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嵐の二宮和也さんら投稿で物議の“黒人男性のサプライズ動画” 専門家らが指摘する「ステレオタイプ」の課題(1/3 ページ)

ジャニーズ事務所などに取材しました。

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 ジャニーズ事務所に所属するアイドルグループ・嵐の二宮和也さんが率いるYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」で、黒人男性らが出演する「世界からのサプライズ動画」の動画が使用され、人種差別ではないかなどと批判の声が広がっています。ねとらぼ編集部では、アフリカに関する専門家のほか、同サービスを提供する台湾企業「MIYABI INTERNATIONAL」、ジャニーズ事務所などに取材しました。

※記事のタイトルを変更しました【5月25日1時40分】

画像は写真ACより
ジャにのちゃんねる「#237【2周年!!】私財を投げて自分達で祝おうかとなった日」

 問題の動画には、同チャンネルのメンバーである二宮さんのほか、KAT-TUNの中丸雄一さん、Hey! Say! JUMPの山田涼介さん、Sexy Zoneの菊池風磨さんが出演。黒人男性らに日本語で記念日などを祝ってもらえるWebサービス「世界からのサプライズ動画」を紹介したうえで、実際にジャにのちゃんねるの2周年を祝う動画を依頼し、その動画を紹介するという内容でした。

 同チャンネルでは、横断幕などのオプションを追加したうえで、アフリカ南部のザンビア共和国の黒人男性らが出演する動画を依頼。2週間後、実際に届いた動画を見て、メンバーらは「めちゃくちゃイカつくないですか?」「めちゃめちゃいいカラダしてんな」などと発言し、今後同チャンネルではエンディングに該当動画を流すと説明していました。

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二宮さんのTwitterアカウント

 「世界からのサプライズ動画」という名称のサービスは複数存在しており、以前から国内外でその取り組みを問題視する声が上がっています。英BBCは2017年に中国企業が提供する類似サービスについて、児童労働や搾取などの問題があると報道。加えて、日本国内でも類似サービスについて支援や寄付の不透明性を指摘する声や、動画の内容が黒人男性らを「見世物」にするものであり、人種的なステレオタイプを再生産する差別的なものと批判するも上がっていました。

「上半身裸などアフリカのステレオタイプ的な格好」に問題指摘

 日本国内から黒人差別の問題を訴える「Japan for Black Lives」の代表である川原直実さんは、ねとらぼ編集部の取材に対し、該当動画について、「上半身裸などアフリカのステレオタイプ的な格好をさせられること、彼らにとって『無関係なコメント』を読み上げさせられていること、さらにそれを見た日本人が笑って『消費』すること。どのポイントをとっても人権侵害と言えます」と問題点を指摘しました。

 また、川原さんは日本では過去にもテレビのバラエティ番組で、アフリカ系のタレントを「笑い者」として扱ってきたと言及。これまでの経緯を踏まえ、今回ジャニーズという大手エンターテイメント企業に所属する、二宮さんら有名な芸能人が同サービスを取り扱ったことについて「大問題」と批判しています。

 「テレビや芸能人など著名人の影響力は絶大です。このような映像を子どものころから観ていれば、黒人の方を『笑ってもいい存在』だと思ったり、無自覚的に自分たちより下に見たりしてしまう危険性があります。日本に住むアフリカ系の方々やミックスの子どもたちが多大な迷惑をこうむっていることを、もっと真剣に受け止めなければいけません」(川原さん)

 「二宮さんらが『めちゃくちゃやっぱおもろいな』と言っていたのが印象的でした。サービスを利用するメリットについて、『これでかなり国際色豊かになって』『世界のアクセスも(広がる)』などと言っていましたが、この動画をYouTubeで世界配信することで、国際的な人権感覚の欠如や、倫理観の低さをさらけ出す結果となっています」(川原さん)

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画像はYouTubeより

専門家「アフリカのコミカルな部分だけを『笑いもの』にしている」

 アフリカ地域研究者で、立命館大学国際関係学部の白戸圭一教授は、アフリカを解釈・理解するための知識の枠組み「アフリカ・スキーマ」という概念に言及。多数の日本人は「豊かな日本と貧しいアフリカ」「科学技術が進んでいる日本と進んでいないアフリカ」「衛生概念が進んでいる日本と進んでおらず病気が蔓延しているアフリカ」など、上下関係で言うと「日本のほうが上で、アフリカのほうが下」という認識を暗黙のうちに共有している、と指摘しました。

 一方で、アフリカや人権問題に関心がある日本人には、「アフリカにはこのような日常的に服を着ていない人はいない」「(アフリカには開発途上国が一足飛びに発展する『リープフロッグ現象』が起きており)日本より進んだIT産業がある」といった知識があるため、多くの日本人との間に認識の差異が生まれると話します。

 そのうえで、日本国内にも田舎や都会があるように、アフリカにも多様性があるにもかかわらず、多くの日本人が共有する「日本のほうが上で、アフリカのほうが下」という認識を踏まえ、アフリカのコミカルな部分だけを「笑いもの」として描いていると指摘される、という構図があるのではないかと考察しています。現状の動画では「ステレオタイプの増幅」になっているというのです。

 「世界からのサプライズ動画」の取り組みには改善の余地はないのか。白戸教授は「ステレオタイプの増幅」になっている現状を改善するためには、アフリカの人々をコミカルに笑いの対象にする以外の描き方をしたり、同じサプライズ動画でも歴史ある踊りを取り扱ったりなど、アフリカの多様な面を描く必要性を指摘しました。また、アフリカに限らず白人やニューヨーカーなど世界中の人々もコミカルに取り扱ったりする、といった方法が考えられると提起しています。

 さらに、「こうしたサービスが現地の人に収入をもたらしている」との主張もありますが、貧困問題を重視するのであれば、定期的に平均よりも高い収入が入ってきたり、収入が上がったりするような「持続性」が重視されると言及。加えて、国際援助では「援助依存」や「倫理体系の崩壊」などと向き合ってきたため、そのような歴史を踏まえて、現地の社会への影響も考えられるべきだと訴えました。

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 「例えば、(国際援助として)高いお金を対価に売春をさせることは、社会的にモラルの観点から『お金さえ稼げれば良いのか』と批判されると思います。上半身裸で踊ることはそこまで非倫理的ではないかもしれませんが、動画には伝統芸能や日本のお笑い芸人のような『プロフェッショナリズム』があるのかが気がかりです。ただ日本人にウケそうなことをする人が増えるだけだと、その社会は長期的に倫理やモラルの点でむしばまれていくのではないでしょうか」(白戸教授)

 なお、ねとらぼ編集部では、ジャニーズ事務所にも該当動画に対する見解や対応について電話で問い合わせましたが、担当者が不在として記事執筆時点で回答は得られていません。

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