インタビュー
» 2014年05月01日 11時00分 公開

アニメーション監督・新海誠が語る――映像を文字にするということ『小説 言の葉の庭』発売記念(2/5 ページ)

[宮澤諒,eBook USER]

観客やファンの人たちの声で動き出したストーリー

―― 小説では、1話につき1首短歌が出てきますが、これは先にストーリーを考えて、内容に見合った短歌を当てはめていったのでしょうか。

新海 そうですね。大妻女子大学の倉住薫先生という万葉集の専門家の方に短歌を選んでいただきました。各話の最後に万葉集から選んだ短歌を載せるアイデア自体は、僕の方から提案させていただいたんです。

 『言の葉の庭』というタイトルから万葉集や短歌のようなものを連想すると思うんですが、内容自体はどちらかというと雨の話や靴の話ですので、このタイトルに疑問を持つ人もでてくると思ったんです。その辺りをある程度解消するためにも、1話終えたあとに万葉集を載せることにしました。

―― 映画で声優の方たちの演技を見た後、小説を書かれたわけですが、キャラクターのイメージは変わったりしましたか。

新海 例えば、花澤香菜さんっていわゆるすごくかわいらしい声をした方じゃないですか。でも同時に、実はすごく情報量のある声なんです。かわいらしさの奥に、悩みとか疲れとか、期待に応えようとする生真面目さとか、花澤さんご自身の魅力がたっぷりと横たわっている。ご本人がどう思われているかは分からないけど(笑)、少なくとも僕にはそう聞こえる声なんです。アフレコを進めるうちに、ああ、雪野って実はこういう声をしているんだな、なるほどなっていう実感がありました。

雪野百香里(CV.花澤香菜) (c)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films 雪野百香里(CV.花澤香菜) (c)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

 ですから、その声の独特さを文字でどういう風に表現すればいいんだろうと、とても悩みながら書きましたね。「声には甘い湿り気があってまだ子供のよう」とか、「心を直接撫でるような震えるあの声」とか。花澤さんの声があったからこそ出てきた描写です。


―― 映画を見た人たちの声によって、監督ご自身影響されたことはありますか。

新海 大きな部分でいうと、幸せな終わらせ方をしないといけないんだろうなと強く思いましたね。

 僕自身は、映画版のエンディングは十分にポジティブなものだとは思うんです。孝雄と雪野にとって特別な一夏の経験があって、その経験は彼らのその後の人生を確実に豊かなものにするだろう。そこまで示すことができれば、映画としては完成なんです。何かを描き写し足りなかったという気持ちはありませんでした。

 でも、観客の感想からは、その後あの2人がどうなったのかをもっと知りたいとか、あの2人にはもっと幸せになって欲しいとか、2人が離ればなれになるなんて悲しすぎるとか、そういう声がたくさん出てきたんです。僕が思っていたよりもずっと強く、孝雄や雪野に感情移入したり、自己投影して見てくださる方がたくさんいた。だから、小説版ではもう少し先の2人の姿まで示してあげなければという責任のようなものを、映画の公開後に強く感じました。

 そういうこともあって、少しネタばれになってしまいますが、エピローグでは孝雄と雪野が再び会うということを映画版よりももっと明確に示したんですね。観客の想いに大きく影響された部分です。

 あとは、この本の巻末に取材した方たちの名前を入れさせていただいているんですが、この中の何人かは、舞台あいさつで知り合った方だったりするんです。例えば、本職の靴職人の方が舞台挨拶に来てくれて、「靴を作っているんです」と名刺をくださって、それでお話を聞いたりしました。そのことで孝雄のその後の進路にも影響がありましたね。高校生活もいくらか書いていますが、高校生の観客の中に1人、いつもお手紙をくれる子がいて、その子にもお話を聞いたりしましたね。

―― いろんな人たちの意見を柔軟に取り入れていますね。

新海 そうかもしれませんね。ただ、「読者が読みたいだろうと思っているものを書こう」という気持ちだったわけではありません。何を書くべきか、何を書きたいかというのが、映画の観客の方々のお話を聞く中でより明確になっていった感じです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10

