17人入っても大丈夫なバッグ? ホテルのドアを開けて楽しむ「JAMIN PUECH」展示:デザイナーの頭の中を覗き見
大きくなって初めてその緻密で堅実な仕事ぶりが分かることもある。大きすぎるバッグをはじめ、ホテルの扉を開けるとそこには“旅”が広がっていた。
女性のバッグには、物を入れて持ち歩く以外にも、その美しさで自分のファッションを引き立ててくれるアクセサリー的な役割がある。その代表格がフランスのバッグブランド「JAMIN PUECH」(ジャマン・ピュエッシュ)。ブノア・ジャマンとイザベル・マリー・ピュエッシュという2人のデザイナーが、皮小物には使われることが少なかった素材を使用したり、職人芸を極めたアート作品のようなバッグを作るブランドだ。
シャネルのプレタポルテのバッグを4シーズンに渡って制作するなど、ラグジュアリーブランドからの引き合いもある人気デザイナーデュオが、昨年20周年を迎えた。
それを記念し、5月9日より渋谷のパルコパート1にて、これまでのコレクションで発表してきたなかから印象的な作品300点超を集めた展示がスタートしている。しかも、小さめのアート作品のようなバッグのブランドが、人間がそのまま入ることができるほど巨大なバッグを展示しているらしい。巨大な○○というと、どうもギネスブック級のものばかりが思い浮かぶが、これはいかなるものなのか? 気になって見に行ってきた。
今回の展示のタイトルは「JAMIN PUECH 20ans -chambre 7385 svp-」。ブランドスタートから20年、7385日目の軌跡を「JAMIN PUECHの旅」とし、会場には5つの部屋を構えた「HOTEL JAMIN PUECH」を創り上げている。この展示について、デザイナーの1人、ブノワ・ジャマンさんに話を聞いた。
―― なぜ今回のような展示をしようと?
ブノワ 私たち自身も大変旅行をして、色々なホテルに泊まるのですが、「日本で20周年で何かやらないか?」と考えたときに、自分たちが体験することをそのまま体験していただこうということで、ホテルが思い浮かびました。旅をして扉を開けると、そこに1つの世界観がある。1つ1つの部屋ごとに違う世界観を見ていただいて、自分たちがしている旅行というものを体験してもらいたかったのです。
―― 巨大なバッグの部屋がありますが、なぜ作ろうと思ったのですか?
ブノワ 「Honu(オニュ)」という定番のバッグなのですが、1つのバッグを完成させるためにはすべて手作業で40時間ほどかかります。その工程を紹介したいというのがまずありました。そして、フランスではバッグについて「これが自分の家すべてだ」と表現する女性がいます。これは自分が必要なものがすべてここに入れて、持ち歩いているという意味なのですが、ふと「そこに自分が入ったらどうなんだろう?」と思いつきました。実際のバッグと同じデザインで、同様に手作業で52平方メートルの牛革を使用して作りました。実際にあの巨大サイズのバッグには、17人もの人が入れますよ(笑)。
―― ファッションブランドの記念企画というと年代別に並べてシーズンごとのトレンドを見せる展示が多いと思うのですが。
ブノワ その年代別に並べるというのは、一番やりたくないことでした。この展示をして自分でも気が付いたのですが、20年前のバッグがあるテーマのなかで集められた最近のものと一緒に出ても遜色なく合うのです。これは、歴史は続いていくのだ、ということでもあります。この展示では、あなたがホテルに行く時と同じように、好きな扉を開けて、新しい空間で理解しようとするのではなく、ただ楽しんでほしいですね。
さて、肝心のバッグだが、それは会場の中ほどの一室にあった。
もちろん、実際にバッグの中に入ることはできない。そもそも、「バッグの中に何人入れるのか?」という話を聞いたのは、私が初めてだったようだ。17人、確かに入れそうだが、かっちり枠のあるバッグではないので、17人集めてお願いしてみてもあまり快適ではなさそうだ。しかし、巨大化されたことによりよく分かるのだが、その職人技がすごい。縫い目の細かさなどを、同じ部屋に展示されている実サイズのバッグと比較しながら見てほしい。
そのほかの部屋も、ホテル仕様。テーマ別になっている部屋のほか、掃除用具入れや食事を運ぶエレベーターを作ったコーナーにもバッグを展示している。
16日まで開催されている。入場料は無料。
「JAMIN PUECH 20ans −chambre 7385 svp−」
- 期間:2012年5月9日(水)〜5月16日(水)
- 会場:渋谷PARCO PART-1 6F パルコファクトリー
- 住所:〒150-8377 東京都渋谷区宇田川町15-1
- 開場時間:午前10時〜午後9時
- 後援:在日フランス大使館 企業振興部−ユビフランス
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