「脳波で会話」が当たり前になる?――「脳波で動くネコミミ」仕掛け人が語る、脳波デバイスの未来:シッポもぜひ実用化してほしい(3/4 ページ)
秋葉原でネコミミを10個くらい買ってきた
―― そもそもこれって、どういう仕組みで動いてるんですか?
なかの これは脳から出る微弱電流をセンサーでキャッチして、それを信号として読み取っているんです。
加賀谷 今使ってるのは、ニューロスカイという会社の製品がベースですね。
―― ニューロスカイって、たしか脳波センサーを販売しているところですよね。
なかの 今は協力して、いろいろ一緒にやっています。
―― 集中とリラックスというのは、それぞれどういう風に検知しているんですか?
なかの センサーがキャッチした脳波の中から、ある特定の値をアルゴリズムに従って検出しています。これ自体はニューロスカイの技術なので、私たちは特に手は加えてない。苦労したのは、耳の動きの部分ですね。
神谷 そこは相当チューニングに時間かけたよね。
なかの ホンモノの猫の動きを参考にしつつ、でも一番の優先はやっぱり、見た目のかわいさ。例えばツイッターでいっぱい書かれたんですが、猫の耳が垂れてる状態って、本当はリラックスじゃなくて怯えてる状態なんですよ。でも人間につけた場合は、これがリラックスの表情として一番かわいかった。
加賀谷 ものすごい試行錯誤があった。
なかの 最初はダンボールで型紙を作って、それから秋葉原を回ってネコミミを10種類くらい買ってきて……。
神谷 このへんからなかのさんが本領発揮してたね。
加賀谷 これは素材がよくない! とか言って。
神谷 ネコミミについてはすごい詳しくなりましたよ(笑)。
―― 最終的に、今のこれに落ち着いた決め手は?
なかの ええと……バランス? あんまり色気があってもダメなんですよ。エロコスプレみたいになっちゃう。
―― ああ、なるほど。
加賀谷 確かパソコンに、プロトタイプのころの動画が……あった。
(まだ動力系統がむき出しのネコミミが動いているプロトタイプの動画を観賞)
―― まだこのころはダンボールですね。これはこれでかわいい。
なかの これで実際に動かしてみて、耳が垂れるとかわいいってのが立証されたんですよね。
(また別の動画を再生。耳ではなく、動きをダイレクトに見せるために触覚のようになっている)
―― これはまた別のプロトタイプですね。耳というより……触覚?
加賀谷 ははは(笑)。ネコミミがまだついてなくて、針金だけの状態ですね。
なかの そういえば、動く「アホ毛」を作ってほしいってツイートもありました。
神谷 これ見てると、触覚もアリかもしれないね。
なかの でもモーターが隠せなくなっちゃうので、その扱いをどうするかですね。
―― いろいろ試行錯誤があったんですね。
神谷 こんな感じでスタートしたんです。僕らも久しぶりに見ました(笑)。
2011年中には製品化を目指す
―― 最終的な到達点というのは考えていますか? 例えば「売ってほしい」って声も多いと思うんですが。
加賀谷 売るのは考えてなかったですね。
神谷 新しいコミュニケーションツールを世の中に発表していく、ってのがまず第一で。
加賀谷 あとなかのさんには失礼だけど、実際に脳波に連動させて動かすまでは、これがウケるとは2人とも思ってなかった(笑)。
なかの 失礼な!(笑)
加賀谷 ただ最初の考えではそうだったんですけど、それがいきなりウケちゃったので……。
―― じゃあ、今後もしかすると商品化の可能性も。
神谷 実はすでに動いてます。海外からの問い合わせがものすごくて、じゃあいつ発売するのか、どうすれば商品化できるのか、って話を進めているところですね。
―― 具体的な時期や価格については?
神谷 時期については一応、年内に発売できたらいいな、と。
―― 意外に早い! それは国内での予定ですか?
神谷 いや、まずはワールドワイドで。日本はむしろちょっと遅れるかもしれない。
―― ちなみに価格は……?
神谷 ここはオフレコってことにしてほしいんですけど、たぶんゴニョゴニョ……くらい。
―― 思ってたより安い! ちょっとお金に余裕があって、シャレの分かる人なら買いそう、という感じですね。
なかの もちろんさらにチューニングもしていくので、見た目も今よりもっとかわいくなると思いますよ。
神谷 今はけっこういろんなユニットをごちゃごちゃくっつけてるので、そこは変えていかないとね。
なかの あくまで基本は変えずに、安全性と安定性を高める方向で。
―― 今だと、Androidアプリと連動して使ってますが、製品版では単体で動くようになったりもしますか。
なかの それも検討しています。Android端末がないと使えないってのも厳しいですよね。
―― 公式サイトでは、この「necomimi」が第1弾という書き方をされていましたが、第2弾以降の構想ももうあったりするんですか?
