はてな近藤社長、創業10周年を語る 「回り道もあったけど……いよいよ攻めに」

はてなが設立10周年を迎えた。新しいサービスのネタを考えるのが「大好き」と少年のような笑顔を見せる近藤社長は、これまでとこれからの10年をどのように見つめているのだろうか。

» 2011年07月15日 16時55分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 近藤社長

 はてなが7月15日に設立10周年を迎えた。たった3人の社員でスタートし、現在は48人に。アルバイトも含めると100人近いスタッフを抱える大所帯となった。一方、新しいサービスのネタを考えるのが「大好き」と話す近藤淳也社長の少年のような笑顔は、創業当時から何も変わっていなさそうだ。

 「10年を振り返ってほしい」とお願いしたら、「10年といっても4つの時期があったな〜」としみじみ語り始めた。京都で産声を上げ、東京、シリコンバレーを経て、2008年に再び京都へ。「移転するたびに組織は強くなってきた」という。では、これからの10年はどうなっていくのか――近藤社長に聞いた。

回り道もあったけど……いよいよ攻めに

 創業後3年間は受託開発をしていたはてな。「他社からお金をもらって自社の儲からないサービスを運営している状態だった」と振り返る。東京に移転したのは04年で、社員が20人ほどになったころ。受託開発をやめて、自社のWebサービス専業となり「サービス量産期」に入っていた。

 順風満帆かと思いきや、近藤社長にはあせりもあったようだ。「新しいブレイクスルーをつかめてないなって。だから本気で世界を目指すためシリコンバレーに行ったんです」。だが「日本の京都から、世界に通用するネットサービスを作りたい」と、1年半で帰国。創業の地・京都へ戻って「まだ3年目」だ。

 「回り道をしたが、はてなという会社のあるべき姿は見えてきた。移転するたび社員が減ったりもしたが、今は京都に腰を据えると心に決めているので、採用を積極的にやって体制を立て直して、ようやく地盤固めが出来たと思う。会社が組織として経験を積んできているし、いよいよ攻めに転じようかなと」

 攻めの姿勢とはどういうものか。近藤社長は「はてなの真骨頂は新しいサービスをどんどん出していくこと。年内に3つくらいは新しいサービスを出したい」と意欲的だ。新サービスの内容は明かさなかったが、コミュニケーションの要素を取り入れたものになるという。

 「はてなは人と人とのコミュニケーションを促進し、価値ある情報をより多くの人に届けることを使命としています」――はてなのミッションというページで公開している思いを、新サービスにも反映させていきたい考えだ。

世界を目指して――はてなに足りないもの

画像

 ディー・エヌ・エーやグリーが海外の企業を買収することで海外進出を強化しているのを見て「日本企業の海外進出が新しいフェーズに入った」と感じるという。

 もちろん近藤社長自身も「世界中の人に使われるサービスを作りたい」という思いを持ち続けている。では、世界を目指す上ではてなに今足りないものとは何なのか。「コミュニケーション能力ですかね。アイデアや開発力はシリコンバレーと変わらないと思っている」と分析する。

 近藤社長いわく「今のネットの世界はユニークネス(独自性)の勝負」だ。「昔は米国で流行したサービスをいち早く日本に持ってきてローカライズすればヒットするという時期があったが、FacebookやTwitterのように海外サービスを一般の人が使い始めるようになると、時間差攻撃では戦えない。これからは、世の中にない新しいものを考えて、『面白いでしょ?』『使ってみません?』って提案する――そういう勝負になるんだと思う」

 はてなを「自分たちで考える集団」と表現する。「“はてなしかやらない”ものがある。悪く言えば、考えすぎて動きが遅いかもしれないが、そういう(自分たちで考える)強みはこれから活かしていけるんじゃないか」と見ている。

 はてなの新卒採用試験では、新しいサービスのアイデアを学生に考えてもらうグループディスカッションを実施している。「学生でも面白いアイデアが出てくるんですよ! 要は作るかどうかと、毎日アイデアを考える習慣を持てるかどうかじゃないかな。僕も新しいサービスを考えるのが大好きなんです!」

10年先のネット「分からない!」

 「10年先のネットはどうなると思う?」と尋ねると、「10年先かあ。分からない!」と笑う。「3年くらい先までを予想すると、スマートフォンが一気に普及しているだろうから、そこをどうやって活かすかですよね。変化のタイミングを活かしたサービスを出したい」

 「これまでなかったようなものを打ち出して、みんなをうならせて、『京都でそんなことやってるんですか!』って驚かせたい。『はてなは京都にこもって何をやってるのかな〜』と期待の目があることを感じているので、期待を超えるアウトプットを出していきたい」

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