ポスターに隠された意味、いま明かされる宮崎駿・高畑勲伝説【ほぼ全文書き起こし】:映画「夢と狂気の王国」公開記念鼎談(5/5 ページ)
宮崎監督引退に何を思う
川上 宮崎駿監督も9月6日に引退を発表しまして、「風立ちぬ」が最後の作品になったということで、高畑さんも西村プロデューサーは最後の作品と言ってると。
石井 彼の願望ですね(笑)。
川上 西村さんとしては、高畑さんの最後の作品だと。それが本当だとしたら、高畑・宮崎作品は終わりということですけども、この後の、ポストジブリのアニメ業界に関して、おふたりの意見を。
石井 それはポストジブリを狙ってらっしゃる齋藤さんが。
齋藤 いやいや、全然そんなことなくて。ポストジブリって、もしくはポスト○○とか、やっぱり個人としても、当然スタジオのカラーとしても色々違う。結局は、自分たちの作品を作っていくしかないと思っています。
川上 なるほど。優等生的な(笑)。
石井 おりこうな発言ですね(笑)。
川上 宮崎駿監督の引退の発言を聞かれて、うれしかったですか? どうですか?
石井 齋藤さんと細田さんはガッツポーズしたっていう……。
齋藤 そんなこと全然なくて。やっぱりそうなのか、って。体力的なこととか、ご決断されたこともいろいろあるから、軽々しく言っちゃいけないと思うんだけど。宮崎監督の1ファンとしてはね、また作ってくれるんじゃないかとか、もしかしたらご自身もそういうふうに思ってらっしゃるんじゃないかっていうことは思っちゃうくらい、「風立ちぬ」がいろいろ与えてくれたので。
川上 1ファンではなくて、スタジオ地図のプロデューサーとしてはどうですか? やりやすくなったとか、これから。
齋藤 いやいや、全然そんなことなくて。また見たいし、もしジブリ作品と時期がぶつかったときも頑張ろうと。
石井 宮崎さんって、作るものに必ず相反するものがあるじゃないですか。少女的なものがあれば、男性的なものがあったり。都市を愛しながら、すごく自然を愛するみたいな。たぶん、引退関係もそうだと思うんです。つまり、ほんとうにやりきったからこそ、「引退をするんだ」ってことでもあるし。でも、一方で引退発言のコメントの頭には、「僕はあと10年仕事をしたいと思っています」ってあるんですよ。
川上 あれ、むちゃくちゃですよね。
石井 これが、すべての答えなわけですよ。
齋藤 作品見ても分かるように、素直というか誠実な人じゃないですか。それが、今の本心だと思いますよ。だから、きっとまた何か、面白いことをされるんじゃないのかな、みたいな気になってしまうのも、分かる気がしますよ。
石井 引退したとか、しないとかね。撤回するのかしないのかと言ってる時点で、もうおかしいですよね。それも含めて、僕らは宮崎駿監督に夢中なわけですから。それに対して、いちいち言った言わないとか。そういうことはやめて、宮崎さんがあと10年どういう仕事をするのかということを楽しみたいですね。
川上 今後10年間楽しみです。
齋藤 高畑さんもそうですよね。
石井 ただ、「かぐや姫の物語」だけは見終わったあとに、「本当に、この人はまた絶対作る」と思いましたね。見終わったときに、高畑さんがこれが最後なんてみじんも思わなかったです。
齋藤 少なくとも、2時間半分の最初のシナリオ落とした部分を作ってるんじゃないかって気がしますよね。あと8年、西村くんが頑張らないとって感じですよね。小学校上がった子供が、高校卒業しますよ、今度は。
「夢と狂気の王国」ポスターに隠された意味
川上 「夢と狂気の王国」のポスターからは色んなことが分かるんです。
齋藤 いろんなことが書いてありますからね。
川上 元々の絵は宮崎監督が美術のスタッフ(吉田さん)に描かせたもので、切り貼りは監督自身がやられたということで、つまり宮崎監督によるMAD画像みたいな作品なんです。
石井 宮崎さんはこう切り貼りとかしますよね。僕らがやれとか言われてフォトショップでちょこちょこやっていると、「遅い」とその場でコピー機でプリントしてハサミでガチャガチャガチャと、アナログで作るんですよ。パソコン使うより仕事がはやい。これも多分そうやって作ったのかなと。
川上 宮崎さんがやったので、宮崎さんが自分の顔が一番写りのいいやつを……高畑さんはちょっと怒ってるんですよ。
石井 この絵はドキュメンタリーを表してますね。鈴木さんはちょっと肩の力が抜けて他人じゃないですか。
川上 あとね、「夢と狂気の王国」の王の上にある「’’’」が3人を象徴している。誰が王様なんだっていうのは1つの謎でもあるんですね。
齋藤 ぜひポスターから読み解いてほしいですね。そうすると映画もいっそう面白くなります。
石井 必見です。本当に、夢と狂気をみてから「かぐや姫の物語」が見たかったです。
川上 こんなところですかね。いろいろおもしろい話ありがとうございました。
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