備蓄は「好きなもの」「普段から食べたくなるもの」が大事―― 防災食の専門家に「ローリングストック」のコツを聞いた(2/3 ページ)
日本災害食学会災害食専門員の今泉マユ子さんに話を聞きました。
―― 「備蓄品」である以前に、「好み」が大切なんですね
今泉 長期保存できるものをしまい込み、いざ食べてみたら口に合わなかったりしたら、食べることがストレスになってしまいます。災害が起きたあとは、日々続く非日常がストレスになりますが、普段と同じ食事をすることで日常を取り戻せることがあります。
小さなお子さんがいるご家庭は、どんなときでも子どもの好きな物が食べられるように備えておいてください。非常時にいつも食べ慣れたみそ汁やスープが1杯あるだけでも、ほっと安心できるものです。例えば、粉末スープやカップスープ、フリーズドライのみそ汁を普段から食べているなら、備蓄さえあればもしものときも同じものが食べられます。災害が起きたそのときに、食べたい味を選べるように、いろいろなバリエーションを置いておくことをおすすめします。
―― ローリングストックを習慣化するためのアドバイスをお願いします
今泉 ローリングストックでは「備える」ことに目が行きがちですが、それ以上に「消費する」ことが肝心です。まず食べて、買い足す――そうしなければローリングストックは習慣化しません。普段の食事を思い浮かべ、使いながら備えられる食材を選ぶようにしましょう。
「食べたい」「食べてみたい」と思わない食品は適していないので、現在「一度も食べたことがない食品」「食べ方が分からない食品」「しまい込んだ食品」が家にある場合は、すぐに食べてみてください。それで気に入ったら、また購入して家に置いておきましょう。
ただし、備え方は十人十色で、「長期保存可能な食品を5年間置いておいて、5年後に食べるのを楽しみにしている」「普段は外食ばかりでローリングストックできないから、長期保存できるものを置いている」というかたもいらっしゃいますし、それでも良いです。災害は急に起こりますから、そのとき家に水と食べ物があることが大事ですので、とにかく「何もない」状態だけは避けましょう。
私の場合はローリングストックに加え、アルファ化米、パンの缶詰など長期保存可能な非常食も取り入れています。ただし、非常食も全て味見して、家族が好きな物を置くようにしています。パンは朝食に、アルファ化米は子どものお弁当に使うなど、「特別なもの」にならないよう普段の食事で食べています。防災に正解はなく、1人1人違うので、いろいろな方法があることを知ったうえで、自分に合う方法で備えてほしいと思います。
関連記事
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.