲーム化されていたり、テレビで再放送されたりしていたので、子どもの頃のネットがない時代でも昔の作品に触れる機会はありました。ゲームは『スーパーロボット大戦』でよく遊んでいました。大人になるにつれ、70年代・80年代の古いものが好きになっていったんです」(ツカーサさん)

土日に自宅や近所の公園で撮影。出演者はかつてのミュージシャンつながり

 さて、「雑に実写再現」の動画制作にはどれくらい時間がかかっているのか。「まちまちなんですよね」と言いつつも、ツカーサさんは工程ごとにかかる時間を教えてくれました。

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 「最初、動画内に出てくるロボットはフィギュアやプラモデルを使ってたんですけど、今は着ぐるみです。着ぐるみを作るのに最低3日は欲しいんですよね。さらに、出演者のスケジュールを合わせて撮影をする。撮影には半日くらいかけています。動画の編集自体は1日で終わったりするんですけども。ペース的には早くて月に1回くらい。時間かかるときは3か月に1回くらいになっちゃうんですよね」(ツカーサさん)

 着ぐるみ制作や動画編集は自宅で行い、撮影も身近な場所で行っているようです。

 「撮影も映像を合成で作るときは自宅で撮ります。外ロケ(※屋外でのロケ)っていうのも多少あるんですけど、例えば『装甲騎兵ボトムズ』で使ったのは近所の公園。『ゲッターロボ』もそうです。あとは会議室を借りてやったこともあったし。前回(2023年1月)作った『無敵超人ザンボット3』は、出演者の家に車で行って撮影させてもらいました」(ツカーサさん)

「ゲッターロボ」 出演者の後ろに滑り台が見える

 出演者は公募しておらず、すべてツカーサさんと何らかのつながりがある人とのこと。しかし、動画に出る人をたくさん集められるのには理由がありました。

 「よく出てくれているのは梅津翔(かける)( @like_public)さんという俳優です。僕は30代前半までミュージシャンをやっていたのですが、その頃からの知り合いですかね。『戦闘メカ ザブングル』に出てくれたのは、声優・ナレーターのおかだまさたか(@okadamasataka)さん、『機動戦士Zガンダム』に出演したミュージシャンのけいにょー(@km_un_pots)さんの3人がメインでやっています」(ツカーサさん)

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ツカーサさんが「存在感がある」と評する「戦闘メカ ザブングル」の「疾風ザブングル」出演のおかだまさたかさん

 「全く知らない人より、自分の身近な人、多少知っている人とやりたい」というツカーサさんの思いで、友だちや友だちから紹介を受けた人が出演。特にロボットアニメに詳しい人だったり、ファンだったりするわけではないそうです。そんな、アットホームな環境で作る「雑に実写再現」ですが、出演者は不足気味とのこと。

 「収益化していないし、物を作ったり衣装を買ったりとか僕がお金かけてやってるので、出演者にはギャラが出せません。それに、女性の出演者の場合、出番が少なくて『せっかく来たのにそんなにしか出ないんかい』というパターンになってしまうんですよね。だいたい12時には来てもらってるんですけど、お昼ごはんはこっちで出します。ギャラは出せないけどご飯は出すというスタンスです」(ツカーサさん)

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