「電子書籍版YouTube目指す」と赤松健さん 「絶版マンガ図書館」は“漫画史に残る偉業”となるか
「Jコミ」が「絶版マンガ図書館」にリニューアル。「われわれ作者は何とかこの海賊版を撃滅したい」と赤松健さんは語ります。
漫画家の赤松健さんが2010年に立ち上げた絶版漫画配信サイト「Jコミ」が、7月10日から「絶版マンガ図書館」としてリニューアルする。「電子書籍版YouTubeを目指す」というのがリニューアルの目的。読者から絶版漫画に関する資料を募集し、そのうち作者の許諾を得られた作品を配信する新しい取り組みのほか、絶版漫画のWikiも構築する。
これまでJコミでは作者から預かった絶版漫画を無料配信してきた。絶版マンガ図書館ではこの枠組みを広げ、ユーザーが掲載してほしい絶版漫画に関する資料を自由にアップロードすることが可能となる。裏側では作品が絶版かどうかを判断するアルゴリズムが動いていて、ユーザーがアップロードした資料を自動で判別。おそらく絶版であると認められた段階で透かしを入れて5ページほどのサンプルを公開し、作者からの連絡を待つ。その後、作者から許可が得られたら漫画データを提供してもらい、正式に絶版マンガ図書館での配信が始まる。
漫画は広告付きで全ページ無料。広告収益は100%作者へ還元する。記者会見では、漫画の吹き出しを自動検知してせりふをデータ化する仕組みも披露された。これは東京大学・相沢研究室の協力で実現したもの。この仕組みを応用することでせりふに関連した商品の広告を出すといったことを可能にするという。「この瞬間、電子書籍は動画より優位に立てる」(赤松さん)
絶版漫画は同サイトのスマートフォンアプリでも公開するほか、ソフトバンクグループが今秋公開予定の電子漫画アプリ「ハートコミック」へも提供する。作者からの依頼があれば、Kindleダイレクト・パブリッシングへの登録や、GoogleへのDMCA(デジタルミレニアム著作権法)侵害申し立ても行うほか、漫画を透かし入りPDFファイルで有料配信したり、オンデマンド印刷による販売にも対応する。
「途方もない夢を抱いております」と赤松さんは語る。絶版マンガ図書館では「古今東西の全ての漫画(ただし出版社が扱っていないもの)を収集し、日本の漫画文化の100%保存の一翼を担う」ことを目標に掲げる。またネットで漫画の海賊版ファイル(ZIP)が簡単に入手できる状況に対抗し、「われわれ作者は何とかこの海賊版を撃滅したい」と強く訴える。
加えて、出版社は売りやすそうな作品から電子書籍化をする傾向にあり、「派手に打ち切った作品」や「最終巻だけ出さなかった作品」「あえて単行本化しなかった作品」が電子化されないこと、最近は電子書籍ストア自体の「閉店」も目立つことにも言及。さらに著作権法改正で新設された「電子の出版権」の「電子書籍化義務」の発生により、売れる作品と売れない作品を厳選して掲載せざるを得ない出版業界についても「われわれ漫画家はより厳しい状況におかれる」とした上で、売れる売れないにかかわらず平等に収録する“図書館”のような存在が必要なのではないかと語った。
電子書籍ストアにないような作品を全て「絶版マンガ図書館」に集めることは出版社やストアに迷惑がかからず作者にとってもメリットがあり読者も便利だと、赤松さんはアピールする。「電子書籍版YouTubeとなり、どんどん資料があがった日には日本のマンガ史に残る偉業になるのではないかと期待しております」
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まずは下書きから始まりました。随時更新予定。
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