君も仏にならないか! 観音コスプレで練り歩く謎の集まり「三十三間堂プロジェクト」に潜入してみた:知らぬが仏?(2/2 ページ)
仏像顔メイクに呆気にとられる参加者たち
まずアイライナーで、目を切れ長に見せていく。黒くて太い線で目を囲い、いつもの3倍くらい大きく見せよう。TETTAさんが試しに参加者の1人に手本を描くと、「えっ、そこまでやるの!?」とみんな呆気に取られた表情をしている。恥ずかしがって、ちょっと濃いメイク程度のアイラインを引いてしまう人が多いなか、TETTAさんは容赦なく「あーもっと思いっ切りいきましょう」と仏の目を描きに行く。されるがままの参加者たち……。
次は描いた目の周りに、鮮やかな赤や青、緑といったアイシャドウを濃くのせる。ラメの付いたバサバサなつけまつ毛を装着し、“おてもやん”のような濃いチークも入れる。最初は派手なメイクに戸惑っていた参加者も吹っ切れたのか「なんかセキセイインコみたい」「宝塚入れそうだよね」「テンション上がってきた」と楽しみだす。互いに顔を見合わせて笑ったり、写メを撮り合ったりとなんだかいい雰囲気。中にはペアになって化粧をし合う人もいた。
「仏度」を上げるために下まぶたにラメを、額や鼻筋にハイライトを入れ、濃い赤やピンクの口紅で「ぽってり」とした唇を描く。これで仏メイクの完成だ。最後にTETTAさん特製の冠を頭に装着し、それぞれ持参したエスニックなストールを巻くとより「仏感」がアップした。この一部始終をそばで見守った記者。同じ空間に仏(の格好をした人々)がいるのに慣れてきた。それと同時に、普通の格好をしている自分に違和感を覚え始めた。あれ……おかしいぞ?
ここまでメイクにかかった時間は2時間。次は写真を撮影する。ちなみに仏教では人間の顔の左側が本性、右側が外面を表すと言われており、仏像の顔には本来の右側が描かれておらず、左側を反転させて左右対称に描いている。そのため、撮った写真は後日TETTAさんが合成加工し「仏像顔」を完成させるというこだわりっぷりだ。こうして727番までの仏像顔が出来上がることとなった。
さてワークショップはひと通り終了だが、化粧をしたままの状態で会場の外へ出かけるお楽しみが用意されていた。TETTAさんが「さてお出かけしますか!」と声をかけると「今日はちょっと予定があって……」と続々と脱落者が出てしまう。ま、まあ予定があるなら仕方ないよね。しょんぼりしつつも、残った参加者2人とTETTAさんと記者の4人で、秋葉原の町へ繰り出すことになった。
か、感じる……周りからの視線
か、感じる……周りからの視線。会場の外へ1歩出てみると、みんながこちらを見ている気がする。だが、誰かと目が合うわけでもないし反応もしてくれない。ははーん、さては突然現れた仏を前に恐れ多くて影からこっそり見てるんだな。そんな遠慮しなくて良いのにっ。
風が強く寒かったため、一行はタリーズコーヒーで暖を取ることにした。仏といえど寒さは身に堪えるのだ。店員さんが一瞬目を丸くしていたような気がするが、何事もなかったかのように「ご注文をどうぞ」と普通に対応してくれる。席が埋まっていたため、注文はテイクアウトで。うう、うまい。コーヒーがあれば極楽浄土に行ける気がする。
秋葉原の歩行者天国に到着すると、一行は徐々にはしゃぎ始めた。道路で菩薩のポーズを取ったり、階段を駆け上がってみたり、木の影に隠れて瞑想してみたり。仏を演じるのが楽しくなってきたようだ。一方、記者はなぜか清々しい気分に。コスプレとは言え、見た目が仏様の集団に囲まれていたため、うっかり癒されてしまった(?)のかもしれない。
ワークショップ自体の収益はほとんど無いが「(参加者が)仏に変装しはっちゃけることでリフレッシュし、疲れたり悩んだりしていても『これでいいのだ』と楽な気持ちになってもらえたら嬉しいです」とTETTAさんは仏のような笑顔で語る。将来的には集めた写真を本やアプリにしてアーカイブとして残しつつ、京都でオマージュ作品の展示会を開くのを目標にしている。
今後も都内を中心にワークショップは開催される。参加には予約が必要で、直近ではアーツ千代田3331で2月5日、12日に開かれる。参加費は2500円(写真代を含む)。このほか居酒屋や小学校などでも実施予定となっている。この記事を読んで気になった方は参加してみてはいかがだろうか?
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