ニコニコ奨励金で収入1000万円超のケースも 現代の絵師が生計を立てるには――佐藤秀峰さんや岸田メルさんが語る

岸田さんは「(ネットで得た)知名度をお金に変えるには工夫が必要」とアドバイス。

» 2013年02月26日 11時59分 公開
[高橋史彦,ITmedia]

 ドワンゴとニワンゴは、両社が運営する「niconico」の投稿作品に対して奨励金を支払う「クリエイター奨励プログラム」が、「ニコニコ静画」に全面対応したと発表した。2月19日の発表会では、佐藤秀峰さん、岸田メルさん、西又葵さんと業界関係者によるトークセッションが開催され、「現代の絵師が生計を立てるには?」をテーマに議論が交わされた。

画像

奨励金1000万円以上が3人! 高額支払いに驚きの声

 クリエイター奨励プログラムとは、投稿作品の「人気度」に応じて、現金またはニコニコポイントで奨励金を支払う制度。奨励金はniconicoのプレミアム会員収入の一部を原資とし、同制度に登録した全作品で分配される。2011年12月にスタートし、2012年9月までの10カ月間で、総計3億336万8632円分が支払われた。受け取ったユーザーは合計3973人で、このうち1000万円以上が3人、500〜999万円が4人、100万円〜499万円が56人いたという。

 これまでの対象は動画が中心だったが、今後はイラストや漫画など「ニコニコ静画」の作品が登録可能になる。ただし、動画と同じく、アダルト要素を含むものは対象外になり、水着やパンチラはNGだ。また、4月以降は投稿者が指定したほかのユーザーも、任意の割合で奨励金を受け取れるようになる。複数のクリエイターによるコラボ作品において、奨励金の分配をスムーズにすることが狙いだ。

画像 クリエイター奨励プログラムとは
画像 1000万円以上が3人!高額支払いに驚きの声

佐藤秀峰さん、岸田メルさん、西又葵さんが語る

 発表会の後半には、クリエイター側から佐藤秀峰さん(漫画家)、岸田メルさん(イラストレーター)、西又葵さん(イラストレーター)、企業側から篠田匡弘さん(TINAMI)、高原真志さん(DLsite.com)、伴龍一郎さん(ドワンゴ)が参加し、まつもとあつしさん司会のもと7人によるトークセッションが行われた。

 現代の絵師(漫画家、イラストレーター)が、ネット上で生計を立てる方法とは何か。まず議論は、クリエイター陣がデビューしたきっかけからスタートした。西又さんは発行していた同人誌の住所宛に、岸田さんはイラストを公開していた自身のサイト宛に、商業誌サイドから連絡があったという。佐藤さんは出版社への持ち込みという昔ながらの手法だった。

画像 大人気の岸田メルさん。この日は金色ではなかった

 岸田さんはその後、ライトノベルのイラスト、家庭用ゲームのキャラクターデザインを担当し、ネット上で盛り上がることで人気を獲得していった。いわゆる“ネット発”のモデルケースだが、岸田さんは「(ネットで得た)知名度をお金に変えるには工夫が必要」と語る。例えば、pixivで人気が高くても商業的に成功しないケースは多々あり、篠田さんは「SNSでの人気とは、作品の評価というより一種のコミュニケーション」と指摘。「人気者でも販売サイトで売れなかったり厳しいコメントが付く」と高原さんも語る。

 ちなみに、ライトノベルのイラストは「絵師にとって憧れの仕事の1つ」(岸田さん)だがギャラは決して高くはない。相場は1冊「10万〜30万」(岸田さん)であり、シリーズ作品の担当になっても、年間に3冊あれば良い方。これだけでは生活していくことが難しい。そこで、稼ぐ方法として同人誌が俎上(そじょう)にあがり、「出版社と関係なく稼ぐ場所があるのは良いこと」(佐藤さん)など意見があったが、「話し始めると終わらなくなる」と別のテーマに移行した。

 ネットにより、クリエイターからの情報発信が容易になった今、周囲を活性化させるセルフプロデュースの重要性は、討論中に何度も登場した。また、ユーザーからの反応がよく見えるようになったことについて、岸田さんや佐藤さんは「相当チェックしている」という。西又さんは「若い頃はネット上に間違ったことが書かれているとつい説明したくなったが、火に油を注ぐことになる」「悪い声は届きやすく、応援は励みになる」と語った。

画像 読者の声をチェックするクリエイターたち。見られています!

 終盤、お金の話になると「金額よりも、自分にどういうメリットがあるかが大事。たくさん仕事をして有名になってから交渉すれば良い」と岸田さんが述べると、「僕はお金が大好きでガンガン交渉もする」と佐藤さんが応じ、議論がヒートアップ。「『ブラックジャックによろしく』の連載時に、原稿料がモーニング作家の平均額より少なく、上げてもらうまで3カ月休載した」とするエピソードも披露され、トークが盛り上がった。

 篠田さんは「編プロ側としても、安い金額で中途半端な仕事になるより、交渉によってきちんとした仕事になる方が良い」とし、コミュニケーションが重要だとコメント。最後に、佐藤さんが「お金は好きだけど有名人の似顔絵は無料で描くし、タダ働きもする。ビジネスのメリハリをつけること、いっぱい描くことが大事」と締めくくった。

画像 佐藤さんのトークに雰囲気が明るくなった
画像 前列左から、佐藤さん、篠田さん、伴さん。後列左から、岸田さん、まつもとさん、西又さん、篠田さん

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  2. /nl/articles/2411/20/news049.jpg 高校生の時に出会った2人→つらい闘病生活を経て、10年後…… 山あり谷ありを乗り越えた“現在の姿”が話題
  3. /nl/articles/2411/20/news222.jpg ディズニーシーのお菓子が「異様に美味しい」→実は……“驚愕の事実”に9.6万いいね 「納得した」「これはガチ」
  4. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  5. /nl/articles/2411/20/news054.jpg 「防音室を買ったVTuberの末路」 本格的な防音室を導入したら居住空間がとんでもないことになった新人VTuberにその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/20/news050.jpg プロが教える「PCをオフにする時はシャットダウンとスリープ、どっちがいいの?」 理想の選択肢は意外にも…… 「有益な情報ありがとう」「感動しました
  7. /nl/articles/2411/21/news083.jpg 間寛平、33年間乗り続ける“希少な国産愛車”を披露 大の車好きで「スカイラインGT-R R34」も所有
  8. /nl/articles/2411/21/news085.jpg 「もしかしてネタバレ?」 “timeleszオーディション”候補者がテレビ局を退社 ディズニーの“船長”としても話題
  9. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
  10. /nl/articles/2411/21/news018.jpg グルーミングが出来ない生まれたての子猫、とんでもない体勢になり…… 想像以上のへたくそっぷりに「どこにも届いてないww」「反則級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた