日本橋から出発する新クルーズ 隅田川からスカイツリーを眺めてきた
日本橋を出船し、スカイツリーを眺めながら隅田川を川上りする新たなクルーズコースが今秋誕生する。新船「カワセミ号」のお披露目を兼ねて、関係者向けに体験クルーズが行われた。
東京・日本橋に「船着き場」があるのをご存じだろうか。2011年4月、江戸時代の舟運都市としての機能をよみがえらせようと、日本橋のたもとに作られたものだ。6月29日、この船着き場から出発し、隅田川を北上してスカイツリーを眺める新たなクルーズコースのお披露目会が行われた。
クルーズは、水上バスを運行する東京水辺ラインの新船「カワセミ号」で行う。コースは日本橋から浅草まで北上し、支流の小名木川などを巡り日本橋に戻るというもの。国土交通省の運航許可が下りるのを待っている段階のため、途中の船着き場や詳細なコースは未定となっているが、9月以降に1日5便の運行を予定している。
お披露目会では、日本橋を出て隅田川を北上し、浅草でスカイツリーを眺めた後、両国船着き場を経由して小名木川を巡り、日本橋に戻るというコースが組まれた。報道関係者は浜町からの乗船となり、所要時間は1時間ほどだった。
完成したばかりの「カワセミ号」登場
体験クルーズに先立って、浜町船着き場がある隅田川テラスで「両国の川開き」が行われた。「両国の川開き」は享保(きょうほう)18年(1733年)に、水難で亡くなった人の霊を弔う「川施餓鬼」を目的として始まり、後に花火を上げる行事になった。今回、約100年前から途絶えていたこの行事を再開し、神田明神による安全祈願を行った。
川開きの後、カワセミ号は関係者を乗せ、浜町船着き場から浅草を目指して出発した。6月20日に完成し、28日に進水したばかりの文字通りの新船で、最大搭載人員は72人(旅客70人)。狭い運河や支川を運行するため、水面からの高さは最大2.1メートルと通常の水上バスより低く作られている。
船は日本橋船着き場から日本橋川を下って隅田川に合流し、北上する。隅田川の川上りは江戸時代に人気のあった舟遊びのコースで、浅草寺に観光で向かったり、吉原に向かったりする客が利用していたという。29日も暑い1日となったが、川上からの涼しい風と少しずつ近づいてくるスカイツリーへのわくわく感が暑さを忘れさせてくれた。
何かに似ているように見えるアサヒビール本社ビルの「炎のオブジェ」とスカイツリーとの共演を楽しむと、そろそろ折り返し地点の浅草船着き場だ。ここまで来るとスカイツリーの手前にビルがなくなり、開けた空とともに完成間近の巨大タワーを眺めることができる。
浅草で折り返して隅田川を下り、両国船着き場を経由した後、支流の小名木川へ。新小名木川水門をくぐり、高橋船着き場で折り返す。筆者は江東区で生まれ育ち、子どものころに小名木川を通る水上バスをよく利用していたので、懐かしい気持ちに浸ることができた。
隅田川に戻ると、清洲橋、隅田川大橋をくぐり、永代橋の手前で右に曲がって日本橋川に入る。ここには最大の難関である豊海橋が待ち構えていた。橋の高さが極端に低いため、船の屋上にいたスタッフが船内に退避する。近づけば近づくほど分かるその低さに、スタッフから「ギリギリだなあ」という声が漏れ、船に緊張感が走る。無事に通り抜けられそうだと分かると、乗客からは拍手が起こった。
豊海橋から日本橋までは10分ほど。首都高の下を流れる日本橋川を上っていく。日本橋や茅場町はよく訪れるのだが、船から眺めると初めて来る場所のように感じられる。川に沿って建つ建物の壁面にレトロな感じを受けたりと、とても新鮮な体験ができた。途中、ボートの練習をしていた学生たちが見慣れない船に驚いていたようだった。
終点の日本橋船着き場は道路元標がある日本橋のたもと。見慣れない船がやって来たと、橋を渡る人たちが足を止めていた。
「カワセミ号」は進水して2日目ということもあり、近くを船が通ると水しぶきが船内まで入ってきてしまったり、水上バス用の船着き場では段差がありすぎて乗り降りが難しかったりと、今回の体験クルーズで問題点も見つかった。定期便に向けて、より利用しやすくなるよう改善していくという。ちなみに、日本橋は今年が架橋100周年。夏は「ECO EDO 日本橋 2011〜江戸に学ぶ心の涼」と題して、さまざまなイベントが企画されており、7月15日からは日本橋川を遊覧するイベント(使用する船は「第三大江戸丸」)も行われる予定だ。
※記事で紹介しきれなかった体験クルーズの写真と動画をねとらぼのFacebookページで公開しています。ぜひ、こちらもご覧ください。
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