ニュース

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」レビュー 映画史上ナンバーワンの「密度」と「飢餓感」(2/3 ページ)

「万全の態勢で見てほしい」作品。

advertisement

 そして、「敵は、全て(マルチバース)のスパイダーマン」というキャッチコピー通り、マイルスは別世界のスパイダーマンたちと敵対せざるを得なくなる事態に遭遇し、さらにネタバレ厳禁の衝撃的な展開へとなだれ込む。

 スパイダーマンの映画作品の中でもかなり攻めた作劇がされているともいえるが、とあるセリフが後の展開に呼応しているなど、周到な計算のもとで脚本が書かれていることもわかるだろう。

(C)2023 CTMG. (C) & TM 2023 MARVEL. All Rights Reserved.
<全員スパイダーマン!?>編「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」6秒予告

マルチバースそれぞれの「表現の違い」もすさまじい

 グウェンとマイルス、実質的に2人いる主人公のドラマがたっぷりの尺を使って描かれるからこそ、その後のとんでもないアクションも盛り上がる。糸を伸ばしてビルの間をスイングし、時には360度グルングルンと回るかのような、スパイダーマンの特徴および3DCGを生かした、ド迫力の映像に誰もが圧倒されるだろう。

advertisement
「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」 15秒予告<アクション>編

 前作「スパイダーマン:スパイダーバース」もアメリカンコミック原作だからこその、漫画の表現をそのままアニメ化したような映像が圧巻だったが、本作ではさらなる進化を遂げている。というのも、マルチバースそれぞれの「世界」が前作よりもたっぷり描かれるからこその、それぞれの世界の「表現の違い」もまたすさまじく、もはやアニメの絵というよりも「絵画」が激しく動いているような印象さえある。

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」特別映像<限界のその先へ>

 例えば“スパイダーマン・インディア”が住むのは、特別な模様と色の“曼荼羅(まんだら)”の世界。クリエイティブ・チームは1970年代に出版されたインドのインドラジャル・コミック(インドのコミックシリーズ)にインスピレーションを得ていたそうで、門外漢でも確かにインドっぽさを大いに感じる。それ以外のマルチバースの表現そのものが面白く、時にはあっと驚くサプライズにもなっていて、それだけでクラクラしてしまうほどの衝撃があるのだ。

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』 <スパイダーマン・インディア>

このクリエイターコンビの名前を覚えてほしい

 本作を見た人は、今回は製作と脚本に携わったフィル・ロード&クリス・ミラーというクリエイターコンビのことを、ぜひ覚えていただきたい。過去に監督と脚本を務めた「くもりときどきミートボール」や「LEGO ムービー」も画面内の情報量が半端なものではなく、製作とプロデュースに関わったNetflix配信の「ミッチェル家とマシンの反乱」も「劇場版クレヨンしんちゃん」的なノリでとんでもなく面白い活劇が展開する傑作だった。

「ミッチェル家とマシンの反乱」予告編

 この2人がいてこそ、「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」は情報が隅から隅までぎゅうぎゅうに詰め込まれたバラエティ豊かな映像表現と、もはやドラッギーといえるほどのアクションの快楽と、それでいてサプライズに満ちていながらも計算され尽くされた物語が組み合わさり、かつてない映画体験ができる作品になったと断言できる。だからこそ、追ってフィル・ロード&クリス・ミラーの過去作も見てみてほしいのだ。

「飢餓感」が映画史上ナンバーワン

 そして、この「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」は事前にアナウンスされている通り「前編」だ。この続きは全米で2024年3月29日公開予定(日本では2024年公開とだけアナウンス)の「スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース」まで待たなければいけない。本作への大きすぎる文句は、あまりに衝撃的すぎる物語と映像を目の当たりにしたからこその、「もっと早く続きを見せてくれ! 待ちきれないよ!」と思ってしまうことに他ならない。

advertisement
(C)2023 CTMG. (C) & TM 2023 MARVEL. All Rights Reserved.

 その「飢餓感」は、個人的には「バーフバリ 伝説誕生」からの「バーフバリ 王の帰還」、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」からの「アベンジャーズ/エンドゲーム」をも超えて、映画史上ナンバーワン。それも含めて楽しめる「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」は、最高の環境で楽しめる映画館で見るしかない。かつてないスパイダーマン映画が、あなたを待っている。

ヒナタカ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  3. 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  4. 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. 「マジで復活してくれ」 日清が7年前に終売した「人気カップ麺」→“まさかの現在”に「えっ?」「まじ?!」
  6. 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  7. 「博物館レベルのレア物」 ハードオフに8万8000円で売っていた“驚がくの商品”に騒然 「PS5よりも高い」
  8. 「盲点だった」 丸亀製麺が深夜に投稿した“悪魔的な情報”に思わず二度見
  9. 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  10. 「どうしてそうなった」 コスプレイヤーの「普段」→コスプレの“ありえない振れ幅”に思わず二度見 「ギャップで風邪ひいてる」「同一人物ですか!?」