思わずクリック! ノベルゲーム風の読み進めるバナー「アドスフィア」って知ってる?東浩紀さんのゲンロンも採用(2/2 ページ)

» 2012年08月08日 11時00分 公開
[高橋史彦ITmedia]
前のページへ 1|2       

ノベルゲームへの熱い思い

――参考にしたサービスはありますか。

笠井 美少女ゲーム業界にはバナーキャンペーンという習慣があります。メーカーがソフトの発売前にバナーを公開して、それを各自のサイトに設置すると、特典をもらえるといった仕組みです。コミュニティー的な価値観の元で成り立っていて、大元の着想はここですね。バナーキャンペーンでゲームの体験版が遊べたらアツくないですか。

画像 笠井翔さん

――笠井さん、美少女ゲームやノベルゲームへの思い入れが深いですね。

笠井 初めてノベルゲームを体験したのは中学2年の時でした。僕はそれまでほとんど本を読んでこなかったんです。それが「Kanon」や「AIR」をプレイすることで世界が変わって、以降、文章が読めるようになったんです。ノベルゲームがなかったら、全く文字が読めなかったかもしれないので、思い入れは強いですね。

――開発過程は順調でしたか。

笠井 構想自体は、2010年の秋頃からありました。その頃は「Internet Explorer 9」(IE9)もまだなかったので、そもそも現実的なのかということも含めて検討していました。2011年の夏コミでは、ノベルスフィアのビラを配るところまで進んだんですが、一度頓挫してしまったんです。その後、開発の仕切り直しや、IE9の普及もあって、ここまでこぎつけることが出来ました。

――開発部隊の規模はどのくらいなんですか。

笠井 プログラマは3人です。実況プレイヤーのRevinさんや日本のアニメが大好きな香港在住の人に手伝ってもらっています。

プレイに20分もかかるバナー

――アドスフィアの1番乗りはアステリズムというゲーム作品なんですね。

笠井 アステリズムのスフィアバナーは、1編1分程度のものを3つ用意しています。(アステリズムを制作した)チュアブルソフトの石田真規代表は、新たなセグメントに自分たちの声を届けることに熱心で、その実験的な精神とアドスフィアが合致したという形です。


画像
画像

―― 一方、前述のゲンロンのバナー広告では、プレイ時間が20分に及ぶという……。

笠井 広告にしては長すぎるとは誰もが分かっていたんですが、その意識は、“ネ申感”というキーワードによってどこかへ行きました。

――プレイしたところ、ゼロ年代のカルトクイズはかなり難易度が高かったです。あと、スキップとセーブ機能がほしいと思いました。

笠井 Googleで検索しても、そう簡単には解けませんよね(笑) シナリオやクイズに関してはゲンロンさんに用意してもらいました。スキップ機能やセーブ機能は、現在実装中です。ただし、気軽にプレイすることを考えると、セーブはあまり重要ではないかもしれません。

――5種類のエンディングは見ることが出来ました。筆者はネット右翼デモENDが気に入っています。これらのほかに「船エンド」があるみたいですが……。

笠井 これは大変レアで、少し特殊な攻略が必要です。プレイ時間が長くなるのがヒントですね。何人かは実際にたどり着いていて、こちらとしても驚きました。

――ユーザーのたどった軌跡は追えるんですか。

笠井 広告サービスでもありますし、アフィリエイトシステムなどと同じように、どこでクリックしたとか、それなりに細かい情報は取れています。例えば、クイズ形式の広告を出した場合、点数をカウント出来るので「偏差値」をその場で計算することもできます。リアルタイム感では、ソーシャルゲームに近いかもしれません。

――ほかにアドスフィアの特徴は

笠井 BGMやボイスに加えて、まだ表出しする機会はないのですが、動画機能も実装しています。ノベルゲームは、ある商品を説明したり、それに興味を抱かせる仕組みとして考えても有効だと思うので、アドスフィアを通じて、この特性をもっと多くの方に活用していただきたいですね。

――依頼があってから制作まではどのくらいですか。

笠井 シナリオなどを除いた部分の実装に関しては1週間程度で可能です。もちろん、依頼があればシナリオも含めて、1から請負います。ノベルゲームというと一般的にオタクコンテンツに親和性がありますが、(例えば)町興しをする自治体さんに興味をもっていただければありがたいです(笑)

――自分たちが作りたいゲームをつくるのではなく、注文に基づいて制作するというのは面白いですね。今後の展望を聞かせてください。

笠井 ノベルゲームをもっと身近にしたいという想いがあります。バナー広告は、それを実現させる手段の1つであり、ゲリラ的にいろいろと仕掛けていきたいと思っています。今後は、ノベルスフィアも活性化させる方向です。様々な作品を自由に公開・流通させる経路を用意することで、自分で出来る人は自分でするという環境にもっていき、カオスな空気を生み出したいです。

著者紹介

高橋史彦。1985年生まれ東京育ち。「ねとぽよ」などで活動する駆け出しライター。カジノ解禁の行方をウォッチしながら、喧嘩商売の連載再開を心待ちにする日々を過ごしている。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/22/news018.jpg 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  2. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  3. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  4. /nl/articles/2411/23/news025.jpg 「大企業の本気を見た」 明治のアイスにSNSで“改善点”指摘→8カ月後まさかの展開に “神対応”の理由を聞いた
  5. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. /nl/articles/2411/05/news138.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  7. /nl/articles/2411/22/news205.jpg 松田翔太、憧れ続けた“希少な英国製スポーツカー”をついに入手「14歳の僕に見せてあげたい」 過去にはフェラーリやマクラーレンも
  8. /nl/articles/2411/22/news047.jpg 「行きたすぎる」 入場無料の博物館、“宝石展を超えた宝石展”だと40万表示の反響 「寝れなくなっちゃった」【英】
  9. /nl/articles/2411/23/news031.jpg スーパーで売っていた半額のひん死カニを水槽に入れて半年後…… 愛情を感じる結末に「不覚にも泣いてしまいました」
  10. /nl/articles/2411/22/news051.jpg 自動応答だと思って公式LINEに長文を送ったら…… 恥ずかしすぎる内容と公式からの手動返信に爆笑 その後について聞いてみた
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた