福岡から大宮へ15時間! 伝説の「はかた号」を越える新生「キング・オブ・深夜バス」はどれくらいエクストリームなのか試してみた:最後は謎の感動(4/4 ページ)
午前8時45分(足柄サービスエリア)
足柄サービスエリアに到着。ここで9時まで休憩を取るとのこと。わずか10分ちょっととは言え、久しぶりにバスの外に出られる! バスから降りると、ひんやりとした新鮮な空気が心地よい。背伸びをすると、体中がバキバキときしんだ。
さっき買った単三電池4本はもう使い切ってしまったので、まずは売店で電池を補充。足柄はかなり大きなサービスエリアで フードコート内にはマクドナルドもある。「揚げたてのフライドポテト!」と一瞬逆上しかけるも、車内をポテト臭を充満させてしまいそうだったのでガマンした。かわりに、以前テレビ番組で紹介されていた「しぞーか(静岡)おでん」を購入。
午前9時55分(横浜)
高速道路を降りて一般道へ。おっ、と思っていると乗務員さんから「まもなく横浜YCATに到着します」とのアナウンス。YCATを「ワイキャット」と読むことをはじめて知った。
横浜では若い女の子ばかり数人、ぞろぞろとバスを降りていった。きっとライブかコンサートでもあったんじゃないか、と勝手に推測する。新幹線で行くお金はないけど、深夜バスなら――。そういう人たちをすくい上げる「網」として、深夜バスが機能しているのなら、それはステキなことだなあ、とぼんやり考えた。
そして博多を発ってからおよそ14時間。とうとうバスは神奈川との県境を越え、東京都へと突入していくのだった。
午前10時50分(東京・水道橋)
ふと窓の外に目を向けると、見慣れた建物や看板がちらほら。地図で確認してみると、バスはすでに東京のド真ん中、千代田区のあたりを走っていた。竹橋のジャンクションを通過して、神保町、水道橋と少しずつ北上していく。本当に博多からここまでバスで来てしまったことに胸が熱くなる。
ところでこのへん、なにげにウチの近所なんですけど、ここで降ろしてもらえませんかね……。
午前11時00分(東京・池袋)
午前11時ぴったりに池袋東口に到着。ここでもパラパラと何人か降りていった。あと車内に残っているのは5〜6組くらいだろうか。本来なら僕もここで降りるところだが、今回は終点の大宮まで行かなければならない。今さらながらに、どんな罰ゲームだ、と思う。
午前11時40分(大宮)
乗務員さんから最後のアナウンス。間もなく大宮に到着します、とのこと。
ここまで愛用してきた空気枕のエアーを抜く。正直、これがあるとないとでは、かなり快適さが違っていたと思う。足もスリッパから靴に履き替え、降りる準備を整える。そういえば、足柄サービスエリアで休憩をとったあたりから、尻の痛さはそんなに気にならなくなっていた。
首都高速を降りてしばらく一般道を走る。大きな交差点をひとつ曲がると、大宮駅の建物がいきなり視界に飛び込んできた。ロータリーの手前でスピードを落とし、バスはゆるゆると左側へ寄っていく。そして午前11時45分、ようやく大宮駅に到着! 乗車時間は15時間35分。当初の予定より25分遅れでの到着となった。
バスにはバスの良さがある
約15時間半のバスの旅。あらためて振り返ってみると、実はそれほど悪いものではなかったように思う。もちろん、隣の席が空いていたおかげで、実質2座席を独占できたおかげもあったが……。
楽しいことも多かった。オレンジの車内灯に照らされながら食べたパンの味。夜明け前に見た伊勢湾自動車道の夜景。富士川で見た、雲の帽子をかぶった雄大な富士山の姿。深夜の「逆ウラシマ現象」時間帯は確かにキツかったが、Twitterでこまめにつぶやいていたこともあって、それほど退屈することはなかった。機会があればまたライオンズエクスプレスに乗って、今度はもつ鍋を食べに福岡まで行こう、と思った。
走り去っていくバスの後ろ姿を見ながら、僕は奇妙な充実感と、一抹の寂しさを憶えていた。3時間半で来られる新幹線もいいが、15時間かけて乗るバスにもまた違った味わいがあることが分かった。さーて、それじゃあ大宮から東京まで帰るか!
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