レビュー

露伴の初恋の決着を目撃せよッ! テレビ初放送・映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」を楽しむ3つのポイント(2/3 ページ)

荒木飛呂彦ワールド入門編に最適ィィィィィーーーッ!

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3.こんなに「優しいヘブンズ・ドアー」は初めてだ

 3つ目に紹介したいのが、一人の大人としてさらに成熟する露伴の姿だ。従来のエピソードは、取材先で出くわした「怪現象」そのものが主人公で、あくまで露伴の役割は狂言まわし。だから、露伴自身の変化にフォーカスしたエピソードも初なのだ。

 今回の映画のキーワードは「後悔」である。もちろん露伴にとっての後悔は、奈々瀬との関係だ。パリへの旅の間も否応なく彼の脳裏に浮かび、その過去が彼の命を奪う「敵」へと姿を変えて襲い掛かってくる。

 しかし、奈々瀬との出会いなくしては、今の露伴はありえなかった。若き日の彼は、担当編集者から、女の子キャラがかわいくないと指摘されていた。当時の露伴はあまり女性に興味がなさそうな様子で、モデルにできるような人が身近にいなかったのかもしれない。

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 そんな折に露伴は奈々瀬と出会い、彼女に似せたキャラを生み出す。これが抜群にかわいいのだ! 思い返せば、同じく漫画家が主人公の漫画『バクマン。』(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)に「マンガ家って結構 自分の理想の女の子をヒロインとして描く」というセリフがあった(第3巻)。

 露伴もきっとそうだ。17歳にして初めて理想の女性と出会い、画力を上げ、魅力的なキャラを描く技術を手に入れた。そして彼は、奈々瀬の分身とともに長い漫画家人生を歩んできたのだ。

 確かに露伴は初恋を成就させられなかった。また、若さゆえに、愛する人の怒りや悲しみを理解する力もなかった。だが、「黒い絵」を探す旅をして、露伴は奈々瀬の正体を知る。彼は、自分にとって彼女はいかなる存在だったのか己に問いかけることで、自分の人生には無駄な経験も、忘れ去るべき過去もなかったんだと悟る。

 高橋一生が、胸中をさらけ出す露伴を熱演する。そして相手を愛おしむように発動するヘブンズ・ドアー。これをぜひとも見てほしい。

実写化不可能回に挑む高橋一生

 あと、「ルーヴルへ行く」に続いて5月10日18時から放送されるテレビドラマ「岸辺露伴は動かない」の最新エピソード「密猟海岸」も要チェックだ。原作漫画の内容からして、奇想天外なプロットを楽しむ回になると予想される。

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 でも筆者は、これは実写化不可能回だと思っていた。もし原作通りにやるなら、露伴が酸素ボンベも無しに海中で死闘を繰り広げるシーンが待っている。……オイオイオイオイオイ、さすがに危ないんじゃないのォ!?

 果たして高橋一生は生きて帰ってこられるのか。ゴールデンウィークにはじまる岸辺露伴祭から目が離せない。

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