アニメーションは「世界の秘密をのぞき見る」仕事――宮崎監督が語った、引退、ジブリのこれから、作品への思い(1/3 ページ)

長編映画からの引退を決めた宮崎駿監督は、会見で何を語ったか。引退の理由、ジブリの今後、作品への思いなどについてのコメントを、まとめました。

» 2013年09月06日 19時38分 公開
[山田胡瓜,ねとらぼ]
画像

 「スタジオジブリのプログラムから、ぼくをはずしてもらうことにしました

 世界的なアニメーション作家・映画監督である宮崎駿監督は9月6日、都内のホテルで行われた記者会見で、スタジオジブリ長編映画からの引退を発表しました。

 宮崎監督は「あと10年は仕事をしたい」「やってみたいことや試してみたいことがいろいろとあります」とも話しており、これからも同氏の作品を見ることができそうです。しかし、今後の活動はジブリ長編映画の枠組みとは少し離れたところで進むようです。

 宮崎監督は1945年、東京都生まれ。63年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社し、アニメーションの世界に入りました。84年にスタジオジブリの母体となるトップクラフトで劇場版「風の谷のナウシカ」を発表し、翌年にスタジオジブリを高畑勲監督らとともに設立。その後の活躍は、ご存知の通りです。

 引退会見で宮崎監督は、自らの引退、アニメーション人生、そしてこれからのジブリについて何を語ったのか。発言を分かりやすいようにまとめ、紹介します。

はじめの一言 ジブリは「来年夏」にも新作

宮崎 今回は本気です(会場に笑い)。

鈴木 始まったものには終わりがある。今後ジブリがどうなるのか疑問を持たれる方もいるだろう。高畑勲監督の「かぐや姫の物語」は鋭意製作中。11月23日に必ず公開する。そのほかの企画は発表できないが、来年夏を目指してもう1本製作中だ。

画像 鈴木プロデューサー(左)と宮崎監督。会見には中国や韓国、イタリア、フランスなど海外メディアも多く詰めかけた

長編の監督を引退することについて

宮崎 (「引退の辞」のコメントを引用し)僕は自由。車が運転できるかぎりは毎日アトリエに行こうと。休息を取らないといけない時期でもある。休んでいるうちに(今後のことは)分かるだろう。

 前作の「崖の上のポニョ」から「風立ちぬ」まで5年かかっている。次の作品は5年では済まないだろう。7年かかれば80才になってしまう。僕の長編アニメーションの時代ははっきり終わった。

――これまでの引退宣言との違いについて

宮崎 鈴木さんに「もうダメだ」と言った。ジブリを始めたとき、こんなに長く続けるつもりがなかったのは確か。(次回作に)7年かかるかもということに、鈴木さんもリアリティを感じたのではないか。

 アニメーション監督は、人それぞれやり方が違う。僕はアニメーター出身なので、描かないと表現できない。だから(メガネを取り机に向かう仕草を見せながら)こうやって、永遠と描かないといけない。どんなに体調を整えても、集中できる時間が減っていくのは目に見えている。今回はポニョの時より、机を離れるのが30分早くなった。次は1時間早くなるんだろうと。

 加齢により発生する問題に苛立ってもしょうがない。やり方を変えればという声もあるが、それができればもっと前にやっている。僕は僕のやりかたを貫く。だから長編は無理だと判断した。

画像 「こうやって、永遠と描かないといけない」と宮崎監督
画像

――ジブリの若手作品の監修や脚本といった手助けの予定は

宮崎 ありません。

――引退が決まった時期

鈴木 具体的な言葉は忘れたが、今回は本気だと感じざるを得なかった。ナウシカから30年目。いろいろあった。やめようか、といったいろんな話があったが、ずっと緊張の糸が張っていた。今回、宮さん(宮崎監督)に引退のことを言われたとき、僕自身ほっとするところがあった。若い頃だったら止めようとしたかもしれないが、ご苦労様でしたと。

 会見を開く前にスタジオのスタッフに伝えなきゃという思いがあり、8月5日に伝えた。映画の公開が一段落したあとに対外的に発表すべきと考え、9月の頭になった。

――短編アニメなら作るのか

宮崎 やってもやらなくても、僕は自由。今はそのことに頭を使わない。前からやりたかったことがいろいろあり、そっちをやろうと。それはアニメーションではない。

 ジブリ美術館は10年以上経って展示が色あせていたりする。描きなおしたりしなければ。美術館の展示品というのは、毎日掃除してきちんとしていても、色あせて全体がくすんでいく。そこにキラキラしたものを1つ入れると、そのコーナーがパッとよみがえって、たちまち子どもたちが集まってくる。そういうことが分かっている。

――ほかにもやってみたかった長編作品はあるか

宮崎 山ほどあるが、やってはいけない理由があったからこそやっていないのだと思う。

――今後は休息を優先するのか

宮崎 僕の休息は他人から見ると休息に見えないような休息。好きなことやっていると、大変だけれど休息になる。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/28/news195.jpg 岡田紗佳、一連の騒動を生中継で謝罪 頭を深く下げ「申し訳ございませんでした」
  2. /nl/articles/2501/28/news155.jpg がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
  3. /nl/articles/2501/29/news045.jpg 新潟のお葬式で香典返しにもらった“謎の白い物体” パッケージにも情報なし「これなんだかわかりますか?」
  4. /nl/articles/2501/26/news053.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2501/29/news086.jpg 鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
  6. /nl/articles/2501/28/news034.jpg 大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
  7. /nl/articles/2501/29/news058.jpg 「うちの祖父(81)わけてほしいわこのセンス……」 衝撃的な私服コーデに驚きの声「本物のイケジイ」「目標にします!!」
  8. /nl/articles/2501/29/news023.jpg 買ったばかりの家の風呂場に”ありえない欠陥” 信じられない状況に「そんなことある?」「取り付けた業者……」
  9. /nl/articles/2501/27/news073.jpg 「昔はモテた」と自慢げな父→娘は“絶対ウソやん”と思っていたけど…… 当時の姿に「ハハハ冗談だろ?」【海外】
  10. /nl/articles/2501/29/news122.jpg 正方形のスカーフ1枚→切ってゴムを縫い付けるだけで…… 魅力的な完成品に「デザインがきれい」「簡単に作れました」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」