神谷 ありますね。実は四弾くらいまではもう考えています。
加賀谷 そんなにいっぱいあったっけ?
なかの ありますよ! 私が言ってるから間違いないです。大丈夫。
神谷 ははは(笑)。
―― やっぱり「necomimi」と同じく、拡張身体がテーマですか?
神谷 どちらかというと、新しいコミュニケーションツール、という部分が共通テーマですね。ニューロウェアのブランドでいくつかコンセプトを発表していって、ウケるものは商品化していくという方針です。
―― 発表についてはまだ先に?
加賀谷 まずは「necomimi」がひととおり固まってから、ようやく次に進めるという感じですかね。
なかの でもほら、あれはそろそろ出さないと。
神谷 夏頃には、たぶん新しい動画を出せると思います。
―― おお! 楽しみにしています。
いずれは「脳波を使っていることを感じさせない」方向に
―― 少し「necomimi」からは離れますが、「脳波」を使ったデバイスが注目される一方で、本当に実用的かと言われるとなかなか難しい部分もある。そのあたりは実際に試してみて、どのように感じましたか。
加賀谷 例えば医療や研究開発といった分野で活用しようとすると、どうしてもそれなりの精度が求められる。だけど一昨年くらいから、マインドフレックスのように、脳波がゲームやエンターテイメント目的で使われるようになってきた。こういう分野なら商品化はしやすいと思いましたね。
―― 確かにジョークグッズ的な扱いであれば、「いまリラックスしてないのに!」って怒る人もいない。
なかの いないですね(笑)。
―― ちなみに「necomimi」について言うと、そのあたりの精度ってどうですか?
神谷 現場で体験してもらって分かったのは、けっこう個人差があるということ。脳波って出やすい人と出にくい人がいるんです。ずーっと集中しっぱなしで、なかなかリラックスできない人とか。
なかの でもその人がリラックスしてないわけじゃなくて、脳波の強さの問題なんですよ。
―― ボーダーラインが人によって違うと。
なかの そうそう。ただ使う人が増えれば増えるほどサンプルが溜まって精度は上がっていくので、そういう意味ではこれから伸びていく分野だと思います。
加賀谷 あとデバイスのコストが下がってきたのは大きいよね。僕らがいま使っているヘッドセットって、アメリカでは99ドルとかで売られてるんですよ。医療用の脳波計なんかに比べると数百分の1くらい。これくらい値段が下がってくると「necomimi」のように、これまで脳波とまったくリンクしなかったものがリンクするようになってくる。
―― あと「脳波」がもっと普及していくにあたっては、何が必要だと思いますか。
なかの 今はどうしても専用のデバイスを装着しなきゃいけないんですが、それが何かに組み込まれていくことで、もっと普及していく気はします。
加賀谷 将来的には、もっと目立たないところで取るようになっていくと思う。自分がいま脳波を取っているとか、脳波を使っているとか感じさせない。爆発的に普及するためにはそのフェーズまでいかないとダメで、それまでにあと1回、価格のブレイクスルーがあると僕は思ってる。
―― 確かに3Dテレビなんかを見ても、いちいち3Dメガネをかけるのが面倒、って声はけっこうありますしね。
加賀谷 例えばこういうのはどうですか。
―― なんですか。
加賀谷 まくら。
―― まくら!
加賀谷 iPhoneアプリで「SleepCycle」(※)ってありますよね。あんな感じで日常生活の中に見えないように入ってくる。
―― 確かに、いつのまにか頭の中を覗かれてるって意味では、近い。
神谷 そっちの方がきっと普及する。あとはさっきも言いましたが、エンターテイメント。ゲームなんかは相性がいいと思いますね。
―― 近いアイデアはすでにありますよね。任天堂はWiiでバイタルセンサー(心拍計)を使おうとしてますし、Kinectもカメラがあるから、そのうちきっとプレイヤーの表情を取り込むようになっていく。
なかの 表情なら自分でコントロールできるので、ゲームには合いそうですよね。脳波の場合はコントロールできないから、意図しない方向にどんどんいっちゃうのが面白い。合わせ技だとすごいことになるかも。
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