ニコニコ奨励金で収入1000万円超のケースも 現代の絵師が生計を立てるには――佐藤秀峰さんや岸田メルさんが語る
岸田さんは「(ネットで得た)知名度をお金に変えるには工夫が必要」とアドバイス。
ドワンゴとニワンゴは、両社が運営する「niconico」の投稿作品に対して奨励金を支払う「クリエイター奨励プログラム」が、「ニコニコ静画」に全面対応したと発表した。2月19日の発表会では、佐藤秀峰さん、岸田メルさん、西又葵さんと業界関係者によるトークセッションが開催され、「現代の絵師が生計を立てるには?」をテーマに議論が交わされた。
奨励金1000万円以上が3人! 高額支払いに驚きの声
クリエイター奨励プログラムとは、投稿作品の「人気度」に応じて、現金またはニコニコポイントで奨励金を支払う制度。奨励金はniconicoのプレミアム会員収入の一部を原資とし、同制度に登録した全作品で分配される。2011年12月にスタートし、2012年9月までの10カ月間で、総計3億336万8632円分が支払われた。受け取ったユーザーは合計3973人で、このうち1000万円以上が3人、500〜999万円が4人、100万円〜499万円が56人いたという。
これまでの対象は動画が中心だったが、今後はイラストや漫画など「ニコニコ静画」の作品が登録可能になる。ただし、動画と同じく、アダルト要素を含むものは対象外になり、水着やパンチラはNGだ。また、4月以降は投稿者が指定したほかのユーザーも、任意の割合で奨励金を受け取れるようになる。複数のクリエイターによるコラボ作品において、奨励金の分配をスムーズにすることが狙いだ。
佐藤秀峰さん、岸田メルさん、西又葵さんが語る
発表会の後半には、クリエイター側から佐藤秀峰さん(漫画家)、岸田メルさん(イラストレーター)、西又葵さん(イラストレーター)、企業側から篠田匡弘さん(TINAMI)、高原真志さん(DLsite.com)、伴龍一郎さん(ドワンゴ)が参加し、まつもとあつしさん司会のもと7人によるトークセッションが行われた。
現代の絵師(漫画家、イラストレーター)が、ネット上で生計を立てる方法とは何か。まず議論は、クリエイター陣がデビューしたきっかけからスタートした。西又さんは発行していた同人誌の住所宛に、岸田さんはイラストを公開していた自身のサイト宛に、商業誌サイドから連絡があったという。佐藤さんは出版社への持ち込みという昔ながらの手法だった。
岸田さんはその後、ライトノベルのイラスト、家庭用ゲームのキャラクターデザインを担当し、ネット上で盛り上がることで人気を獲得していった。いわゆる“ネット発”のモデルケースだが、岸田さんは「(ネットで得た)知名度をお金に変えるには工夫が必要」と語る。例えば、pixivで人気が高くても商業的に成功しないケースは多々あり、篠田さんは「SNSでの人気とは、作品の評価というより一種のコミュニケーション」と指摘。「人気者でも販売サイトで売れなかったり厳しいコメントが付く」と高原さんも語る。
ちなみに、ライトノベルのイラストは「絵師にとって憧れの仕事の1つ」(岸田さん)だがギャラは決して高くはない。相場は1冊「10万〜30万」(岸田さん)であり、シリーズ作品の担当になっても、年間に3冊あれば良い方。これだけでは生活していくことが難しい。そこで、稼ぐ方法として同人誌が俎上(そじょう)にあがり、「出版社と関係なく稼ぐ場所があるのは良いこと」(佐藤さん)など意見があったが、「話し始めると終わらなくなる」と別のテーマに移行した。
ネットにより、クリエイターからの情報発信が容易になった今、周囲を活性化させるセルフプロデュースの重要性は、討論中に何度も登場した。また、ユーザーからの反応がよく見えるようになったことについて、岸田さんや佐藤さんは「相当チェックしている」という。西又さんは「若い頃はネット上に間違ったことが書かれているとつい説明したくなったが、火に油を注ぐことになる」「悪い声は届きやすく、応援は励みになる」と語った。
終盤、お金の話になると「金額よりも、自分にどういうメリットがあるかが大事。たくさん仕事をして有名になってから交渉すれば良い」と岸田さんが述べると、「僕はお金が大好きでガンガン交渉もする」と佐藤さんが応じ、議論がヒートアップ。「『ブラックジャックによろしく』の連載時に、原稿料がモーニング作家の平均額より少なく、上げてもらうまで3カ月休載した」とするエピソードも披露され、トークが盛り上がった。
篠田さんは「編プロ側としても、安い金額で中途半端な仕事になるより、交渉によってきちんとした仕事になる方が良い」とし、コミュニケーションが重要だとコメント。最後に、佐藤さんが「お金は好きだけど有名人の似顔絵は無料で描くし、タダ働きもする。ビジネスのメリハリをつけること、いっぱい描くことが大事」と締めくくった。
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