いいね!の気持ちをコーヒー1杯に託そう KDDIも注目する「giftee」、ソーシャルギフトの挑戦(2/2 ページ)
開発は順調! しかし……
太田代表は、慶応義塾大学を卒業後、コンサルティング会社のアクセンチュアでエンジニアとして3年間働いていた。サービスのアイデアが生まれたのは2009年の秋ごろ。SNSで友人に誕生日メッセージを送る際「何かちょっとでもギフトを乗せてメッセージを送れたら」と思ったのがきっかけだった。
早速同僚のエンジニア2人に声をかけ、終業後や休日の時間を割いて徐々にプロトタイプを作った。学生時代からシリコンバレーに憧れ、「いつかは起業したい」と思っていた太田代表。プロトタイプのブラッシュアップと起業の後ろ盾を得るため、2010年4月にデジタルガレージグループのスタートアップ育成プログラム「Open Network Lab」のビジネスアイデアコンテストに応募し、全80チームの中から見事最優秀賞に選ばれた。
太田代表はアクセンチュアを退職し、2010年7月にOpen Network Labの1期生に。同プログラムの指導の下、プロトタイプの改良と起業の準備に明け暮れた。1カ月後には会社を設立し、代表取締役に就任。「そこまで開発が得意ではなかった」という太田代表はプログラミングから手を引いてマネジメントや営業を担当することにし、エンジニアが開発に専念できる環境を整えた。
gifteeはその冬には周りの友人に限定公開した。ユーザーは「自分たちの仮説通りにすべて動いた」ため、いよいよ社員全員で本腰を入れて働くことに。「うまくいくと思っていた」。
チップのようにカジュアルに gifteeは「かっこつけすぎない」
昨年3月にオープンβ版を公開するも、ユーザーがなかなか増えず苦しんだ。ギフトの登録店舗が18件と少なかったことや、gifteeを初めて使う人やネットに慣れていない人にとっては使いづらいユーザーインタフェースだったためと太田代表は見ている。その後、精力的な営業で店舗を数十件まで増やし、サイトの説明文をより詳しくするといった対策を講じたが、半年たっても効果は今ひとつだった。
ここで太田代表は気付く。実は最もネックになっているのが「外国に比べ日本では日常的にちょっとしたプレゼントを贈る文化が薄いからでは」と。もちろん記念日に家族や恋人へプレゼントを贈る文化なら日本にもある。だが、会社の同僚や友だち、知り合いなどを含めて考えると「日々のコミュニケーションとして日常的にプレゼントする文化はほとんどない」。それでもgifteeを「チップを渡すくらいのカジュアルな感覚で使ってもらいたい」と語る。
例えば一部のコアなユーザーはこんな使い方をしている。同僚に「プレゼンの手伝いありがとう」とビールを、落ち込んでいたら「ちょっと休んだら?」とコーヒーを、Facebookで知り合いの交際ステータスが婚約中に変わったら「おめでとう」とケーキをプレゼント。「変にかっこつけすぎず使える」と気に入って、週1回のペースで利用している人もいるそうだ。
目標は年内に10万会員
SNSで日常的にプレゼントを贈る文化を根付かせるには、「まずはgifteeを認知してもらわなければ」と太田代表。サービスをたくさんの人に利用してもらうことで、その文化の良さを広めていこうと意気込んでいる。
スタートアップ企業を支援するKDDIのプロジェクト「KDDI∞Labo(ムゲンラボ)」にも昨年9月から参加している。当初は「KDDIの恩恵にあずかり、少し話題になって露出が増える」程度の効果を予想していたが、優秀なサービスとして評価され、KDDIから1000万円の出資を受けることができた。今後は「大きなユーザーベースを持っているKDDIと組んで、(gifteeに)多くのユーザーを流し込めるものを作れないか」と野望を語る。
現在会員数は5000人だが、年内には10万人と高い目標を掲げている。3月にはgifteeが使えるお店を全国展開。iPhone・Androidアプリもリリースして、弾みをつけていくつもりだ。収益はgifteeのギフトが使用された場合の手数料で得ており、現状は赤字の状態。今後は、企業がgifteeに特設のギフトページを公開できるタイアップパッケージを用意し、売り上げの拡大を目指す方針だ。
サイトのスローガンは「Send a small thank you」。「インターネットには、ほんとに小さな感謝やお祝いの気持ちを送るタイミングがたくさんある」と話す。その気持ちに「ちょっとしたギフトを付けて、たくさんの人を喜ばすことができたら」と、太田代表の夢は膨らんでいる。
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