コラム
» 2011年07月28日 19時51分 公開

“奇跡の開催”はいかにして実現したか――初音ミク米国公演への道のりを語る(1/2 ページ)

5000人を集め、盛況のうちに終わった初音ミクの米国コンサート。開催までの道のりを、招聘に関わったAnime Expoのスタッフが語る。

[正木良明,ITmedia]

7月初めにロサンゼルスで開催され、海外のボーカロイドファンを沸かせたAnime Expoの初音ミク米国コンサートがいかにして実現したのかを、同イベントのスタッフで、コンサート招聘に関わった正木良明氏が振り返る。


 何もかも異例の事態だった。Anime Expo始まって以来の開催前のチケット完売、実在しないアーティストのコンサート、スタッフにチケット購入を控えるように伝えた連絡メール――経験したことのないことばかりの連続だった。

 過去、何度もコンサートを観て来たノキアシアターではあったが、この広場前の熱気の凄さはいったい何なのだろう。6年間Anime Expoに参加しているが、こんな現象は見たことがなかった。開場前の興奮に満ち満ちた広場で入場列に並びながら、少し前のことを思い出していた。

始まりは2010年

 「アメリカに初音ミクのコンサートを呼びたいが、どうすればいいと思う?」――そんな問い合わせを最初に受けたのは、2010年のまだ寒さの残る3月中旬ごろだったと記憶している。

 その年の3月9日に開催され、成功を収めたミクのソロコンサート「ミクの日感謝祭」のことを知ったAnime Expoの上司からの相談だった。同イベントで過去に2度、ボーカロイド文化をアメリカに紹介するファンパネルを企画して開催した縁で、わたしに白羽の矢が立てられた。それが始まりだった。

 早速実現に向けて動き出したが、スムーズには進まなかった。当初は3月末に開催の「東京国際アニメフェア」の視察に来日したAnime Expo幹部と計画を練る予定だったが、あまりにも急な話だったことなどから、打ち合わせは一旦延期となった。また、私自身コンサートについて相談する窓口も分からず、まずは交渉先を見つけることからのスタートとなった。

 おそらく当時、すでにミクへの海外からの問い合わせやオファーはあったことだろう。だが北米最大のアニメコンベンションとして、ほかの国よりも先に開催したいとAnime Expoスタッフみんなが強く願っていた。

開催を阻んだ問題

 その後招聘に向けた交渉に入ることはできたが、その際に一番大きな問題となったのは、やはり開催予算をどう捻出するかだった。Anime Expo側も、コンサートの規模がどの程度になるか予想も付いていなかった。結局、2011年の開催に際してはスポンサーをつけることになった。

 また、日本から歌手を招いてコンサートを開く場合、ゲストがバンドや小規模の楽団以外は、カラオケ音源を使うのが普通だ。生の音が入るのは、ゲスト自身がピアノを弾いたり、ギターを弾きながら歌うときくらい。ミクのコンサートも、当初はディラッドボードに映像だけを映し、音源はカラオケを使う案もあった。それではあのコンサートの魅力が半減してしまうので、反対したことを覚えている。

 関係省庁(クールジャパン関連など)に資金援助を求めてみよう。アメリカで調達できるもので何とかしよう――。方々にアイデアを求め、いろいろと案を出したが、広告代理店やプロモーターなどの専門家を通さずに簡単に行えるものではなかった。結局、話し合いは結論が出ず、Anime Expoへの招聘活動は終わることになった。気がつけば、桜の葉が落ちる季節になっていた。

 一旦頓挫した計画だが、その後、アスキーによる北米コンサート企画がAnime Expoに持ちかけられ、再び実現に向かい始めた。Anime Expoは当初から誘致する意向があり、先の招聘活動もあって、より具体的な開催に向けた話し合いが再開した。スポンサーをつけることで費用面の問題も解決し、開催に漕ぎ着けることになった。

 2011年、再び桜が咲く季節を迎えたころに、日本での最終打ち合わせが行われた。その前日、来日したAnime Expo側の交渉担当者らと秋葉原を散策し、居酒屋で酒を酌み交わしながら話をしたことを覚えている。交渉担当のエンターテインメント部長は50代前半のアメリカ人で、巡音ルカが好きなボーカロイド音楽ファン。特に「minato(流星P)」がお気に入りで、アキバのショップで同人版CDを買おうとしていたほどだ(結局売り切れで、代わりに商業版を買って溜飲を下げていた)。

 「本当に何千人もの人を呼ぶことができるのか少し心配なのだけど、正直どう思いますか?」。そう聞いたわたしに、彼は茶目っ気をたっぷりに、そして自信を持ってこう答えてくれた。「大丈夫だよマサ! 何にも心配することはないよ、ぜったい大丈夫だから」

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