  1. /nl/articles/2201/14/news024.jpg ママとの散歩中、田んぼにポチャンした柴犬さんが帰宅後…… パパに一生懸命アクシデントを報告する姿がいとおしい
  2. /nl/articles/2201/15/news053.jpg 「こんないいものがあるんですね!」 吉川ひなの、第3子次女の“ベビーヘルメット使用”明かし反響
  3. /nl/articles/2201/14/news013.jpg 風呂場にうっかり入ってしまった猫兄弟 「二度と入らぬ」と誓う表情に「また入るでしょうw」の声
  4. /nl/articles/2201/13/news164.jpg 藤本美貴、夫・庄司智春のランドローバーを勝手に受け取る暴挙 器が試されるドッキリ企画に「普通の夫婦だったら喧嘩」の声
  5. /nl/articles/2201/14/news162.jpg ダルビッシュ聖子、3年ぶりの家族旅行でディズニーランド初訪問 わずか数時間後の夫婦ショットで「私も主人もヘトヘト」
  6. /nl/articles/2201/15/news048.jpg 高木ブー、高校時代の“スリム姿”に驚きの声 70年前の貴重ショットに「好青年でステキ」「デートしてほしい」
  7. /nl/articles/2201/15/news040.jpg 「めちゃくちゃ欲しい」「言い値で買わせて」 記号を合わせて解錠する“顔文字南京錠”爆誕にネット沸く
  8. /nl/articles/2201/13/news105.jpg 村田充、3匹目の愛犬の存在明かす 神田沙也加さんから引き取ったブルーザーとは「数日で仲良くなりまして」
  9. /nl/articles/2108/04/news015.jpg 柴犬「メシ、よこさんかーい!!(激怒)」 ごはんを忘れた飼い主に皿をぶん投げる柴犬、荒ぶる姿に「爆笑した」
  10. /nl/articles/2201/15/news045.jpg 元なでしこ永里優季、シカゴ在住の男性とゴールイン報告 “婚約指輪&プロポーズ”写真が幸せいっぱい

先週の総合アクセスTOP10

  1. 東原亜希、高身長の“BIG長女”に「そういえば君はまだ小学生だったのか」 父・井上康生との2ショットに驚きの声
  2. 人気女優の顔じゃない! 川口春奈、ほぼ瀕死のグロッキー状態に心配の声「完全に目がいってます」
  3. 榎本加奈子さん、大魔神・佐々木主浩と“縁起がよすぎる”夫婦ショット 「10代20代と全然変わらない」と美貌に注目も
  4. 村田充、元妻・神田沙也加さんの愛犬を引き取り新生活 “トイレ初成功”で喜びあふれる「おおおおおお!」
  5. TBS「ジョブチューン」炎上で無関係なシェフへの中傷相次ぐ 代表「何年もかけて築いた評価が一瞬で崩壊した」
  6. 渡辺満里奈、新しい“家族”が空へ旅立ち 早すぎる別れに夫・名倉潤も「聞いたことのない声を上げて泣きました」
  7. 「千と千尋の神隠し」地上波放送でジブリ公式が視聴者の疑問に答える神企画再び 「千尋はどうやって最後お父さんとお母さんを見分けたのですか?」
  8. 「鬼滅の有吉?」「コスプレかと!」 有吉弘行、『鬼滅の刃』炭治郎になった“奇跡の1枚”に反響
  9. 水野真紀、30年前の“振袖姿”が絶世の美女 「正真正銘のキレイなお姉さん」「本当に美しい」とファンほれぼれ
  10. 「もうひとつ、ご報告」神田沙也加、父・神田正輝に新たな家族を抱っこしてもらう

先月の総合アクセスTOP10

  1. 「どん兵衛」新CMに星野源が復活も衝撃の新展開 “どんぎつね”吉岡里帆の正体明かされ「完全なホラー案件」「狂気を感じる」
  2. ハラミちゃん、“公称145センチ”も本当の身長にゴチメンバー驚き 「デカイっていわれるのが嫌になっちゃって……」
  3. 西川史子、退院を報告 「生きていて良かったと思っていない」と告白も、力強い現在の心境明かす「私は医師です」
  4. 「もうアヒル口」「美人確定ですね!」 板野友美、生後2カ月娘の“顔出しショット”にみんなメロメロ
  5. 「気ぃ狂いそう」 木下優樹菜、生配信中止で“涙のおわび動画” やらかしたスタッフに「生きてたらミスぐらいする」
  6. 東大王・鈴木光、“お別れの笑顔”で司法試験合格を報告「本当にありがとうございました」 SNS閉鎖に涙のエール続々
  7. 「こんな普通に現れるの?!」「バレそうで心配」 倖田來未、駅のホームに“普通に並ぶ”姿にファン驚き
  8. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」「どストレートに餅で笑った」と称賛集まる
  9. 第1子妊娠のすみれ、母・松原千明と2年ぶりに涙の再会 「やっとママに会えました」と感動的な親子ショット公開
  10. 渡辺裕之、66歳バースデーで息子と2ショット 合同誕生日会に「すごいお料理とケーキ」「イケメン息子さん」